【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「こんな個性でも……脊髄ぶっこ抜きでも……貴方みたいになれますか?」
「個性が……え?な、何?何だって?」
その日の事をオールマイトは……度々思い出してはこう語る。
『この子は、ヒーローにしておかないとヤバい』と。
「あーあ……またやっちゃった」
その日、クラスメイト(かっちゃんを抜き)と担任を生首脊髄オブジェにしてから帰宅の道を歩いていた緑谷出久は、自らの所業を反省していた。これで何度目だろうか……クラスメイトに生首脊髄オブジェの刑を執行したのは。多分3桁は超えたかもしれないなと溜め息をついて歩き続ける。
この個性が分かってから、緑谷は『ヴィランの子』呼ばわりされ、いじめられていた時期もあった。個性が全て、いい方向に働くわけでは無い、時折その容姿やあまりに恐ろしい力は差別と恐怖の対象にもなり、出久もその被害者であった。
しかし、同時に彼は加害者でもあった。最初はいじめられて仕返しに、脊髄をぶっこ抜いたのが始まりで……そして警察まで呼ばれたのを覚えている。後になって脊髄をハメ直したなら蘇生できたので厳重注意で済んだ。
それからの出久は孤独に近しい状態になってしまった……人を簡単に殺しかねない個性は恐怖と畏怖の象徴として同年代に広まってしまった。
ただ、彼のオールマイトへの憧れとヒーローへの憧れ、しっかり勉学に励む姿と『そこに触れなければちゃんとしたいい子』と大人たちは(お礼参りをして)理解はしてくれたのでバランスは取れていた。
それでも……冗談で弄る輩はいる訳で、それが中学3年間続いた緑谷は、その度『生首脊髄オブジェの刑』をクラスメイトと先生方々に執行して中学校に恐怖政治を敷いていたのである。
「こんな個性でヒーローなんて、無理かもなぁ……ははは……」
両手を見つめ自嘲する、自分が悪いのは分かっている。けど度々それを指摘して弄ったり、ヴィラン呼ばわりは酷いじゃないかと思いながら下校路のトンネルを潜り抜けた矢先……。
『Mサイズの……隠れミノ……』
背後からの囁きに振り返る間も無く、出久は液体らしき何かに覆い被さられた。敵か!?まさか自分が被害の標的にされようとはと、そんな思いもよらない事態に出久はもがいた。
『大丈ーー夫、身体を乗っ取るだけさ落ち着いて、苦しいのは約45秒…すぐ楽になるさ』
「んーーーーー!?」
『掴めるわけないだろ!流動的なんだから!!!』
もがく手を彼方此方に向けて掴もうとする出久に、ヘドロヴィランがそう勝ち誇って言う。この日まで出久は、いじめて来たやつも、茶化して来た輩も分け隔てなく脊髄をぶっこ抜いて来たーー。
しかし出久は気付かされる!液体、流体という個性には脊髄が見当たらず、自身の個性など無力だという事に!
『こんな場所で……ああでも、こんなヴィラン候補、ここで死んだ方がいいかもしれない……』
こんな危険な個性持ちは、ここで死ねば世のためだろう……次に生まれたらもっとマシな個性に生まれようと、命を手放そうとした刹那ーー。
『もう大丈夫だ少年!!私が来た!』
憧れの声を聞いて、出久は意識を手放した。
「つまり……キミは問答無用で、脊椎がある動物ならば脊髄をぶっこ抜いて殺害できるとーー」
「はい……その個性で子供の頃から、ヴィラン呼ばわりされて……」
「それは何とも大変なーーー」
「だから僕は、その度に相手やその親御さん、時には親族一族郎党全員の脊髄をぶっこ抜いて来たんです……あ、ちゃんと突き刺せば蘇生はできるんですよ?だから殺したりはしてないんです……」
「Oh!?」
オールマイトに助けられて出久は、自分の個性と身の上を話した。この個性でいじめられた事、やり返してしまっている自省、それを聞いたオールマイトは笑顔が引き攣った。
「ま、まぁ、そのだね……個性は如何なるものでも、その人の意識と使い方で正義にも悪にもなる……だからあれだ……そこさえ間違えなければ大丈夫だよ」
「そうですか……」
「落ち込む事は無いさ、ただ、キミの課題は気が短いところだな?ヒーローが怒りで闇堕ちなんて、格好つかないだろう?」
言われてみればそうである、今更ながら指摘された出久に背を向けて、オールマイトはその場を去った。
「……とりあえず、学校に戻って脊髄戻さないとなぁ、かっちゃんにも謝らないと」
未だ教室に残る29の亡骸と29のオブジェ、まずはそれを片して頭を下げねばなるまい……出久はそう呟き学校へ戻る事にした。