【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「全く……物騒な事言って……」
パンパンと手を払って落下したヴィランの姿を確認した緑谷は……後ろを向いた。
「あーー」
メリッサには、見るなと言ったが……彼女は一部始終見てたらしい。見るなと言ったのに……こんな化け物な個性と俯くが、メリッサは言った。
「凄い個性ね、生で見ると」
「……怖いでしょ?」
「ううん、話も聞いてたし大丈夫」
「いや、そこは怖がっておこう?」
前準備ありでも、そこは怖がるべきだと出久はメリッサを心配した。内心怖がるのが当たり前で、逆に普通の対応こそ大丈夫か?となってしまうから。
「行こうかメリッサ、このタワーのシステム、取り戻す!」
「うん!」
二人は走る、最上階へ向かって。自動ドアを抜けて階段を駆け上がれば、最後の砦だとマシンガンを携えたヴィラン達二名がこちらに気付いた。
「来たぞーー」
「させるかぁ!!」
撃たせる前に、奪う!!ウィップガントレットを振るい二丁のマシンガンを巻き取り奪い去りーー即座に距離を詰めて出久は二名の頭部を掴みーーぶっこ抜いた!
「ぎゃあぁああああ!!」
「うぐぁあああああ!?」
断末魔をあげて鮮血が吹き上がり、階段を転げ落ちる亡骸二つ。メリッサはズルズル力なく落ちる亡骸の横を、構わず出久について行った。
「……まるでペッツの容器みたいね」
「その感想を淡々と述べるのはメリッサが初めてだよ……」
出久の持つヴィランの生首脊髄に対して、軽いコメントだけで済ませるメリッサに閉口するしかない出久は、二人のうち片方の脊髄だけを持って、そのまま走った。
「どうするの?それ?」
「脅しに使う、こうなりたくなかったら降参しろって」
「まるでヴィランみたいね?」
「これでもヒーローの卵です!」
それでやめてくれる相手なら万々歳ではあるが、そんな事無かろうなと思いつつ二人の目の前にはついに『200』の数字が現れた!
「メリッサ!制御ルームの場所は!?」
「中央エレベーターの前よ!」
最上階のフロアを駆け抜ける二人、いよいよ制御ルームまで近づくと、人の気配を感じた出久はメリッサに待ったをかけながら壁から強固な円形の、さながら様々な映画にありそうな都市銀行の金庫じみた入り口が開いているのを確認した。
「パパ……!?な、なんでサムおじさんが銃を突きつけて……!?」
そこには、PCを動かすメリッサの父デイヴ、そして離れた場所から銃を突きつける彼が長年連れ添った助手のサムの姿があった。
「あの人って……確か研究室でデイヴさんの後ろに居た……」
「パパの一番の助手よ、でも……何で……」
出久の印象が薄い男サム、1番の助手と聞いて……まさかそんな男が裏切ってヴィランを招き入れたのかと想像する。兎も角やる事は決まったと、出久は物陰から歩き出した。
「博士を助ける、そして話を聞こうか……メリッサはここに……」
だから、メリッサは隠れていた方がいいと留まらせようとしたがメリッサは首を横に振った。
「私も……事情を聞かないといけないから……」
本当に気丈だ、この人は……なら応えるべきだし、必ず守らねばならないなと、出久は彼女を背中に連れて守るように、円形の入り口に入って行った。
「ーーこれで満足か?」
デイヴがPCの操作を終えると、円筒状の空間の壁面にある幾つもの区切りの一つが、電子音と共に開いた。その場所に銃を構えながら歩き、中のジュラルミンケースを取り出したサムは、一度床に置いて金具を外し開いて中を確認した。
「ええ、ありがとうございます、これで我々の発明を世に知らしめる事ができます……」
「何を馬鹿な……」
下卑た笑みを浮かべるサムを見上げながら歯噛みするデイヴ……そのまま銃を構えたまま階段を降りて行くサムに声がかかった。
「サムおじさん……どういう事?」
その声を聞いて、入り口から現れたメリッサと出久に、少し驚いたがすぐその笑みは戻った。
「おやおやメリッサお嬢様……その婚約者まで、よくここまで辿り着けましたね?」
「メリッサ!?何故ここにーー!!」
「サムおじさん……嘘よね、貴方がこの事件を起こしたなんて……」
メリッサからすれば理解もしたくなければ信じたくないと願いを込めた質問だった、それだけ声色に悲しさが聞いて取れた。
つまりデイヴとサムは長年苦楽を共にした研究者同士であり、メリッサからすればサムは優しい父の同僚であったとしか頭にはなかったのだろう、出久もこの会話だけで想像ができてしまう。
「起こしたのは私だよメリッサ……ヴィランを招き入れたのもね?全ては……博士との苦楽の結晶の為……に、ね?」
デイヴはジュラルミンケースを見せて言った、それは真実であると彼女に告げた。
「個性増幅装置……従来の違法薬品による個性増幅ではない、機械的な力により個性の増幅を可能とした装置……しかし各国の圧力によりこの実物と研究データは取り上げられてここに封印されたのです」
「それを取り戻す為に……あんたはこんなーー」
出久が喋った瞬間、サムの拳銃の銃口は即座に出久へ向けられ、乾いた音が鳴り響いた。
「きゃああ!?」
メリッサが悲鳴をあげ、出久の左頬に赤い線がゆっくり刻まれ、タラタラと幕の様に血が流れ始めた。
「少し黙ってくれないか、あの黄色猿の息子め……お前ら黄色猿の親子は、私から何もかも奪っていくのか!?」
唐突に怒りと殺意を向けられた出久だったが、左手の指で熱を感じた頬をなぞり血を流したのを理解して、しっかりサムを見据えた。
「やめろ!彼は関係無い!」
「サムおじさんやめて!イズクは関係無いでしょう!?」
彼は関係無かろう!さながらメリッサからは八つ当たりにしか見えないが、デイヴは実情を知るから故に静止を促した。
「関係無いなどと!全てはキミの父親ヒサシが来なければ、こんな事にはならなかったのだ!!」
「父さんが……?」
「忌々しい……あの男が来てから全てが変わってしまった……!」
自分の父親が何をしたのか……緑谷久は何をやらかしたのか、それを緑谷出久は聞く事となった。
「お前の父親は寄生虫だ……我々に取り入り甘い汁を啜る……研究に加担もしてないくせにあたかもチームの一人を名乗った先に出来上がったのが……あのエルクレスだ!」
『1から作り直すだって!?』
『ああ、頭にはデータがあるんだろ?なら……もう一度作ればいいのさ』
『ま、まぁ確かに全てとまではいかないが……』
その男は、あるヒーロースーツコンペで出会い、話を聞くやデイヴにそう言った。馬鹿げた話だった、隣に居たサムはこの芸術家の絵空事をデイヴは聞き流して当たり前だとサムは思っていた。
余りにもな侮辱行為だ、呆れるくらい。ここに来るまでデイヴや私が、どれだけ費やしたのかと。それを1からやり直すとは馬鹿げて呆れるしかなかった。
『今までスポンサー集めもやってきたらしいね……けど流石に各国から待ったがかかったわけだ……だったら国に守って貰おう、それこそまず……故郷アメリカに専売契約で』
『国の後ろ盾を得るのか……』
『ああ、で……形は変える、あくまで違いますよー、そんな意図はないですよーってカムフラージュのデザインに落とし込む、そこに一枚噛ませて欲しい』
『成る程……デザインを担当させろと?』
『報酬は……まーうん、始まった際に契約しよう』
話半分にしか聞いてない、絵空事だ、決して交わりはしないとサムはこの黄色猿のデザイナーの話をデイヴが本気にするとは思わなかった。
だが……。
『サムやったぞ!政府が資金援助を認めてくれた!!ヒサシが取りまとめてきた!研究を再始動できるぞ!』
その『絵空事』が、本当になり始めて私は唖然とした。増幅装置の研究チームも呼び戻され、新たな形で研究は始まった。
『パワードスーツ?一応小型の装置の型はあるが……わざわざ外付けアーマーを今更?』
『だから言われたんだよ、アンタみたいな天才の、個性増幅装置がいきなり世にポンと出されたら、俺でも待ったかけるよデイヴさん?世界の人間全員がアンタの頭に追いつける奴らばかりじゃあないんだから……』
『む……』
『まずは地盤から固めていく……個性無しでも同等の力が出せるスーツ、いずれはそれをヒーローの個性増幅の強化スーツへゆっくり切り替えていく、レスキューに軍事用、お題目に隠しつつ段階を踏んであんたの理想に近づけるんだ……』
自分とデイヴの築き上げて来た物が、性能こそ同じになろうが作り変えられていく。久はアメリカ政府と交渉し、政府の後ろ盾と隠れ蓑を作り上げて、他国からの干渉を避けた。
アメリカからすれば、デイヴの発明品を独占と聞いたら手のひらを返した。それならばと笑顔を見せる議員達とデイヴが握手する様をサムは拍手こそすれど、穏やかにはなれなかった。
『その落書きは?』
『僕の息子が、小さい頃に描いたヒーロースーツさ……かっこいいだろ?』
『息子が居るのか?』
『ビデオ通話ばかりさ……ヒーロー目指してる』
『それは悲しいな……しかし、いいなこれ……ここからキミがデザインを起こしてみないか?』
『いいのか?』
『チームで一番安く雇ってるんだ、それくらいさせてくれヒサシ』
いつの間にか……私はデイヴの隣から離されていた。研究チームも、全く数式やシステム開発も知らない芸術家に、ただ一枚の落書きをソフトでデザインしたアーマーと彼に夢中になった。
『完成だ……』
『対災害救急スーツエルクレス……はは、息子の落書きが本物になっちゃったよ』
『ありがとうヒサシ、キミのおかげだ』
『おいおい、俺はデザイナーでガワ描いただけ、全部アンタら研究者がやったのさ。それより……ここからだろ?アンタの作りたい物は、ここからさらに発展させて、理想形にするならまだ始まりでしかないぞ』
『ああ、それでなんだが……ここで専属デザイナーにヒサシを招きたいのだが』
『それ本気で言ってる?』
『胸を張ってくれ、アメリカNo.1ヒーローのスーツのデザイナーだろ?キミは?』
『わかった、なら契約完了だ、よろしくたのむデイヴ』
『ああヒサシ、これからもよろしく頼むよ』
私とデイヴが作り上げた増幅装置は……無骨な鎧に姿を変えてしまった。
ーーー
「我々が作り上げた物はこの金庫に封印され、その代わりあのパビリオンに飾られたのはあの時代遅れも甚だしいアーマーだよ……分かるまい!科学者にとって作り上げた我が子を否定され取って代わられた気持ちなぞ!」
サムにとってジュラルミンの中の増幅装置は、デイヴとの歩んできた証だ。それを国家の圧力により凍結から回収され、全て水の泡にされた気持ちは計り知れない。
「それが他の科学者によっての提案ならまだ納得できた!だがどうだ!?システム開発の基礎も知らないキャンパスに向かうだけの芸術家気取りが、何もかもかっさらって私の代わりにデイヴの横に立って開発者面をしているこの気持ちがお前に分かるのか!?」
それが、出久の父親である久が介入して新たな形で研究を再開できて、そして『エルクレス』が完成したのだと言う。デイヴからすれば……例え同じ機能を持つガジェットを作り上げたとしても……理想とした形を乗っ取られた事に憤りを感じたと言う事だ。
しかも……それが同じ科学者ではない何も知らぬ芸術家、デザイナーが全て取り持ちスムーズに事が運んだ事も気に入らないと。
それらを聞いた緑谷出久は、右手に持った先程ぶっこ抜いたヴィランの生首つき脊髄を振りかぶりーー。
「ただの……逆恨みじゃあないか!お前ェェぇええーーーー!!」
そして思いっきりサムに向けてぶん投げ、生首脊髄は見事サムの顔面に命中した。