【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
ヒーローコスチュームに着替えた雄英高校1年A組は、全員会場に移動した。どれだけ居るのだと、辺りを見回す緑谷だが……。
「何だか……視線が……」
「仕方ない、だってキミのコスチュームはヴィラン寄りだから」
視線が時々突き刺さるなと呟いたら、飯田から仕方あるまいとツッコミを入れられた。相澤先生からも度々、デザイン全替申請しとけと言われたこちらのヒーロースーツだ仕方ない。
『えー……ではあれ、仮免のやつやります……』
マイク越しに響くくたびれた声に、壇上へ皆が目を向ける。スーツもシャツもネクタイもアイロンがしてない、憔悴しきったボサボサ髪の男が立っていた。
『あー……ぼく、ヒーロー公安委員会の……目良です、好きな睡眠はノンレム睡眠……よろしく……』
ヒーロー公安委員会……そういえばまだ電話番号つき名刺、捨ててなかったなと緑谷は思いだす。
『仕事が忙しくて碌に寝れない……人手が足りてなぁい……眠たぁい……そんな心情の元、ご説明させていただきます……あ、公安委員会はいつでも就職募集してますから……キミたちも進路の一つとして是非……給料いいですよ、歩合のヒーローより……ヒーローと兼業可能です……』
ミッドナイト先生から職場体験で『そこはやめなさい』と言われたが、今壇上にて進行を務めるこの人こそ、ミッドナイト先生に眠らせて貰った方が良かないかと思うほどには、疲れが見てとれた……。どんな激務なのか、ヒーロー公安委員会って……電話しなくて良かったかもしれないと緑谷は今日、名刺を破り捨てようと決めた。
それから、目良さんの話は続いた。此度の試験は1540人の勝ち抜けであること。
今のヒーロー社会の飽和状態とステイン逮捕後のヒーローのあり方、無償の献身の果てにこそヒーローという称号はあるべきと分からんでもないが、この現代社会において命懸けのヒーローに何も求めるなと言うのは酷な話という主張、対価にしろ義勇にしろ、ヒーロー達の切磋琢磨の果て今の犯罪発生から解決までの時間は引くほど短く、仮免取得後はその激流に飛び込まねばならない……と締めくくり、目良は言った。
『よって、試されるのはスピード、第一次試験を通過できるのは先着100名としまーす』
目良の背後の大型ビジョンに、数字が映し出された。
「受験者は1540人……合格者は5割と聞いてましたのに」
「つまり、合格者は1割を切るという事ね?」
「ますます緊張してきたぁあ……」
八百万が、蛙吹が、耳郎がこの事実に悲観の呟きを上げた。
そしてーー1次試験の課題が提示される。
①三つのターゲットを身体につけて、ボールを当て合う的当てバトルロイヤル。
②最初に所有するボールは6つ、ターゲットを3つ当てられたら失格、3つのターゲットは必ず見える位置に貼らなければならない。
③最後のターゲットを当てた場合のみ撃破扱いとし、2人撃破で突破。
雄英入試のロボ撃退と似ているが全く違うなと、緑谷はそのルールを聞いて苛烈さを感じ取り考えた。というか……これ個性や実力を見るための試験にしてはあまりに安直なとも考える。
『えーじゃあ……展開後にボールとターゲット配るんで、全員に行き渡ってから1分後にスタートします』
「展開?」
轟がなんぞや、展開とはと疑問を呟いた瞬間……多古場競技場が揺れて、天井が割れた。日光を帽子で遮りながら緑谷はその様子を見届け、集められた待合室がまるで段ボール箱のように展開して、周囲には様々な地形のセットが現れた。
山岳地帯、ビル群、道路、滝、工場コンビナートと、雄英高校の演習場を纏めたとばかりの地形だった。
「各々苦手な地形、好きな地形あると思います……自分の個性を活かして頑張ってくださぁい」
「無駄に大掛かりだなぁ」
現れたフィールドを見回して、こんな事するから寝れないのではと、緑谷は目良に対してそう呟くのだった。