【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
部屋で1人、緑谷出久は体育座りでベッドに座っていた。ズル休みだった、ヴィラン襲撃事件から振替休日があり、さらにその翌日も休んでいたのだ。
机の上には『退学届』と刻まれた白い封筒が置いてあった。
明日……これを提出しようと決めた。皆の前で、あれだけのことをやらかした。相澤先生、オールマイト先生との約束も破った以上……ヒーローになる資格は僕には無いから。
今何時だろうか、朝ごはんも食べてない、トレーニングも今日はしてない、このまま死んでもいいかもしれないなと考えながら、そのまま布団に蹲る。
そして……ダメだなと感じた。明日に明日に伸ばしそうだ、今日渡しに行こう、そうしようと、緑谷は雄英の制服に着替えた。
これが……最後に袖を通す事になるから、きちっと着ていこう。
いつもは、ランニングがてらに歩いて登校するが、電車を使って雄英に向かう。電車通学なんて初めてだなと、移ろう景色を見ていれば駅に着いた。
今何時限目だろうか、数学の教科書を確認して……辞めるから必要なかろうに入れている事にため息を吐いた。
上鳴達と行ったカラオケを通りかかった……帰りたくなって来た。いや帰るなと、いやでも足を動かす。厳重な正門とガラス張りの校舎が見えて来た。
さぁ、終わらせよう……今日でヒーローの夢をさっぱり諦めようと、校舎の中に入り、職員室に向かおうとして。
「重役出勤だな、緑谷」
「えーーあーー相澤先生……怪我はーー」
「俺のことは気にするな、お前も戦って疲れて寝坊したか?」
担任の相澤先生に会ってしまった、痛々しい程に包帯ぐるぐる巻きで、まだ全快なんて程遠いのに、歩いて教職についている。ヒーロー魂というやつなのだろうか。
「先生……あの、僕……」
「悪の個性を宿しながらーー」
「へーー」
「正義を成す男か、かっこいい口上だな……温めてたか?」
「えっと……」
「こう考えてたんだろ、自分はどうなってもいいから、それでも皆を助けたいんだと……例え……敵を殺して殺人者になっても……」
「…………」
「献身や自己犠牲も行きすぎると、壊れるのはお前だ……お前は壊れかけてたのに……もっと仲間を頼れ、お前の仲間は……やわじゃ無い」
そうだけ伝えて、職員室に入って行った。退学届を渡しそびれてしまった、まぁ、皆に別れの挨拶をしてからでもいいかもしれない。
1-Aに向かう、扉の前に立って、開けようか迷う。開けなければならない、でも怖い。開けた先の自分を見る目が……恐怖や嘲り、憎しみの目に染まったクラスメイトが居たらと足が竦んでいると。
「邪魔だクソヴィラン!さっさと入れや!!」
「あだぁあ!?」
背中を蹴り込まれ、引き戸を薙ぎ倒して無理矢理教室に叩き込まれた。
「あ!?」
「来た、緑谷くん!!」
その倒れた体を踏みつけながら、爆豪は自分の席に座り舌打ちをした。そして緑谷ははっとして立とうとした。
「緑谷くん、やっぱり怪我してたの?遅れて来たから心配したよ」
「よっ!1-A最強がご帰還だ!やっぱりヴィランとの戦いは疲れたか?」
「おはよう緑谷くん、遅刻は感心しないぞ、寝坊したのかね?」
どうして……皆普通に接している。
どうして……一昨日の景色が無かったみたいに言える。
緑谷は歯を食いしばり、そして叫んだ。
「どうして!!僕は、僕はあんな風に!暴力を振り翳して!!人を殺して傷つけたのに……怖いだろうが!!気持ち悪いだろうが!!こんな個性の奴!!」
全てを吐き出した、あれだけの所業をやらかして何故普通に接してくれるのだと。こんなどうしようも無い奴、さっさと排斥するのが普通だろうと。
「緑谷くん……今まで、辛かったよね」
手を伸ばして、頬に触れたのは、麗日お茶子だった。
「個性のいじめってつらいし、思いがけない力で友達や他人を傷つける事もあるよね、私の個性も……色々しないと大変だから分かる」
個性のいじめ、偏見、差別の痛みは知っている。それが人を殺す個性ならなおさらだと、その痛みの辛さを知っていると麗日は諭した。
「貴方の悲壮な覚悟で、個性を使って皆にバレるのが嫌で、それでも私や峰田ちゃん、先生を助ける為にと、それでも体も血に染めて戦った貴方を……私は決して貶めない、そして気づいてあげれなくて、笑ってごめんなさい」
バスで笑ってしまった自分を、痛みを冗談だと言ってしまった事を許して欲しい。自らも同じ目線まで腰を下げて蛙吹は謝罪した。
「個性で事故って人殺すって偶に聞くけどさ、生まれた時から人殺し言われたらそら荒れるしキチーよな……笑っちまってごめん」
「分かり合える人も、理解してくれる人も居なくて辛かったでしょうに……」
「キミはそれを抱えてなお、正しくあろうとして抗って来たんだな、わかってやれなくてすまない」
その言葉を、どれだけ欲しかったか。誰もが後ろ指を刺した、嘲った、恐怖した。それでも必死に正しくあろうとして、諦めかけていた。だけど諦められなくて……必死に立ち上がったけど疲れて、でも立ち上がって。
誰かの優しい言葉が欲しくて、ほしくて!
緑谷出久は泣いた、今まで見せていた涙を流すだけではない、子供のように鳴き声をあげて泣いた。理解者も、仲間も居なくて、孤独であろうと突き進むしかないと思っていた。
けれど違った、こんなに暖かい、こんな自分でも受け入れてくれる人が、こんなにも居たんだとひたすらに泣いた。
そして、ようやく泣き止んだ緑谷出久は……カバンから退学届を取り出して、それを皆の前で破り捨てた。
「ごめんみんな……僕、なるから……立派なヒーローに……」
「うん、なろう、一緒に頑張ろう緑谷くん」
「なれるって!出久ならさ!なんせ、最強の個性持ちだからな!」
「待った、まだ最強は決まってない、雄英体育祭がまだあるからな」
退学まで考えていた仲間が戻って来た事に、その決意表明に皆が歓喜した。しかしーー。
「けっ、御涙頂戴ってか?馬鹿馬鹿しい……よかったなぁクソヴィラン、傷の舐め合いできる友達ができてよぉ」
「爆豪くん!全くキミは……」
ああ、キミだけは変わらない。だからこそ嬉しくもある、緑谷は皆を掻き分けて、ゆっくりと彼に近づいていく。
「勘違いすんじゃあねぇぞクソヴィラン、このクラス最強は、このーー」
「かっちゃん」
そして、彼の頭に右手が置かれた。言葉が止まった。
「久々に……行っとこうか?」
「いや、あの緑谷さん?僕らもう高校生ですから、そんな事で人を脅しあげるのはいけない事だとーー」
「ちょっと、地獄の閻魔様に裁判受けてこい」
皮膚が裂ける、筋繊維が引きちぎれる、血が溢れ出しやがてーー断末魔と恐怖の叫びが、雄英高校に響き渡った。
僕の脊髄ぶっこぬきアカデミア
第一期 完