【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
爆豪と蛙吹を抜いた『第一回部屋王決定戦』は、砂藤力道が女子陣の票を総なめにして優勝した。ケーキ美味しかった、という部屋でなく胃袋掴む贈賄に不満が幾つか上がったが、自分は生クリームで援護射撃してしまった為、何も言えなかった。
そんな緑谷だが、票を入れたのは轟の部屋であった。理由は施工を手伝って上手いこと行ったし自信作だったから、残念でならない。
「ごめん轟くん、手伝ったけど……」
「もう帰っていいか?眠ぃし」
優勝できなかった事を緑谷は悔いたが、轟はさっさと寝たいらしい。そのまま部屋に帰ろうとしたのだが……。
「あ!轟くん、ちょっと待って!!」
申し訳無い、もう少しだけ付き合ってほしいと麗日さんが呼び止めた。
「緑谷くんも飯田くんも、それに切島くん、八百万さん……ちょっといいかな?」
麗日より呼ばれたクラスメイト、その全員で緑谷は、あっ、と察してしまった。爆豪救出に向かった全員だ……彼女から何か話があるのだろうと、緑谷は覚悟した。楽しかったお部屋探訪の時間は終わり、現実に向き合う時間が来たのだと宣告を受けた。
麗日に呼ばれた爆豪救出組は、そのまま寮の外に連れ出された。
「麗日、どこへ……!」
切島が一体何処へ行くのか尋ねた刹那、次の言葉が出なくなるほどに驚いた。体調が優れないと部屋王決定戦に不参加だった蛙吹梅雨が、目元を見せない俯く姿で立っていたのだ。
「蛙吹さんが……お話ししたい事があるって」
この瞬間……緑谷の胸がズキリと傷んだ。自分でも……あの時の事を覚えているから、余計に。頭を下げて止めようとした、しかし暴走は止まらず自分が死地に追いやってしまったと吐かしながら、結局また、名前を変え、姿を変えて爆豪救出に参加してしまった事を。
「私……思った事はなんでも言っちゃうの……けど、あの時……緑谷ちゃんが、頭を下げて止めようとして……止まらなかった時、どうしたらいいか分からなくなって……」
普段から、スッパリ言ってくれる彼女が止まってしまう。そこまで動揺していた事を緑谷も感じれなかった訳ではない、自分だって判断を誤った結果があの姿……だから最後まで彼女の話は聞かねばならない。
「それでやっぱり、みんな行ってしまったと聞いて……緑谷ちゃんもヴィジランテに助けを借りたって聞いたわ……けど、けど……緑谷ちゃん……正直に言って、あの忍者は……スコーピオンってヴィジランテは、緑谷ちゃんなのよね?」
涙を浮かべて、尋ねられた。ああやはり、気付かれるものは気付かれるよな、緑谷は感じた。
これが『裏切り』なんだと、受け止めるしか無い、軽蔑されても、信用を失う事を僕はしたのだと緑谷は頷いた。
「今から言う全部……言い訳になる、蛙吹さん……あの時の2人を止められなかった涙も本当だった、大人に任せるべきだと思ったのも事実だった、けど……かっちゃんも、切島くんも轟くんも心配になって……泣き止んで浅はかに思いついたのがそれだった……ごめんなさい」
深々と、頭を下げる緑谷。麗日はどうやらスコーピオンが緑谷だった事も今知って衝撃だったらしい。これで……2人裏切ったんだなとさらに胸が痛くなる。
「緑谷ちゃんは……ずっとそうだわ、USJも、合宿も……今回も……何かあれば、何もかも捨てて助けに行こうとする……それは、ヒーローとしては素晴らしい事なのかもしれないけど……ひぐっ!……クラスメイトとしては……これ程怖くて、悲しい事は……無いの……」
泣き出しながら彼女は伝える、ヒーローである事は素晴らしいかもしれない、じゃあその度にあなたが全てを捨てたら何が残るのか、クラスメイトが悲しむ事を考えなかったのかと泣きながらも力強い叱責が緑谷に叩きつけられた。
これを聞いた切島も、涙を浮かべて言い放った。
「ち、違うんだよ梅雨ちゃん!!そもそも、俺が悪かったんだよ!!俺が、ちゃんと緑谷の言う通りにしてたら、意地張っちまったから!」
あの時緑谷の言う通りにしていたら、こうはならなかったんだと、原因は俺だと緑谷を庇った切島に、轟が首を振る。
「いや……だったらそれは俺が原因だ、緑谷の献身が……眩く感じちまって、次は俺がなんとかしねぇとって……」
「私も……心を鬼にしてデバイスを作らない選択が出来た筈でした……けど、私にもどうにかできるかもしれないと軽率な事を……ごめんなさい蛙吹さん」
自分が火に油を注いでしまったと轟が言うと、八百万もデバイスを渡さなければ、作らなければ行かせなかったかもしれないと涙を流す。
「それを言えば……病院前で僕は3人を止める事を選択できた、危なければ逃げれると思ったら……あの凄まじいヴィランに足が竦んで……結局また緑谷くんが戦う事になってしまった……すまない蛙吹さん、緑谷くん!」
皆が皆、自分が悪い、自分が止めれたと言い出した。今になって重くのしかかる、自分たちがどれだけ危ない事をしていたかという事実、それで助かったから良かったではすまない話であると、緑谷自身も自覚させられた。
泣き腫らした蛙吹の手が伸びて、緑谷の右手を握りしめた。ヒヤリと冷たい、自分の手を包み込む大きなカエルの手。
「緑谷ちゃん、約束して……もうこんな危ない事しないって……飛び出す前に、私たちにも相談して……じゃないと貴方……ヒーローになる前に死んでしまうから」
「緑谷くん、私からもお願い……強いのは知ってるけど、1人で何もかもしたら駄目だよ……緑谷くんに何かあったら皆……悲しくなるから」
麗日まで涙を浮かべる様に、緑谷は……合宿の相澤先生の話を思い出した。出水洸汰を助けた時だ、人を泣かせる奴がヒーローにはなれないと。
「約束します……もう、危ない事はしない、するかもしれなくなったら、クラスのみんなや先生に相談します……2人とも、ごめんなさい」
緑谷は宣言した、二度とこのような事はしない、もしも今後同じ事態が起こりそうなその時は、必ず皆に相談すると。
「俺らも!もうぜってーしねぇから!」
「すまねぇ、蛙吹……」
「私もです……」
「約束する!」
皆……頑張った、戻そうとした、けれど難しかった。誰も彼も止まる事が出来なかった程に焦り、疲れ果てていたのかもしれない。
これで、もう戻らなければならない、ヒーローを目指す、仲間たちと切磋琢磨できる学園生活に。
蛙吹と麗日を囲むように切島、八百万、轟、飯田が声をかける中、緑谷は1人その姿を見て握ってもらった右手を見た。
そこから微かに流れ出した、紫色の電流を見て、緑谷は拳を握りしめて思った。
『この事は……ちゃんと理解してから皆に打ち明けよう……唐突すぎて自分でも理解が及ばない』
再び学園生活に戻る事が出来た中、緑谷は肉体に現れた異常を抱え、それをまだ話すには早いと感じ、黙る事にしたのだった。