※この作品はR-18です。

【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】   作:ぶっこ抜きデク

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209話 芋虫

「俺が搬送されてからそんな事になってたんか……何か、不甲斐ないな……ぶっ倒れちまうなんてよ」

 

「十分に活躍したじゃないか、ファットガムを守り切って、攻撃のアシストしたんでしょ?見事、守れるヒーローの一歩を踏み出せたんだから」

 

 全てが終わり、緑谷は搬送された切島のお見舞いに来ていた。ヒーロー側の被害は少ない、ロックロックと切島が搬送され、エリちゃんも高熱が出てしまいそれについていく形で緑谷と通形は救急車に同乗した。

 

 切島も、緑谷が通形と先行した際に分断されて、死穢八斎會のヴィランと対峙したが、見事にファットガムのアシストをこなした。そして搬送されたのだ、宣言通り守れるヒーローへ踏み出せた事を緑谷は祝福する。

 

「いや、お前無傷じゃんかよ……やっぱりうちの総大将はすげーな」

 

 が、目の前で制服に着替えた緑谷は、全くの無傷で、さっきまで首魁とやりあってからエリちゃんを助けて帰って来た。それに比べたらと切島は項垂れた。

 

「あ、これ違うんだ、エリちゃんの強強応援パワーで回復しただけ、めっちゃくちゃ酷い目にあったんだよ、ほら血、これも!ほらここも!」

 

「いや……それ明らかに返り血だろ……」

 

 傍に置かれた真っ白なヒーロースーツは、もはや白を探すのが難しい程血に染まっていた。血液感染を避けるため、病院側が用意した袋の中に入ったそれを指差して、どれだけ大変だったかと指し示す。

 

「それで?オーバーホール……だったか?搬送されたんだよな……どうなったんだよ」

 

 その決着はどうなったのかと切島に尋ねられた緑谷は……険しくも沈んだ顔に切り替わり、切島に言った。

 

「チンピラには相応しい最後だったよ……」

 

「殺し……あ、すまん、死んだのか?」

 

 もう、こいつの決着は殺害以外無かろうと口に出た切島は即座に言い直した。それでも、そんな暗い顔をしたならば不殺での捕縛は無理だったのかと尋ねる。

 

「死ぬより酷い有様さ……やっぱり、忘八者の末路はあれくらいがちょうどいいのかもね」

 

「ぼう……なに?」

 

 緑谷から出てきた、知らない言葉に切島は聞き直した。

 

「人間に必要な八つの徳を失った輩の事さ、南総里見八犬伝知らない?仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の八つの徳があって、それを忘れた人を忘八者って言うんだ、他にも遊郭通いの男や遊郭の主人を指すんだけどね、女の子の肉体切り刻んで弾やらヤクにしたオーバーホールにはうってつけの言い方でしょ?」

 

「難しい事知ってんだなぁ……って……死ぬより酷いって、何したんだよお前」

 

 そんな事をまぁよく知ってるし、確かに的確な呼び方だなと頷く切島だったが、その『死ぬより酷い有様』とやらは、緑谷がやったのではと何をしたのかと踏み込まれて、緑谷は首を横に振った。

 

「僕は何もしてない……まぁ殴り倒したけど……まだ完成してない薬だったんだろうね、個性暴走の果て……人の形を失ってた」

 

 人の形を失う?何だ、その言い回しはと切島に、緑谷はスマホを取り出した。

 

「見る?」

 

 撮影、していたらしい。マジかよと血の気が引いた切島は、即座に横に振って言った。

 

「や、やめとく!」

 

「僕もだ、すぐ消すつもり……ま、今回の任務で分かったのはさ……ドラッグ、ダメ絶対だね」

 

 

 

 その頃……高速道路にて、オーバーホールを護送していた警察の車両が、襲撃に遭い横転していた。投げ出された拘束具に磔にされた物体を見下ろした荼毘は、うわぁとその物体に言い放つ。

 

「こりゃ酷いな、死んだ方がマシだな……」

 

「何がどうしたらこうなるんだよ、なぁ、死柄木?本当に大丈夫なのか?失敗作なんじゃあねぇの?」

 

 隣に居たMr.コンプレスも、その肉塊を見下ろして呟く。横転した護送車の中から死柄木が出てくると、一丁のリボルバー拳銃を持っており、そのシリンダーを取り出して弾を取り出す。一発だけ撃たれていたのを見て、再びそれをシリンダーに収めて、コンプレスに投げ渡した。

 

「だから言ったんだ俺は、さっさと逃げてればこんな事にならなかったと……ほんの少しあんたは遅かったのさ……無様な姿だオーバーホール」

 

 その『肉塊』を、死柄木弔はそう呼んだ。

 

 それは確かに、オーバーホール。治崎廻だった、だがそれは顔面と頭髪でそう判断できる程度で……あまりに惨たらしい姿に変わり果てていた。

 

 両腕も両足も退化の果てに肉腫として、そこから股関節や肩だったらしいとしかわからない。体全体に酸を掛けられて溶けかけの中救い出されたとか、生物災害のホラーゲームのウイルスに侵され、変異した果ての姿と例えればよかろうか。

 

「こ……ろひて……ころひへくれ……はのむ……」

 

 治崎はギョロリと、目を動かして呂律も回らない言葉で頼んだ。殺してくれと懇願する様に、死柄木は歯を見せて笑ってやった。

 

「悪いなオーバーホール……助けられた分は働いた……あんたの作り上げた物は俺たちが有効に使わせて貰う……俺は優しいからさぁ、殺すのはやめておくよ」

 

 死柄木は知っている。

 

『生きているから、地獄を見る』と。

 

 死ねばそれまで、そこで楽になれると彼は知っていたから……彼が作り上げ大事に抱えて、警察が押収した『個性破壊弾』だけは頂いて、荼毘とMr.コンプレスを引き連れ立ち去っていった。

 

 こんな晴れた空なのに、悲痛な泣き声が響き渡る。お願いだ、殺してくれ、もう生きていたくない、誰か、誰か……。

 

 そんな泣き声を治崎廻という『人間だった肉塊』はひたすらにあげ続けた。

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