【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「……個性熱だねぇ」
「は?個性熱?」
「それって、個性発現時の前後に起こる、あの幼児の?」
額に冷えピタ、枕は氷枕、部屋にてリカバリーガールによる診察を終えた彼女が出した結論はそれだった。
峰田に青山、常闇が、その診断結果を聞いてポカンと呆けた顔を浮かべた。
個性熱とは……。
主に個性が発現する3〜4歳くらいに起こる突然の発熱であり、個性因子の覚醒や発露により免疫が反応する症例である。軽度の個性因子暴走であり、その対処法はーー。
「安静にして休むこったね、それしか無いさ、幸い風邪じゃあないから夕方には熱は引く、病欠を相澤先生には伝えとくよ」
休む、その他なしとリカバリーガールは救急箱を閉じて、お大事にと出ていった。
「大事じゃあなかったけど、個性熱……って」
何故乳幼児の症例が今出てくるんだよと峰田は閉口した。
「兎も角同胞が大病を患ったとかでなく安心した……さて、俺たちは学校に行こう、安静にな?」
「うん……」
「いってらっしゃい、二人とも」
常闇と峰田が退出し、緑谷と青山が残った……青山まで手を振り見送る様子に、緑谷はいやちょっと待ったと見上げる。
「青山くん、キミも行かないと」
何故ここに残る、キミも行けよと緑谷に、青山はにっこり笑ってウィンクして言った。
「看病役が必要だろ?なぁに心配しないで、僕がつきっきりで居てあげるからさ?」
「いや学校行きなよ、サボったらダメじゃん」
わざわざそんな事しなくても、怠さもないから一人で構わないし、サボりは駄目だと緑谷は言う。
「サボりじゃない、友達の看病さ」
と言うわけで、と青山は常闇が置いていったりんごを一つ手に取り、傍の果物ナイフで鮮やかにシュルシュルと皮を剥き始め、りんごを切ってしまった。
「水やスポドリだけじゃあダメだ、何かおなかにいれないとね?」
「ああ……ありがとう……」
これは何言っても動かないかと、緑谷は諦めて青山の切り分けたりんごを齧った。
思えば、彼とはあまり話さなかったなともう冬の近づく秋の終わりに差し掛かる中、青山優雅についてひととなりを緑谷は知らなかったと思い返す。
青山優雅……個性『ネビルレーザー』
へその機関から強力なビームを発射する事ができる。ただし……あまりに長い間照射した場合、腹を下してしまう、なんともピーキーな個性のクラスメイト。林間合宿で仮設トイレと外を行き来してげっそりしていたのは記憶に新しい。
ナルシズムに傾向しているが、嫌味ったらしくは無い、いつだって明るく自由人だが……昼食は一人で食べている男。
そんな自由な少年が、友達を看護する口実でサボろうとしているあたり、強かさがあるなと緑谷はりんごを齧りながら思った。
「……どうしてわざわざ看病なんて?」
サボりが理由にしても、建前はあるんじゃあないのかと青山に緑谷は尋ねた。その問いかけに青山は笑って答えた。
「それは……僕とキミが似通ってるからさ」
唐突な理由に、緑谷はポカンとした。僕こんなにナルシストだったか?と思考が彼方に飛ぶ中、青山は語る。
「僕の個性、ネビルレーザーって、あまり長い間使うとお腹壊しちゃうのは知ってるだろ?」
「あ、ああうん、そうだね?」
「キミはほら、今はましになったみたいだけど……林間合宿では使う度に穴という穴から血が出てたじゃないか……僕と同じ体に合ってないような個性で、放って置けなくてね?」
その返答に緑谷は納得した、確かに林間合宿まで自分の個性の反動は、あまりに酷かった。今ではほぼ克服したが、それでも過剰使用した際は鼻血や血涙が流れ出る事もある。
対して自分も、体に合わない故に尊厳破壊と日々戦っているので、今日は放って置けなかったのだと緑谷の寝るベッドの縁に座して述べたのであった。
「ありがとう青山くん……正直、一人は寂しかったからさ」
りんごを食べ終えて皿を返し、緑谷はベッドに寝転び礼を言った。家ならともかく、寮の一室で誰もいない静かな部屋で一人は寂しいと正直に言う緑谷に、青山はクスクス笑った。
「ウィ、ムッシュ、キミ意外と寂しがり屋なんだね?」
「こんな個性でもあったからさ……雄英入るまではかっちゃんと両親以外からは敵視されてたから……」
「いじめられてたのかい?」
「最初は……それから、やり返して……かっちゃん以外は僕に歯向かわなくなった……友達なんてできなかったよ」
自業自得な話だが、と緑谷は自身の身の上を少しだけ語った。
「個性があったらあったで、いじめられる事もあるんだね……無い方が良かったのかな……」
青山は苦笑しながら、無個性差別や個性差別からのいじめの話に、どっちがましなのやらとため息を吐いた。
「どっちも……違う苦しみと喜びがある……生まれて持ってきた事には、向き合わないといけないんだ……けど、僕は運が良かった側だからさ」
どちらがいいなどない、生まれてもって来た事には、その人生で向き合わねばならない。体育祭で轟に言ったことを、自らに言い聞かせながら呟く緑谷だったが、それでも自分は幸運だからこんな事が宣えるのかもしれないと省みた。
「運が……」
「父さんと母さん……普通、僕を鎖に繋いだり、捨ててもおかしくないだろ?こんな個性……愛してくれない親とかさ……そこに生まれてたら向き合う以前の話でしょ?」
それを聞いた青山は、何かを考える様にしばらく黙った。もしかして、気に触ることを言ってしまったかと緑谷は黙る青山に少し焦ったものの、彼は口を開いた。
「親孝行、しないとね……お互い」
「え?あ、うん……そうだね」
「もし何かあったら呼んでおくれ、僕は自室に居るからさ?」
一応病人、風邪ではないがずっと居るのも違うと青山は思ったか、笑顔で何かあれば呼べと言って部屋を退出した。
親孝行か……緑谷は天井を見ながら、今の今まで色々迷惑かけて来たなと思い返し、熱の倦怠感をスポドリで癒しながらまた眠りについた。