【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
忘れていた、今の今まで忘れていた。爆豪勝己は、薄れゆく意識の中でそう呟いた。こいつが強いのは決して『個性』があるからではないと、たとえ『個性』を失ってもこいつは変わりはしないのだと。
身体中が打ちつけられて痛む、頸椎を掴まれて……ぶっこ抜かれない……ああそうだった。こいつにとって『それだけで済ます』のは寧ろ、優しい手打ちであった事を忘れていた。
『な、なんてこった……やりすぎだろ!こんなの!!』
『出久くんやめて!死んでしまうわ!!』
『ヒーローの戦い方じゃあない……!』
地下モニターからこの演習を見ていたクラスメイト達の誰もが、緑谷の静止を叫ぶ。顔が腫れ尽くし、ガラスの破片が刺さった爆豪の身体を持ち上げて、出久は言った。
「まだやる、かっちゃん?」
そして、演習終了のブザーが鳴り響いた。
「ふんぬぅぎぃぃいいいい!!」
朝……緑谷邸宅。
唸るような苦しげな声が庭より上がる。時刻5:20……緑谷出久の日課、トレーニング開始から、1時間20分が経過した。バーベル用プレートにタオルを通し、それを足にくくりつけて行う懸垂……それを母である緑谷引子が掃き出し窓より見守る……小学生の6年から、変わらない景色だ。変わったのは重りの有無、そして重さ……庭に様々なトレーニング器具が整えて置かれていた。
「ふー……」
「お疲れ様、毎朝頑張るわね本当に」
ことりと音を立てて、小瓶の牛乳を置く母親に、頭を下げて早速蓋を開けてゆっくりと出久は飲み下して話す。
「皆みたいな特異体質じゃあないからね、せめて肉体は鍛えておかないと」
「それもヒーローの誰かを真似てるのかしら?」
「うん、蝙蝠のヒーロー、金持ちで頭良くて、めちゃくちゃ強い」
彼も能力を持たずに、鍛えた肉体とガジェットで同じチームのヒーローと渡り合っていた、今でも棚から出して読むくらい好きだ。個性を自覚した日から、ヒーローを夢見た日からずっと出久は庭で、そして街を走って鍛えていた。
「じゃあ着替えたら行くよ、母さん」
「無理はしないのよ?」
今日も1日が始まる、緑谷出久がヒーローを目指す歩みは、止まりはしないのだ。
雄英高校は、ヒーロー養成校であると同時に高等学校である。1〜4時限は通常の高校同様のカリキュラムが組まれ、午後よりヒーローとして鍛える様々な訓練が行われる。
その昼休みにおける昼食での事……。
「え?その魚……骨食えるの?」
「うん?」
学食にて、たまたま対面になった切島鋭児郎に尋ねられた出久が頼んだのは焼き魚定食、カツ丼も捨てがたいが今日の焼き魚が秋刀魚だったので、こちらにしたのであった。
「僕は基本……魚は頭から丸ごといくよ」
「なんだよそれ!ワイルドで男らしいな、見かけによらず!」
「味噌汁の出汁に使う煮干しも食べてるし……骨にいいからね」
「そのワイルドな食い方が、その身体つくってるわけか!」
「否定はできないね……まぁ、好き嫌いしないでなんでも食べて、血肉に変えるのが一番じゃないかな」
「くーー!血肉に変える!かっこいい言い方するなぁ本当に!」
騒がしい、けど嫌いじゃない、寧ろ好きかもしれないと切島の声を聴きながら味噌汁を啜る出久。これを食べ終えたら……今日は初めての演習だ、やられて戻さないように、よく噛んで消化しなければと、具の里芋を噛み締めた。