【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
デヴィット・シールドは、混濁の意識の中投げ出され、その最中で見た。かつて、共にアメリカの摩天楼を駆け巡り、空を飛びヴィランを打ち倒す平和の象徴たるオールマイトの若き姿を。
手をかかげて笑うその様が、かつての過去が呼び起こした幻影だと理解し、一度瞬きをしてデイヴは本来の姿を見る。
ああ、いい笑顔だ、彼の昔の笑みが浮かんでしまう。しかして体は血に塗れ、かかげた腕の先で掴み上げているヴィランの頭部と、揺れる脊髄……そして叫ぶ雄叫びを聞いてデイヴは思った。
「フェェイタァアアアアリティイイイイイイイーーーーー!!」
嗚呼、オールマイト、我が親友よ……。
彼を後継者にするのは、やはり一度考え直した方がいいと思う。
「やったのか……」
落下していく瓦礫を眺めながら飯田が言う、麗日達もその瓦礫が落ちゆく様を眺めて、峰田は言った。
「やったんだ……ヴィランをやっつけたんだぁああ!」
歓喜の声を上げる峰田、それを聞いて麗日も、八百万も切島も声を上げた。轟もようやく終わったと笑って横にいた爆豪を見れば、彼も笑っていたが即座に見られたと気づくや舌打ちして顔を背けた。
本当に全て終わった、ヴィランをやっつけてもう何も心配する事は無いと、メリッサは瓦礫の山に駆け上った。
「ぶはぁあ!お、重たい!」
瓦礫から這い出た出久は、傍につかんでいたウォルフラムの脊髄付き生首を投げ捨てて、一息吐いた。纏っていたエルクレスは砕け散り、ついでに父親の仕立てた正装も破れて上半身裸になって、そのまま立ち上がる。
「イズク!」
その背後から、声をかけられて振り返れば危なかろう素足のまま、メリッサが瓦礫の山を駆け上ってきたのだった。
「メリッサさーー」
呼びかけようとした瞬間には、その身体が飛び跳ねて来たので思わず迎える様に出久はメリッサを抱きしめていた。そしてあまりにも勢いが強かったので、そのまま押し倒されてしまう。
「よかった!本当に無事でーー!」
「め、メリッサさん?あのーー」
吊り橋効果か?この場合どう言えばいいのだろう、涙ぐむメリッサがそのままもう身体を重ねて逃がさない様に押さえつけるや、目を閉じて……そのまま出久の唇に自らの唇を重ねた。
「んぅううーー!?」
「んふぅうう、んぅうう」
アメリカンガールの熱烈キスに出久は目を見開き、ひたすら蹂躙された。それはもうたっぷり舌が入って息継ぎをしながら1分は貪られた果て、ようやくメリッサは唇を離し、そのまま胸板に顔を埋めた。
「心配した!死んだかと思って……無茶しすぎよ!」
「あ、えっと……あの、はい……大丈夫ですよ、デイヴと父さんの鎧がありましたから」
砕け散ってしまった、エルクレスアーマーが、お互いの父親が作り出した鎧が自分を守ってくれたからと出久は起き上がりながら、メリッサに笑いかけた。メリッサは感極まって離れてくれずにすんすん泣いていた。
「ああでも……ごめんなさい、ウィップガントレット……無くしてしまって」
「いいってば……また作るから……」
無くしてしまったウィップガントレットも、また作るからと嗚咽を混じらせながら言うメリッサに、出久は髪を撫でて抱き寄せた。まぁ、これくらいは……してもいいだろう、女の子をあやす為にはと、出久はしばらく彼女の体温で癒されたのだった。
ウォルフラムの首無し遺体は、瓦礫の鉄骨へモズの早贄の様に引っ掛かっていた。その瓦礫の下で、デイヴはその一つに背中を預けていた。
「デイヴ、デイヴ……」
呼びかけに目を開けたデイヴは、目の前の親友に声をかけた。
「オール……マイト……」
「助けに来たぞ……」
既に、鋼の肉体が萎みかけて頭から血も流している。活動限界が近いのか、蒸気が身体から湧き出していた。それでも笑みを崩さず、オールマイトはデイヴの撃たれた肩を止血しにかかった。
「やはり……衰えていましたか、オールマイト」
その二人の背後で、見てしまったと男が呟いた。オールマイトが振り返ると、そこには緑谷久が居た、彼も色々あったらしい、正装はぼろぼろだった。
「久さん……その……」
「守秘義務、分かってますオールマイト、大丈夫かデイヴ?」
「あ、ああ……」
左手に酒瓶を携えた久は、右手人差し指を立てて、しーーっとジェスチャーを二人に見せてから、二人の傍に座り、酒瓶を見せた。
「消毒薬はこれしか無いんだが」
「馬鹿お前、なるかそんなの……」
「気は楽になるぞ?」
そんな物が消毒薬になるかよとデイヴが軽口を叩いたのを聞いて、久は酒瓶を傾けドプドプと飲み下し、口元を拭いデイヴに尋ねた。
「サムが……この発端だって?」
「ああ……キミを逆恨みしていた」
オールマイトもここで、ようやく此度の騒動はデイヴの側近たるサムが起こしたのだと知った。
「だが……彼の言う事も今になって理解してしまう、私は舞い上がっていた……研究の再開に、うまくいく話、エルクレスの完成……サムと作り上げた装置を、歩みを蔑ろにしてしまったのは私だ」
今を思い返せば、サムとの研究により出来上がった装置……それを取り上げられてから、久と出会っての再出発。全てが上手くいってしまったから舞い上がって、彼の気持ちに立ち会えてなかったのだろう……。
例え……中身が自分と彼の研究の結晶であったとしても、その形は久が作り変えてしまった。自分はそれでも理想系に近づいていたが、サムからすれば凌辱であったのだと。
「じゃあ、直談判しろって話だよ全く……いい迷惑だ、俺を外せとお前に言わず、ヴィランを呼んだ時点でサムに擁護なんてあるか全く……」
お前は悪くない、悪いのは全部サムだ、こんな事態招くくらいならやるべき事がいくらでもあったろうよと苛立ちながら久は吐き散らす。
「エルクレス、ちゃんと動いたよ、うちの息子が見事に使ってみせた……どうだオールマイト、僕の息子は凄いだろ?」
「彼には驚きっぱなしですよ……本当に」
「ああだが、トシ?後継者は不味くないか、平和の象徴が恐怖の象徴になるのはさ?」
3人とも、先程まで危ない目にあっていながら終われば口々に話し出してしまう。そうしてふと、久が瓦礫の山でメリッサが我が子出久を押し倒して映画のフィナーレ並みにお熱いキスをおっ始めたので、デイヴに目で見てみろと誘導した。オールマイトも気付いて、あらま!と頬を押さえて驚いた。
「その、うちの娘がすまない……責任は取らせるから」
「……ここってヒーロー学校あったかな、出久には尋ねとくか」
「わたし本当に神父役やるかもしれないな、こりゃあ」
朝日が昇りつつある、夜中の騒動が終わりを告げる。長かった戦いの夜は……もう終わったんだ。