【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
その晩、雄英寮1ーAアライアンス、外の庭にて……緑谷出久は適当に見つけた石を投げては、また引き寄せ……投げてはまた引き寄せていた。
今日の訓練にて起きた、あの押し込むように飛んで行った瓦礫の現象は一体何だったのかと試していたのだ。
緑谷出久の個性『脊髄ぶっこ抜き』そこからとき解され現れた『引き寄せ』の個性には、幾つかルールが存在する。
①人体を容易に引き寄せられる、脊髄に近い部位ほど負荷も少なく容易。
②無機物も引き寄せられる、ただし人体や生物より負荷が強い(今は鍛錬により解決しつつはある)
③『引き寄せる』という所作や動き、補助する道具により、その負荷を軽減可能。
④引き寄せられるものは自身の精神の状態に左右される、高揚すると敵の個性の攻撃や現象すら引き寄せて逸らし、逆に沈み込むと石すらも億劫になる。
⑤決して『引き寄せる』以外はできない。
此度の、オールマイトを瓦礫から助ける時に起こった現象は、明らかに⑤のルールを破った動きをしていた。だから今日の訓練を終えてから、自主練として外に出て幾度も『押し込み』をしてみたのだが……やはり出来ないのである。
『あれは一体、何だったのだろうか?』
個性の範疇、ルールを超えた挙動の謎、もしもそれが分かれば新たな技を作れるかもしれない。そうして石を投げては引き寄せて、投げては向こうに行け、押し込むとイメージしてみるも、全く駄目だった。
「出久くん、どうしたのさっきから?」
「どうかなされたのですか?緑谷さん?」
そうして幼児の石遊びじみた事を見られていたのか、寮から気になったらしい麗日と八百万が出て来て尋ねて来た。緑谷は振り返り、その質問に答える。
「ああ、麗日さんに八百万さん……実は、今日の訓練の時、今までの個性に無かった挙動で瓦礫を動かせたんだけど……それをもう一度しようとしたら出来なくて……」
「訓練?何かあったん?」
「一時確かに騒がしかったですね……」
ああ、この2人は現場を見ていなかったのかと、緑谷はその時の状況を簡単に説明した。オールマイトが危なかったのか、それは大変となった一方で、自分が瓦礫を押して事無きを得た話を聞いた2人は、一緒に悩んでくれた。
「確かに……緑谷さんの個性でその挙動はおかしいですわね?個性は基本、ルールから外れた事は出来ませんから、私ならば無機物は創り出せても、生物は創り出せないというルールがありますし……」
『万物ヒーロークリエティ』の名前を持ち、自身の脂質からあらゆる物を創造する個性の八百万百は、自身の個性におけるルールを例に挙げて、此度の緑谷の事例を比べて不可能な筈だと頷く。
「あと、個性の深化にしても一度できた事というのは、割と簡単にもう一度できるのです」
また、個性により一度出来た事、というのはもう一度出来てしまうもので、また出来なくなるという事は無いとも言う。つまり、仮に緑谷が個性を使い『押し込む』事ができたら、二度三度と簡単にできてしまう筈だと言った。
では此度の瓦礫の挙動は何だったのだと、緑谷は首を傾げる中、麗日がポンと言い放った。
「じゃあ、奥に引っ張ったんと違う?」
「え?」
「奥に?」
八百万が、そして当の本人緑谷が、麗日の言い放った一言にキョトンとした。
「えっと、だから……出久くんは押し込んだんじゃなくて……自分やオールマイトから瓦礫を離すために、奥に引っ張ったんじゃないかな?押せないならそれしか無いんじゃない?ほら、こんなふうに」
その説明をした後に、麗日は寝巻きのタンクトップシャツのお腹あたりを指で摘み、みょんと引っ張った。ピッタリ生地だからか胸の谷間が顕になり、おへそが晒されて八百万がまぁと赤くなる。確かにそれは『奥に引っ張る』行為そのものだ。
麗日の言葉と行為に、緑谷の今までの個性の扱い方にヒビが入り、そして砕け散った。
「あ、ああ!あーーーー!?」
正しくそれは青天の霹靂!今の今まで『引っ張る』『引っこ抜く』という行為が、絶対自分自身の手元でなくてはならないと、凝り固まっていた。
何故今まで気付かなかったのか!?そもそも、体育祭で轟の攻撃を逸らす為に手首を、炎を、やれ左右に動かしていたじゃないか!それなら奥にだって動かせてもおかしく無い、まさにそれはーー。
『押してダメなら引いてみろ』そのものじゃないかと、緑谷は手遊びしていた小石を見つめた。
なら、出来るはず!そうして小石を早速芝生からこちらに引き寄せ、自分の目の前まで来るやそのまま『上に引っ張り上げる』とイメージすれば、小石は空に打ち上がり『下に引っ張る』と意識すれば真下に急降下した。
「凄いですわ、彼方此方に引っ張るというイメージが自由自在に小石を」
「まるでサイコキネシスみたい……」
そしてーー奥に引っ張る、これはそうだより強くイメージするならばと『自らの幻影が奥に居る』とイメージし、その幻影が小石を引っ張ると想像すれば、さながら弾丸の如く小石が奥へと飛んで行った。
「やった……やった!できた!これだよ!!奥に引っ張る!!そうだったんだ!!あーもう!!ありがとう2人とも!!」
「うわ!?」
「きゃああ!!」
謎が解けた事、そして自らの個性が更なる成長を遂げた事に感謝が溢れ出して緑谷は麗日と八百万をそれぞれ左右の腕で2人同時に抱きしめたのであった。
「あーーえっと……ごめんなさい、ついテンションが……」
そして即座にこれセクハラだ、となって腕を離してそそくさと離れたので、2人は顔を見合わせジリジリ間合いを詰める。
「駄目ですわよ緑谷さん、ハグはそんな軽々しくしては……」
「せめてしっかりじっくり10分は抱きしめて貰わんと……」
貴様は軽々しくハグをした、その罪はしっかりと、それはもうたっぷり抱きしめなければ償えんとギランと2人の目が光る。
「え、いや、そこは……怒るとこでは……あーー」
緑谷はその時の彼女らのタックルじみたハグを『吉◯沙保◯のノーモーションタックルってこんな感じと思う』と称し、4つのやーらか双丘を10分間堪能させられ、血の海に沈んだのだった