【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「ここが私のラボ、ちょっと散らかってるけどどうぞ」
パーティ前に、出久を借りたいとメリッサは久に言って案内したのは、自身がこのI・アイランドに通っている学校の、自分が持つ個人ラボだった。
I・アイランドのスクールの学生というのは、設備まで最新式らしい。サポートアイテムの開発機材やら、まず触れる事はなかろう仰々しいパソコン、学生ではなく立派な開発者の部屋……なのだが。
「……あの」
「なぁに?イズク?」
「年頃の男を上げるんだったら……下着は片しましょう、ね?」
「あ!?」
所謂カンヅメ、とやらもやってるらしい。乱雑に散っているブラやらショーツに、目を逸らした出久にしまったとメリッサは赤面して、散らかった服やらを集め始めた。
「ふ、普段はこんなんじゃないの!ちょっと、そう!開発コンペがあって!」
「そう……ですか……」
「……えっち」
「いや不可抗力です!」
これ、自分は悪くないよね!?赤くなってエッチだと指摘されて理不尽だと言った出久から、ドタバタと奥にメリッサが消える。部屋を見渡して、トロフィーや家族写真と、彼女の歩んできた道が何となく分かる中……ふと緑谷は、キラリと机の下から何かが光ったのを見つけた。
「うん?何だ……」
机の下の暗がりに屈んで、手を伸ばすと……何かが指に触れて剥がれ、確かにそれを掴んだ。そして、手のひらに掴んだそれを見つめ……首を傾げた。
「小型のカメラ……?なんでこんな場所に?」
彼女が作った物か?にしては安価な、まるで週刊雑誌裏のカタログにありそうな、中華の広告にありそうだなと見つめて、とりあえず戻ってきたら聞いてみようかとポケットに入れておいた。
「ごめんね〜慌ただしくしちゃって、あ……それでねイズク、ちょっとこれを試してみて欲しいなって」
ゴウンゴウンと奥で音が鳴り響く、洗濯機まであるみたいだと、奥から戻ってきたメリッサが小箱を持ってやってきた。
箱を開けた中には……紫色で板状の物が入っていた。それをメリッサが取り出して、出久の右手を持ち、その手首に巻きつけた。
「これは……」
「手首のスイッチを押してみて?」
言われるがまま、手首にあるスイッチを押す出久。するとブレスレットが光り、電子起動音と共にブレスレットが変形し、バンテージの様に出久の右前腕を覆った。
「名付けるならば……ウィップガントレット、そのままの状態なら余程固い合金を思い切り殴っても全く拳に痛みは来ないし……ちょっとあっちの空間向けて軽く振ってみて?」
何も無い方向に指差して、言われるがまま腕を振ってみた。すると、ウィップガントレットが解れてまるでムチのようにしなって音を立てて、すぐまた腕に巻きついて元に戻ったのだった。
「すごい、まるでムチみたいに……」
「アトラクションを見たり、ウララカさんやヤオヨロズさんからイズクは物を引き寄せるには補助するガジェットがあったら身体に負担が掛からないって……本当はヴィラン捕縛に使う想定の物なんだけど……よかったら使って?」
「いいんですか……こんな凄いガジェット」
彼女のオリジナルガジェットを、そんな簡単に貰っていいのかと右手を包み込むウィップガントレットを撫でながら尋ねた。
「うん、今のイズクには必要だと思うから……」
それは確かにと、此度のエキスポで出久は装備品扱いの鎖分銅やグラップルガンは、流石に身体検査や荷物に引っかかる為置いてきたのだ。その代わりになるなと、的外れな事を考えつつも頭を下げた。
「ありがとう、メリッサさ……いや、メリッサ」
「気にしないで、私にはこれくらいしかできないから……」
少しだけ、彼女の眼差しに影が落ちる。口ぶりも何というか弱々しい……そんな時、ふと彼女は一度も個性を見せなかったなと気付いたので出久は尋ねた。
「そう言えば……メリッサの個性って何?」
それがまさに、地雷を踏んだと知らず、メリッサは少し困り顔で言った。
「私、無個性なんだ……」
「あーー」
やらかした。聞いたらいけない話題だった、顔に出すなと出久は自らに言い聞かせた。
「5歳になっても個性が発現しなくてね、お医者様からは珍しいって……あのデヴィット・シールドの子が無個性って、よく揶揄われてたの」
この、人類の8割が『個性』を持つ中の2割『無個性』は、少なからず差別にあるのは事実だ。『異形』よりマシ、などというが『力持たぬ役立たず』の烙印を、イジメで押される事もある。揶揄われた、なんて言うが彼女は恐らく……昔余程の事をされたのではと思ってしまった。
「あ!けどね!パパもそもそも、ヒーローになれなかった人で、ママも個性の有り無しじゃあ無いって言ってくれて……私は、パパの様な科学者としてヒーローをサポートするって勉強してるんだ!」
「……いい、お父さんとお母さんだね?」
飾ってある写真は、全て皆笑顔だ。彼女の父祖デイヴも、母親も、小さな彼女を抱き上げたオールマイトも……彼女の無個性を受け入れて愛を育む様が分かった。
自分も……そうだったなと出久は昔を思い出した。
個性が分かって現れたそれは、あまりに恐ろしくて……親戚から母は『その子を殺せ』『殺さなければ鎖でつなげ』と言われたのを覚えている。母は毅然として、絶縁に振り切った。父、久もそうして自分を守ってくれた事を思い出した。
個性社会で『役立たず』と呼ばれたメリッサ。
個性社会で『化け物』と呼ばれた出久。
ああ……互いに生きにくい世界で、守られてここに居るのかと、何故父の久がメリッサを婚約者にと、戯言でもそうしたのか出久は今になって分かり……。
「ん?どうしたの?あ、きゃっ……」
緑谷出久は……恐らく、人生で初めて……自ら女性を抱きしめた。嫌がって叩かれたら、それで良しと覚悟も決めた上でメリッサを抱きしめたのである。
「……哀れみかしら?」
「無いと言えば嘘になります……けど、それだけでは無いです」
メリッサも……突き放さず手を回して、出久を抱きしめた。互いに多幸感に包まれて、離れたくなくなってしまいそうだ。メリッサはそのまま右の頬を出久の左頬に擦り付け、より密着を強めた。
出久も、メリッサの腰に回した手を背中から後頭部に動かして、顔を離してメリッサを見つめた。
あ、だめだ、多分互いに火がついた。目を閉じた彼女に、自らも目を閉じ、そのまま顔を近づけーー。
テーレレッレッレーー
「あ!?」
「え!?あ!!」
緑谷出久のスマホが鳴り響き、そこには『父さん』の3文字が映っていた。時刻を見れば既に18:30に差し迫っていたので、即座に通話をタップした。
『出久?支度あるからそろそろ戻って来れるか?峰田くんも上鳴くんも準備ができたから……』
「あ!?え!!は、はいい!すぐに合流するであります!!」
『…………』
慌てて返答を返す出久、父である久はその慌てように押し黙って何も言わなかった。
「あの……父さん?」
電波悪いのかな?返答の無い電話先の父から、しばらくして返ってきた言葉はーー。
『……避妊はしろよ?』
その一言に、緑谷出久は初めて、父親に怒りを向けた。
「余計なお世話だよ父さん!してないから!!」
だが、その返答があまりによろしく無かった。今の父親の言葉に対して、その台詞は誤解を生むしか無かった。
『えっ!?だ、ダメだぞ出久!?その、まぁセックスくらいは、今の学生なら節度と正しい知識があるなら燃え上がってもとは思うが、妊娠させたらーー』
「あ、違う!だから、行為には至っては……ああもう!」
これはさっさと向こうへ行って弁明しなければまずいと、出久は電話を切った。そして、我に返ったらしいメリッサも赤面しておずおずもじもじしながら、出久に尋ねた。
「とりあえず……パーティー行こっか?」
「あ、はい……」
誤解を解かねばなるまい、二人はさっさと身だしなみを整える為に、その場で解散した。