【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「生地が足りない!!」
手直し中の緑谷が、手直しにデザインを高める為に色々と凝った結果の叫びが1-Aアライアンスに響いたのは金曜日だった。この日は文化祭準備で午前授業、ヒーロー科も訓練は無しという破格の時間だった。
上鳴も耳郎の指導で遂に合流した、その経過日数一週間!緑谷も八百万の創造からの手直しとは言え、ハイスピードでダンス組の衣装が出来上がり、あとは拘りながらサイズを合わせて行く作業となる。
が!拘るとやはり色々したくなるデザイナーの息子の性よ!用意していた生地では足りなくなってしまった結果ーー。
「飯田くん経費でいける?」
「衣装は八百万くんの創造!楽器は耳郎さんの物を使っているから、むしろ経費は余ってるぞ!演出も個性の自前が多いからな!」
経理担当飯田天哉に申告した緑谷は、衣装の生地の買い出しへ行く事を決めた。外出許可も取らねばと早足に玄関へ向かう緑谷だったが……。
「あ、じゃあジュースとか買って来てくれないか!金は出すからよ!」
「ピックも少ないな、スペアの弦も買っとこうか……緑谷お願いできない?」
「お菓子!」
買い出しに行くなら色々頼みたくなる物である。こりゃ1人じゃ無理かもしれないと、スマホのメモを打つ緑谷に麗日が声を上げた。
「荷物多くなりそうやな、私も行くよ出久くん」
「ありがとう、助かるよ麗日さん」
一人では酷な量になりそうだからと、麗日が手伝うと自然に買い出しメンバーに加わった。
「私も参りますわ、紅茶を切らしてましたし合うお菓子も選んで来ますね」
八百万も、紅茶を切らしていたからと、それに合う菓子も選びたいと加わった。
自然に、そう自然にである……まぁ買い出しだから別段気にしない。クラスの面々も普通に買い出しだな程度にしか思っていなかった。
……が、この二人は違った。
『これ……デート扱いとか駄目か、買い出しデートでええよな……』
『緑谷さんと買い出しデート!麗日さんも一緒にですわ!』
麗日お茶子、八百万百……これを好機と見た買い出しへの手伝いであった。
麗日お茶子と八百万百は、二人とも……緑谷出久へ恋慕を抱いている。麗日は入試の時に身を挺して助けて貰った事からそれを抱いた。
対して、八百万百は緑谷の子どもらしさや情緒の幼さをくすぐられ、揶揄うのが楽しくなるも、その正反対な時折見せる大人じみたギャップに性癖を破壊された。
方向は違えど二人は同じ男を好きになった、なら二人は恋のライバル……とはならなかった、何故なら……。
『二人とも娶ってもらおう』
と言う、八百万の斜め上の案の下、二人は同盟を組んでいたのだ。因みに正妻麗日、愛人八百万でと八百万は了承している。
ちなみに……I・アイランドに在住の緑谷の婚約者メリッサ・シールドも同盟入りしていた。彼女はそれこそ親が決めた婚約者だったが、I・アイランドの事件で既に緑谷へ好意を打ち明けているのを二人は知らない。
緑谷出久、恋多き男である。そんな二人の好意を緑谷は……悩ましくも感じてはいるが、自意識過剰だろうと断じていた。
今回は、そんな3人の買い出しで行動を共にした数時間の話である。
「先に自宅へ寄りたいんだけど、いいかな二人とも」
雄英からの最寄駅に着いた緑谷達3人、まず自宅へ一度寄りたいと言い出したのは緑谷であった。
「どうしたん、もしかして緑谷くんのお母さんが何かあったの?」
それは何故、何かあるのかと尋ねる麗日だったが、八百万は分かった。
「ご自身のギターを取りにですか?」
「うん、耳郎さんに言われてるからさ……そこから楽器店寄って、スーパーでお菓子を買おう」
ああ、耳郎ちゃんに言われとったなと麗日は思い出す。たしかめちゃ高いギターだとか、自分の家の経済状況ではあり得ない代物だったと。
「麗日さんも、それでいい?」
「ええよ、じゃあ行こうか」
電車の切符を買い、3人は緑谷……そして爆豪の実家のある折寺に向かった。電車からの景色を眺めながら、緑谷は徒歩圏内の家に帰るはずなのに郷愁に駆られていた。
「連絡取ってるけど、まるで年単位離れた様な感覚がしてならない……」
「なんか分かるわぁ、うち実家三重やから寮入る前にアパート借りとって、長く両親から離れた感じするもん」
麗日も、それ分かると同意した。彼女は寮に入る前はアパートを借りて雄英に通っていたから親元を離れた生活が長い、緑谷の感じるホームシックじみた郷愁も理解出来ると頷いた。
「私はあまり感じないですわ、家にすぐ戻れるのも連絡も取ってるからでしょうか?」
「いい事だよ、連絡しないよりさ」
「両親からしたら、目の届くところに居るのは安心感あるよね」
八百万はその感覚が無くて、仲間はずれされたみたいにしゅんとしたが、むしろ親との連絡が取れて、目の届く所に居るのはいい事だと緑谷と麗日はフォローした。
やがて電車が、折寺駅到着をアナウンスし、3人は降りた。二人は初めて降りる、というかあまり馴染みのない地域である。
「折寺は開発区と旧地区と分かれた町でね、開発区は新しい街並み、旧地区には昔の街並みと廃墟でくっきり分かれてる……今活躍しているヒーローのシンリンカムイさんや、マウントレディさん、デステゴロさんがこの辺りでヒーロー活動してるんだ」
それとなく緑谷が案内しながら駅を出て、麗日と八百万は緑谷、そして爆豪の地元を歩いた。
「……なんだろう、雰囲気が重たいな」
開発区の煌びやかな町は、これからもさらに発展して未来都市になるのだろう様相が見える一方で、ふと麗日はどんよりと重苦しい雰囲気を醸し出しているのを感じ取った。
「緑谷さん、彼方に見えるのは?まるで被災地の様に打ち捨てられてるようですが……」
八百万も、ふと目に入った見た事無い景色にあれはと指を差す。彼方に見える、なにやら被災したまま手付かずの廃墟が見えると、お嬢様育ちな彼女には目新しいのだろう。
「旧工場区域だね、開発区構想の余波で倒産したり稼働を止めた工場やらの廃墟……ホームレスや不良が屯してるんだ」
「そんな事が……」
開発の影に隠れた被害者の廃墟だと、社会の縮図を垣間見た八百万、麗日もヒーローを目指すとはいえ少し怖いなと顔が曇った。
「ちなみに、僕やかっちゃんの通っていた折寺中学校はあの旧地区にあって、それはもう酷く荒れた不良の巣窟だったりする」
「「え!?」」
そんな緑谷から、かつて爆豪と旧地区の中学校に通っていたのと、そこは不良の巣窟だった事が暴露された。
「公立の中学は旧地区の、折寺中学校しかなくて……この辺りの開発区に生まれた子は、絶対そこには行かせないと親が躍起になって私立中学に通わせる為、子に勉強させて、親は学費の為必死に働く……だからこの辺りって、親同士もピリピリしてるんだ、うちとかっちゃんの親が仲良いのは稀も稀なんだよね」
明るい開発区の煌びやかに隠れた、なんとも重たい社会縮図の街、それが緑谷と爆豪の地元、折寺だった。
そんな折寺観光案内をしながら、3人は緑谷の実家に向かったのだった。