【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
『王手……だよな?』
『投了だ、あれだけ嫌った割にハマってるじゃないか……』
神野での騒動からすぐーー治崎は、死柄木率いるヴィラン連合を、死穢八斎會に匿った。
酷いものだった、ツギハギの男とモヤに頭部を隠した男、女子高生以外はまるで、車に轢かれたか現場事故に巻き込まれた様な大怪我をしていた。
だから治してやった。悪だろうが、ヴィランだろうが、恩を仇で返すなんて礼儀知らずじゃあない。治崎は実質的に、天下のヴィラン連合を自らの下に置く事ができた。
その首魁、死柄木弔も……子ども大人な幼稚的万能感はあったが、礼には礼をと下働きに文句なく従事していた。
治崎は暇つぶしと将棋に誘ったら知らないとか抜かして、教えてやったらメキメキと上達し、互角の手を打つほどにまでなっていた。
そんな最中の、エリの脱走から話は始まった。
『そういえば、街でお前がやられたらしいヒーロー……雄英のインターン生に会ったぞ?イズクだとか』
今日で何手目かの将棋、互角の盤面に駒を指そうとした死柄木の手が止まる。
『嗅ぎつけられたのか?』
『多分な……余程恐れているが、インターン生がそんなに怖いのか?天下のヴィラン連合が?』
死柄木は、駒を置いてグラスに持ち替えてそれを傾け飲んで一息吐くと、今までに聞いた事のない、気怠げさが無い真剣な声で言う。
『悪い事は言わない、すぐ姿を隠せ、対峙するならちゃんとした逃走経路を用意しろ、善意の忠告だオーバーホール』
たかが、まだ仮免の学生に見せる態度とは思えなかった。治崎はその時、周りで立っていた組員すら笑っていたのを覚えていた。かく言う自らも、ヴィラン連合首魁がこうまで怯えるとはと、大した事ないなと感じたくらいには。
『あいつはな、こっち側の人間なんだよ、ヒーローの皮被った悪人だ……あいつにはヒーローの様な慈悲も、手加減もありゃしない……ヒーローの決まりも飛び越えて、狙われたら最後、目的を狩るまで動き続ける殺戮兵器だ……俺たちの大半はあいつにやられ、黒霧は名前を聞いただけでグラスを落とすトラウマを刻まれたんだ』
マジで関わるな、本当にと念押しに言う死柄木に……流石に本当らしいと真面目に耳を傾ける。
『馬鹿な……ヒーローでもない学生が?』
『ステインを倒したのも、俺の先生をオールマイトと叩きのめしたのもあいつだ、いいか……あいつとは関わるな、関わるにしても話の場に留めて時間稼ぎをして姿を隠せ……』
そこまで言われた治崎であったが……結局死柄木の言う通りにはしなかった。此度のガサ入れで、唯一の褒められた点は早めの避難くらいだろう。
その後彼は目撃する。車にしがみついて追いすがり、そして追いついて集めた兵隊をルミリオンと壊滅させ、さらに玄野も倒してここまでたどり着いたと。
『あれは理不尽の塊だ、概念だ、逃げるか穏便に済ませないと……無事では済まないぞ』
その理不尽の概念が、また理不尽を纏ったことに、オーバーホール、治崎廻は唖然とするしかなかった。
黒色の鎧……それを纏った緑谷出久は、ズカズカと歩いてオーバーホールに近づいていく。オーバーホールは即座に地面のコンクリを分解して針を作り上げ、鎧を纏った緑谷を貫きにかかるーーしかし!
「るらぁあああ!!」
剛腕の一薙ぎで、そのコンクリートの針を砕いた瞬間ーーその姿は消えて眼前まで一気に距離が詰められた!
「な!?」
「ガァアアアア!!」
首を掴まれそのまま持ち上げられ、背中を思い切りオーバーホールは叩きつけられる!!肉体がバウンドして宙を舞うと、その足首を掴み、緑谷はオーバーホールを振り回した!
「グルァアアォアアア!!」
「むぉあぉあぉぉあ!?」
用意しておいたヘリコプターに叩きつけられ、扉がひしゃげ、機体が微かに動いた!いくつか身体の骨が折れて這いつくばるオーバーホール、その首に何かが巻き付く!
「が、うあ!?」
黒色に赤い線の入った鞭の様な物体が、緑谷の掌から生えてそれが首を縛り上げ、思い切り引き寄せた。
ぐわんと宙に舞うオーバーホール!しかし!やられたままではないと手を伸ばし、右前腕を掴んだ!
パァン!!と緑谷の右前腕が弾け飛ぶ!!
「イズク!!」
エリを庇うルミリオンが叫んだ!攻撃は通る!!殺せる!!そんな希望を抱いたオーバーホールが目にしたのはーー細かい触腕が、新たな右前腕を象り再生する様であった!!
再生した右前腕を振りかぶり、緑谷は宙舞うオーバーホールを思い切り殴り抜き、屋上の端まで吹き飛ばされるオーバーホール!!
「ば、けものがぁ……」
こんな事が、こんな理不尽があってたまるかと、治崎は懐からケースと拳銃を取り出す!それはーーエリから作り上げた『個性破壊弾』の完成品!!
計六発全てを装填して、こちらにゆっくり歩み寄る鎧姿の緑谷に向けて叫んだ!!
「来るな!来るな化け物がぁあああ!!」
治崎は引き金を引こうとして、できなかった。その銃が、無慈悲にも見えない力に引き寄せられて化け物となった緑谷の手に収まりーー。
パァンーー!
「あーー」
治崎の腹部に着弾した。そして体感した、自らの『個性』が、体から消えていく感覚!この土壇場で、更なる絶望に治崎は叩き落とされたのである。
「これだったか、切り札の個性破壊の弾丸ーー残念だったな、自らが作った弾に個性を破壊されて」
くぐもった声だった、その声の主に見下ろされて、治崎は……初めて実感する!
『恐怖』
今まで自分が、他人に与えてきたそれが!今自らにひしひしと叩きつけられているという事実!逃げ場もなく、個性も失った治崎はーー。
「や、やめてくれ!ひ、ヒーローだろ!お前は!!ヒーローが、これ以上したら!社会問題だぞ!過剰防衛だ!なぁ!?」
命乞いに走った。それを聞いた緑谷は……。
「お前は、エリちゃんにやめてと言われてやめたのか?」
鎧が蠢き出した、時間がもう無い、だが……こいつを叩きのめすのにもう時間はいらない。
「散々傷つけて来たお前が、同じ立場になったらこんな無様を晒すのか?」
「あ、ああーー!待ってくれ!!」
「駄目だね」
緑谷は右足を思い切り振り上げ、足裏が空に向くほど真上に持ち上げーーそして治崎の脳天目掛け振り下ろした!!
「ああ!!いやだーー」
「イーヴルゥウウウ……ヒールクラッシュ!!」
脳天に叩き込まれたかかと落としが、治崎の頭蓋を割りーーその勢いは屋上のコンクリでは耐えきれず、治崎の肉体はコンクリを貫通し、屋上から一気に地上階まで、ガラスの床を割りながら叩き落とされたのであった。
ベルトが蠢き消えていく、鎧も、まるで緑谷の体内に格納される様に取り込まれていき、返り血を浴びたコートを風にたなびかせて、緑谷の変身は解除された。