【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「6年前……私が怪我を負ってからだ、私とサーが価値観の違いで、コンビを解消した」
「それって……毒々チェーンソーのーー」
「天丼が好きだなぁキミは……」
オールマイトは緑谷と並んでベンチに座りながら、当時のコンビ解消の話を語り出した。AFOを打ち倒したが、腹部を抉られた時かと時系列を確認する緑谷に、オールマイトは続けた。
「AFOとの戦いの大怪我、その治療の為の大手術を経て、私は何とか生きながらえたがフォームの維持、全盛期の力で戦う時間が無限では無くなった……そして何より私は、皆の前に出て元気な姿を見せねばと思っていたんだ」
「象徴として……ですか?」
緑谷の言葉にオールマイトは頷いた。AFOの存在事態がそもそも都市伝説じみた話、そのAFOを秘密裏に何とか倒した代償の怪我、しかしヒーローの象徴、No.1の彼が突然引退をすればどうなるか、緑谷もオールマイトの心情が理解できた。
「サーは、私に引退を勧めた……そして後継者を探しOFAの譲渡も、根津校長もそれで私を、かつての母校雄英で教師として教えながら探せば良いと進言してくださった……だが私は、引退をすればまたAFOに取って代わるヴィランが台頭し、混乱が再び起こると感じて現役続行を決めた」
突然の引退は新たなる混乱と、AFOの台頭を考える新たなヴィランが生まれかねない、故に戦い続けたのだと、神野の戦いまでの思いを緑谷に語る。それを聞いて緑谷は……考えさせられた。
「もしも、僕がオールマイトだったら……多分同じ考えに至るかもしれませんね……こうして今話を聞いたら、頼るべきだと、なぜ引退しなかったんだと言いたくなりますけど……オールマイトのその時の心情……焦り?なのかな、象徴であった貴方を思えば、その選択も分かってしまうというか……」
今こうして話を聞いたからこそ『なぜそうしなかった?』と言えるが、当時の心境を思えば、それにもしも自分が直面すれば『そうするしかあるまい』と、なるだろうとしか言えないなと、若輩の浅はかな答えだがとオールマイトに言った。
「向こう数年の混沌が、また新たなヴィランを生み出すだろうと私は戦う事を決め、ナイトアイとはコンビ解消した……それだけじゃあない、彼は……私の未来を見てしまったらしい」
「未来を……」
「私の最後は、ヴィランによって惨たらしい死を迎えるのだそうだ」
サー・ナイトアイの個性は『予知』その条件こそ隠しているが、対象の未来を見る事ができるという、サーはオールマイトの未来を見てしまった、だから……余計に引退を強く進言したというわけかと、緑谷は納得した。
「それは……その、いつ位とか……」
納得はしたが、唐突に未来を、寿命を口にしたオールマイトに緑谷は動揺は流石に隠せなかった、だから尋ねてしまった。
「決別の時から言われて6〜7年だと……つまり今年か来年あたりだそうだ……」
「そんな……」
未来を見てしまい、変えたいサー・ナイトアイとそれでもその時まで象徴であり続けようとしたオールマイト、その幕は惨たらしい死でもって引かれる……それは今年か来年あたりだと聞いて、緑谷は呆然とした。
「その時は神野のAFOとの戦いだと思った、その気で戦ったさ……けど、キミが来た……仮に、サーの予言があの日だったとしたらキミが捻じ曲げてくれたと私は思ってる」
「じゃあ何故……今もランニングを、ゆっくり教鞭を取りながら余生を過ごせばいいじゃあないですか……」
仮にそれが、あの日共にAFOをぶちのめした日ならば、キミは予言を捻じ曲げてくれたと、オールマイトの言葉に、尚更何故ランニングまで始めて鍛え直しはじめたのかと緑谷は尋ねる。
「だからこそ、さ……緑谷少年、私はね、君にとても感謝をしているんだ……キミとの出会いが無ければそもそも、サーとまた話す事も無かったのだから」
「え?」
「私がキミと組み手をする前……私はキミを後継にすると、サーに話した……すると彼はこう言った、トチ狂ったか!オールマイト!と」
「ぶふぅう!でしょうよ!!あの時なら尚更!!」
そりゃあ、あの時の自分を後継に推薦したら、正気を疑われて仕方がないだろうと緑谷は吹き出した。
「いやね、私もマズったなぁって思ったよ!後継者って言ったら彼からすればOFA譲渡を意味するし、ちゃんとその辺言ってなかったなぁって!はははごふぁ!」
「あーもう、あんまり笑うと血ぃ足りなくなりますよオールマイト先生……」
オールマイトも、報連相を失念して色々とやらかしてしまったと理解していた。
「まぁそんな、幸か不幸か私たちはまた、話すことが出来たんだ……この前のOFAの欠片の話もそう、しがらみも確執も言ってられない緊急事態だと、彼が逐一連絡してくれている……それは、キミが引き寄せてくれたんだと僕は思っている」
「僕がですか……買い被りすぎですよ、全く……」
いくら何でも買い被りすぎで大袈裟だと、緑谷は頭を掻いて照れた。しかし、オールマイトは真面目に緑谷へ言った。
「キミの個性も、行いも、言葉も、善悪、清濁あわせ全てが……皆を引き寄せていると思う……その果て私は生かされたなら、君に貰った命をやたら怠惰に浪費してはいけないと思ったのさ」
立ち上がり、ボムっ!と煙が上がる。今はもう見ることが珍しいマッスルフォームとなったオールマイトが、拳を握り宣った。
「たとえ引退しても、私は君に貰ったこの命をヒーローとして、過去の象徴として燃やそうと思っている、それが……私の最後の仕事だと思っているよ」
緑谷はそれを聞いてズキリと心が痛んだ。別に……怠惰に過ごして、余生を楽しめばいいのにと。ああでも、オールマイトはそうはしないから、ヒーローであり象徴になれたのだろうなと、緑谷は改めて分からせられた。
なら自分は、そんな何もかもを引っ張ってきてしまった自分は、それに応えねばならないと、緑谷も立ち上がる。
「オールマイト先生……僕は、決して貴方みたいな象徴にはなれません」
「そうか」
「その役目は、僕よりミリオ先輩がしっかりやってくれると思います……」
「そうか」
「ですが……あの人にはできない、あの人や貴方にはなれない象徴になら、僕はなれると思ってます……」
「そうか」
「ミリオ先輩が貴方を継いで、平和と英雄の象徴になるなら……僕は、悪(ヴィラン)の……恐怖の象徴になろうと思います」
緑谷の決意を聞いて、オールマイトは頷いた。象徴の形は、一つじゃあない。オールマイトの意思を、魂を継いで、それでも自分は同じにはなれない。だからこそ違う形で、違う方法で象徴となると緑谷はオールマイトに宣言した。