【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
ビルの屋上を飛び交い、視界から決して治崎の乗る車を逃さなかった二人は、やがて車が、あるビルの前に止まりそのまま出てきた治崎が、エリを引っ張って早歩きで入って行ったのを目撃する。若頭補佐であるヴィラン、クロノスタシス……『玄野針』も降車し、追従していた。
そこに降り立った二人は、聳え立つビルを見上げた。
「ここは……廃ビルみたいですね」
「年季もかかってる、多分解体する金もないからそのままなんだ……」
老朽化から草が生え散らかし、割れたガラスが散乱している。開発から取り残された過去の産物に逃げた治崎達を、いよいよ追い詰めたと緑谷と通形は互いに目を合わせ頷いた。
何があろうと、罠であろうと、エリちゃんは必ず助ける。もう二度と、手を振り払うものかと緑谷は拳を握り締め、廃ビルへとミリオと共に入った。
いよいよ観念したのか、はたまた余裕があるのか、治崎は緑谷と通形を迎えるように体を向けて立っていた。
「どうもヤクザ屋さん、仮免のヒーロー二人です」
「すいませんねぇ、やっぱ……少し話、聞かせて貰っていいですか?」
治崎に対して、あの時はできなかった事情聴取から始めてやろうかと二人が尋ねた。治崎は目を細めて応答する。
「まさか追いついてくるとは……車は止めてやった筈だが」
「空飛んで来ましたよ、ええ、上見なかったんですね?」
「ヒーローは助けを求められたら、空だって飛ぶんだ、知らないでしょ?その子……保護しに来ました」
まぁ全員が全員ではないが、それくらいやってのけてエリを助けに来たんだとミリオは治崎に言い放つ。呆れたようにため息を吐いて、治崎は言い返す。
「事情が分かったらヒーロー面か、学生さん達?あの時見て見ぬ振りをしたよな、しかも面倒とばかりに手を振り払った」
初めての遭遇の事、正しい事を、プロヒーローとしての責務と責任の為、エリちゃんの手を振り払った事を治崎は出してきた。
「お前らに保護されるなんてこの子は望んじゃあいない、この子にとってお前らは……ヒーローじゃーー」
「やかましい!!」
一喝が、廃ビルに響き渡る。声を上げたのは緑谷出久……いや、イーヴルヒーロー・イズクだった。その一喝で、治崎も玄野も、たじろぐくらいには怒気が叩きつけられた。
「そうだとも、あの時から……めちゃくちゃ後悔した!ごはんも喉を通らなかった!何なら、その子にお前がやってる人道無視の行いも知って吐いたくらいだ!!あの時お前を……縊り殺してでも、手錠かけられてでも助けてやるべきだった!!」
今日まで、後悔してやっとここまで来た。その子を助けるために、お前達をぶちのめす為に!だからこそーー。
「だからこそ、今!僕はここに来たんだ!!今から……その子のヒーローになる為に!!」
一歩進んだ決意の歩みに、通形ミリオ……いや、ルミリオンも笑顔で頷いて並び立つ。
「ああそうだ、今からエリちゃんを助ける、その為に俺が居るんだ!ここにね!」
2人の口上を聞いた治崎は、嘲るような眼差しを向けて、救えないと首を左右に振り、呟いた。
「伝わらないなぁ、分かりやすく言ってやるよ……死ぬって事だよ」
その一言が合図らしい、廃ビルの様々な、テナントの跡や扉から……同じペストマスクをつけたスーツの男達がゾロゾロと、イズクとルミリオンを囲むように現れる。
金属バットから日本刀、拳銃まで持った……ヤクザ達の群れに、イズクとルミリオンは背中合わせになって互いの背後を守り合う。
「うちも小さいとは言っても、下部組織や取引先も居てね……逃走を確実にする為呼び寄せたんだ……ヒーローとは言え君らは学生、この人数を相手にできるかな?」
よもや、最後の足掻きにこんなものまで用意していたのかと、治崎の声にイズクは言った。
「成る程、少しはヴィランらしい事やってくるんだ……ちょっと退屈してたんだ」
拳を掌に打ち付け音を鳴らし笑うイズク、そしてルミリオンは治崎に手を引かれるエリに向いて、笑って言った。
「エリちゃん!すこーし目を瞑っててくれるかい!こっちのお兄さんがこわーい姿を見せるからさ!大丈夫!必ず助けるからね!!」
サムズアップといい笑顔を見せ、エリは手術服を握りしめながらぎゅっと瞼を閉じた。
「これでいいね、存分にやりなよイズク」
「配慮の言葉ありがとうございます……これで心置きなく……ぶっこ抜けます!」
やる気らしい、馬鹿げてる。敵連合が恐れたまだヒーローですらない学生は、人数の暴力を知らんらしいと、エリを連れて奥へ歩き出した治崎は言った。
「殺せ、決して生きて帰すなーー」
その号令を聞いて、ヤクザ達は叫びを上げた。
「殺れやぁぁあああああ!!」
押し寄せる人波に、互いの対面する方向へ、イズクとルミリオンは構わず突貫した。