【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「ナイトアイさん、そろそろ始めましょう」
リュウキュウの号令に、久々に緑谷を呼んだサー・ナイトアイが頷く。左右の隣に陣取るバブルガールとセンチピーダーもまた、姿勢を正し胸を張った。
「貴方がたに提供していただいた情報のお陰で、調査が大幅に進みました」
ナイトアイがファットガムや切島、天喰達を見てから、また視線を真正面に戻した。切島は当事者意識が無いらしく、俺達?とファットガムを見たら、その肩をポンとファットガムは叩いてあげた。
「死穢八斎會という小さな組織が何を企んでいるのか……知り得た情報の共有と共に……協議を行わせていただきます」
死穢八斎會……治崎とエリちゃんの件に進展があったのかと、緑谷は少し気が楽になった、やっと動く目処が立ちそうなのかもしれないと思うと、体に熱が灯り出す。
「お、俺、完全に置いてけぼりなんすけど……はさい?何すか?」
「悪い事考えとるかもしれへんから、みんなで煮詰めましょのお時間や……お前らも十分関係してくるで?」
どうも、まだ話が見えないと切島が呟く。まだ情報共有が無いから当たり前かと、緑谷も切島が撃たれた事しか知らない為、これから……各地の事件が死穢八斎會にどう繋がるのかしかと聞く事にした。
ナイトアイ事務所のメンバー主導で行われた死穢八斎會の協議……まずは、二週間前のある強盗事件から話が出て来た。
『レザボアドックス』なる強盗団の事故、ここに治崎は関わっていたという。この事件は『事故』と警察は片付けたが、きな臭い事が多かったらしい。
そこから、ナイトアイのサイドキックセンチピーダーが調べたところ、死穢八斎會は一年前から全国の組織内の人間や、裏稼業団体と接触していたという。
「そして調査開始からすぐに……ヴィラン連合の一人、分倍河原仁が事務所内から出てきたのを目撃、尾行を警戒され追跡は叶いませんでしたが……警察に協力していただき、ヴィラン連合の潜伏に使っていた場所を確認、その時はすでにもぬけの殻でしたが……恐らく双方良好な関係を築いていると思われます」
写真が切り替わる。オーバーホールこと治崎が、事務所からヴィラン連合の1人トゥワイスと出ていく姿……緑谷は思い出した、神野で自分が爆豪救出作戦時『怨霊忍者スコーピオン』に扮した際、膝を横に蹴り折ってやった奴だったと。
後遺症も無しに歩く様から、完治したのかと驚くが顔には出さず、2枚目の廃工場らしき場所には、同じ種類のインスタント麺のカップやら何やらのゴミが散乱していた。困窮しているのが伺える。
たしか……ヤクザは身内が食いっぱぐれないように飯やらは組内でインスタントやら用意するとか見た事がと、記憶を漁る。同じ種類があるあたり、箱で買って腹だけは満たして働かせてシノギの上納金を納めさせるとか……今はどうなのかしらないが、と写真を緑谷は見つめた。
「連合が関わる話なら、という事で、俺や塚内にも声が掛かったんだ」
ああ、それで師匠のグラントリノも呼ばれたのかと、緑谷は納得した。
「その塚内さんは?」
「他で目撃情報があってな、そっちへ行ってる……いや小僧……まさかこうなるとは思わなんだ、面倒な事に引き入れちまったな……」
「面倒だなんて思ってませんよ、師匠」
今更何をと緑谷は胸を張る。その緑谷の呼び方に、ミリオがふと尋ねた。
「そう言えば師匠って……」
「ああはい、職場体験の時に僕を鍛えてくれたんです」
「ああ、そうなんだ」
この辺りの繋がりをミリオは知らなかったらしい、彼が居なければ僕は僕の徒手空拳の型を定められなかっただろう、本当に恩を感じてならない。
話は進む。この件があり、サーは『HN(ヒーローネットワーク)』にて協力を要請し、こうして全国からヒーローを集めたのだが……。
「雄英生とは言え、ガキがこの場に居るのはどうなんだ?職場体験やインターンと訳が違うんだぞ」
緑谷の隣に座していたヒーロー、ロックロックが、雄英の生徒まで呼ぶ理由が分からんとヤジを呟いた。
「吐かせ!この2人はスーパー重要参考人やぞ!」
「俺……たち?」
「ノリがキツイ……」
そのヤジに待ったかけたのがファットガムであった、この2人が居なかったら事件が繋がりも進展も無かった!そう切島と天喰を指し示す……が、切島は全くもって何が?何かしたか?と首を傾げ、天喰はノリについていけないと項垂れた。
「とりあえず、初対面の方も多い思いますんで、ファットガムです、よろしくね!」
「「丸くてかわいい……」」
「おっ!飴やろうなぁ!」
挨拶を交わしたファットガムが、かわいいと言ってきた麗日と蛙吹に飴を渡した。また話が逸れそうだと、ナイトアイは即座に続きを話した。
「八斎會は認可されてない薬物のサバキを、シノギの一つにしていた疑いがあります、そこでその道に詳しいヒーローに協力を要請しました」
「昔はそういうん、ゴリゴリにぶっ潰しとりました!そんで先日の烈怒頼雄斗デビュー戦!今までに見た事の無い種類の物が、環に撃ち込まれた……」
その薬品への、死穢八斎會への怒りか、まだ持っていた飴を握りしめて砕き、さらさらとテーブルに落としてファットガムは言った。
「個性を壊す薬……!!」
個性を壊す!?
その言葉に集められたヒーローたちが騒然とした。そんな物を撃ち込まれたのか!切島くんと天喰先輩は!?緑谷は2人を心配で見つめたが、何より隣に座していた通形ミリオは気が気でなく思わず立ち上がった。
「ええ!?環、大丈夫なんだろ!?」
「ああ、寝たら回復したよ……見てくれ、この立派な牛の蹄」
「朝食は牛丼かな!」
天喰が立派な蹄を見せた事に一安心した通形、緑谷は尋ねる。
「天喰先輩……ちなみに店は?」
「僕は吉野家派だ」
「ロックロックさんは?」
「あ?俺はなか卯……って、話が逸れんだろ学生、回復すんなら安心だな、致命傷にはならねぇ……」
何牛丼チェーン、どこが好きかの話になってんだと、ロックロックはツッコミを入れつつ、回復するなら大丈夫なんだろと、個性破壊薬はあくまで一時的な個性封じにしかならないのではと声が上がった。
「いえ、そのあたりはイレイザーヘッドから……」
個性破壊、対して緑谷達の担任相澤先生こと、イレイザーヘッドから説明をと、ナイトアイが指名した。
「俺の抹消とはちょっと違うみたいですね……」
イレイザーヘッドの個性『抹消』見た相手の個性を使えなくする個性と、その薬品は違うと説明が始まる。
現在の、個性を持った人間が持つ『個性因子』というのがあり、抹消はあくまでその『機能を一時停止させる』個性で、個性因子を破壊しているのでは無いと。
「環が撃たれた直後、病院で診て貰ったんやが……その個性因子が傷付いとったんや!幸い今は、自然治癒で元通りやけど……」
「その撃ち込まれた物の解析は?」
「それが環の身体は他に異常無し、只々個性だけが攻撃された!撃った連中もだんまり!銃はバラバラ!弾も撃ったキリしか所持してなかった!ただ……!」
八方塞がりかと思ったが、ファットガムは隣に座る切島へ目線を向けて、笑って言い放つ。
「切島くんが身を挺して弾いたおかげで……中身の入った一発が手に入ったっちゅうワケや!!」
「……うわ!!俺っすか!?びっくりした!急に来たぁ!?」
そんな当の本人切島は、全く話がついていけないと驚愕した。麗日や蛙吹がお手柄だと褒める中、ファットガムの話は続く。
「そしてその中身を調べた結果……むっちゃ気色の悪い物が出てきた……」
その表情は怒りに満ちている、それだけの物が弾丸に込められていたのかと、そこに何が入っていたのか、緑谷は聞き逃さないように集中した。
その真実を緑谷が知った瞬間……一気に後悔が精神を染め上げる事も知らずに。
「人の血ぃや細胞が入っとったぁ……!」
人の血液……その単語を聞いて、緑谷は思い出す。
インターン初日、路地裏から出てきたエリちゃん。その腕や足に巻かれた包帯……まさか、いやまさかと、身体に怖気が走り体温が失われていった。
そしてそれは……右隣に座っていた通形ミリオも同じような反応をしていたのであった。