【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「「治崎ぃいいいいいい!!!」」
チンピラの壁を打ち倒し、奥へと逃げた治崎を追って2人が走り出す!明らかに異常な撃退までの時間には、流石の治崎も焦ったか、振り返って目を見開いてしまうくらいには反応があった。
「廻、こちらはまかしてくだせぇ……あんたは屋上に」
「頼む」
奥のエレベーターには何故か電源が通っていた。この時のために態々通していたのかは知らない、ドアが開いて治崎とエリが入るや閉まって、その前を遮る様に玄野針こと『クロノスタシス』が遮る様に立ちーー左右の袖から拳銃を取り出して迫り来るルミリオンとイズクに発砲した!
イズクは即座に横へ回避し、ルミリオンは透過を使い弾丸を無効化するも立ち止まる。ぐんぐん屋上向けて上がるエレベーター、ガラス張りな為に治崎が見下ろしているのが2人には見えた。
「申し訳ありやせんが、ヤクザの復活……いいや廻の目的の為、ここは通しやせんよ」
二丁拳銃を構えるクロノスタシスを前にした2人、緑谷はそのセリフを聞くや即座にルミリオンに言った。
「ルミリオン、先に……貴方ならあれに追いつける」
「気をつけなよ、イズク」
透過の個性を応用すれば、一気に追いつけるとルミリオンは床から落ちる様に消えた。対してイズクは一人、クロノスタシスを前に立ち、返り血を浴びた髪の毛を後ろに流して視界を確保した。
「あんた、本当にヒーローですかい?うちの傘下や雇われをあんなザマにして、血まで浴びて……殺しまでやっておいて」
「失礼な、ちゃんと仮免持ちのヒーローだよ、ああ安心しなよ、脊髄ぶっこ抜いて殺した奴らは戻したら生き返るからさ?」
他のそれ以外に重傷負った奴らは知らないがなと宣うイズクに、クロノスタシスはその個性の髪の毛を蠢かせ、臨戦体勢に入る。
「今更なんだけどさ……あんたら死穢八斎會の目的は……ヤクザの復活って今口にしたけど、本当にそれだけ?ここまでするならそれ以外にも理由がある?」
ふと、死穢八斎會の目的は何なのか、ここまで抵抗する理由は何だと緑谷は距離を保ちながら、右へ右へと回り込む様に歩き出せば、クロノスタシスも右へと歩いて互いに円を描く様に回りだす。
「今際の際だ、記念に教えてやりやしょう……ヤクザの復活は通過点、廻の目的は……社会の変革ですよ」
随分とまぁデカい目的が口から出て来たなと、緑谷は冷たい眼差しをクロノスタシスに向けた。
廃ビル屋上……エレベーターがたどり着いて早足に歩く治崎だったが、ここに来てエリが抵抗して必死に手を振り払おうと暴れた。
「エリ、諦めろ、奴らは来ないさ……さぁ一緒に来るんだ」
「いや、いや!」
屋上にはヘリが鎮座している、これで逃げ延びるつもりがどうやら希望を持ってしまったらしい。ため息をはいて、治崎はエリを見下ろしながら言う。
「いつも言ってるだろう、お前のわがままで俺が手を焼いていると、お前の行動一つ一つが人を殺す……呪われた存在なんだよ、お前はーー」
その言葉にはっとして、エリの抵抗が弱まり……諦めかけた瞬間ーー。
「自分の子どもにぃーー」
「む!?」
「なんでそんな事、言うんだぁあ!!」
コンクリの地面から飛び出て来た、ルミリオンのアッパーカットに、治崎は宙を舞い、どさりと倒れ伏した。
「オーバーホール治崎!お前の負けだ!!観念しろ!!」
マントの中へ隠す様に、エリを抱きしめてルミリオンは治崎へ宣告した。しかしーー。
「ああ……そうか、そう言う話かーー」
クリーンヒットしたはず!余程治崎はタフだったらしい。ゆっくりと起き上がりルミリオンを睨みつけ、オーバーホールは言った。
「俺に子など居ないーー」
それと同時に、屋上のコンクリートがルミリオンとエリに向かって、針の如く尖って襲いかかった!!
「つまり、エリちゃんの個性とやらは、あらゆる物を巻き戻してしまうと」
「それだけじゃあありやせん、その方向すら思いのまま……大人が胎児に、卵子に戻すだけじゃあない……進化を回帰して原始人にすらできる……これによって作られたのが個性破壊の弾丸でさぁ」
クロノスタシスの話を聞いた緑谷は、オーバーホール、治崎廻とエリちゃんの真実を知った。
彼女は組長と絶縁した娘が産んだ子どもで、その『巻き戻し』の個性により父を殺めてしまい捨てられたのを組長が保護して、若頭治崎が教育係に任命されたと。その治崎廻は、組長が孤児院から引き取った義理の息子だと。
解析の果てに判明した個性、そこから作り出したのが個性を破壊する弾丸……そして。
「個性を治す血清……こいつもあれば、このヒーロー社会は、ヴィランとヒーローの戦いの図式は一気に書き変わる、ヴィランは個性を破壊する弾を、ヒーローは個性を治す薬を……互いに撃った治したとなったそれは、弾と血清の奪い合いになる」
一人の少女から生まれた全く違う、正反対の物が、ヒーローとヴィランの戦いを形骸化し、そこには自分達死穢八斎會が君臨する。やがては『ヒーロー』は消え去り、ヒーローという存在が無い昔の社会へと回帰していくのだと。
「個性は病だ、その治療をあっしらが先導し、昔に戻る……個性犯罪も無個性が虐げられる事もない社会をあっしらヤクザが作りあげるんでさぁ」
甘美な話だった、個性差別もそこには無い、ヒーローも、ヴィランも最早ごっこ遊びの戦いになる。その話を聞いた緑谷は……。
「あ、終わった?話?」
「ってあんた!なぁに寝転がってんでやすかぁ!?」
鼻くそを小指でほじりながら、週末の野球中継を見る寝転がったダメ親父の体勢になっていた。完全に舐め切った聞き流した様子に驚愕と怒りを込めて、クロノスタシスは叫んだ。
ピンっと鼻糞をクロノスタシスに飛ばして立ち上がり、緑谷は一息吐いて口を開いた。
「あのさぁ、やめてくんない?嘘つくの……ご大層な事言って結局は、女の子の体から作ったヤクばら撒いて、美味しいご飯たべて、高い車乗って、美人さんとエッチして、役人を札束で叩いてえばりたいってだけでしょ?」
「なっ!?」
ご大層な目的をお持ちの様だが、その本質は所詮金だろと、緑谷は呆れて肩をすくめながら言い切った。
「そんな目的あるんならさ、真っ当に研究して真っ当に活動すればよかったのにさー……結局は金、金!あーもー馬鹿馬鹿しくて笑いも出てこない……しかも、実の子どころか他人の子を切り刻むとか外道も外道だよ……いや、チンピラ以下だなぁ、治崎って奴はさ」
「廻を……廻の目的を、くだらないと吐かすか貴様ぁ!!」
緑谷に二丁拳銃を突きつけるクロノスタシスこと、玄野針。何も言い返せず、怒りで逆ギレに至った相手に、緑谷は一度顔を伏せて、鋭く睨みつけた。
「あとさ……今、僕は過去一番にキレたよ……あんたはただじゃ済まさない……治崎も……」
「だったらどうだってんですか!何ができるんだヒーロー気取りがぁああ!!」
そのまま膝を曲げて、まるで猛獣が狩りで飛び掛かる様な構えを見せるイズクに、クロノスタシスは遂に引き金を引いた。
緑谷の虹彩が、赤く染まる。
まるで怪物の如き瞳が、光の線を残して弾丸を掻い潜り、即座にクロノスタシスの眼前まで間合いを詰めるやーー!
「Finish Him!!」
その両手が、腹部を貫いた!!
「大腸!!」
「がはぁあは!?」
クロノスタシスは痛みとともに驚愕した!その手に引き摺り出されたのは自らの臓物!!しかして皮膚や肉は裂けておらず、まるで透過したように!臓器だけが引きちぎられて地面に叩きつけられ、さらにイズクの両手が身体を貫く!
「腎臓!!膵臓!!胆のう!!」
「あぁああ!!や、やめて!!やめてくれぇえええ!!」
感じる!!自分の臓器が抜き取られている感覚!!それでなお生かされているという恐怖!!床に散らばる自らの臓器と、込み上げて血を吐きながら、クロノスタシスは待ったをかけるがイズクは止まらない!!
「肝臓!!右肺!!気管支!!」
「が、お……げ……」
最早残るは食道と胃、小腸と、左肺に心臓……仰向けに倒れたクロノスタシスに、緑谷は両手をさらに腹部へ貫くや……掴み上げるは背骨!!
「僕の新必殺技ぁあああああ!!」
「げ、が……ぎぃぃ!?」
背骨が捻られ、ビキビキと体内で響く中で、緑谷は新たなる必殺技の名を叫んだ!!
「解・体・罪・罰(かいたいしんしょ)!!」
クロノスタシスの体内で、背骨が半分にねじ切り折られた。
そのまま手を体内から引き抜いて立ち上がり……緑谷は蠢く左肺を踏み潰して言う。
「フェイタリティ……!!」
ヴィラン名『クロノスタシス』
本名、玄野針……臓器を引き摺り出され、左肺を潰され、さらに背骨を真っ二つにされて戦闘不能。
恐ろしいことに……この状態でなお心臓は動き、意識を手放しはしたが、まだ彼は生きているのであった。