【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
B組と別れた緑谷は引き続き通形と共にエリちゃんの案内を続けた。次に訪れたのはーー。
「あーー!エリちゃんだよね!元気!?ねぇねぇ、どうしてエリちゃんが居るの?何で、何で?」
備品室、ここではミスコンの為に衣装合わせで波動ねじれと、そのクラスメイトが使っていた。彼女は一度、お見舞いでエリちゃんと会ったらしい。扇状的な衣裳を纏ったねじれに、エリちゃんは見惚れていたのか、口を開けて羨望の眼差しを向けていた。
「ねじれさんは去年準グランプリ!今年はグランプリ取りに行く気満々なんだよね!」
「ねじれさんで準グランプリって……去年誰が優勝したんですか?」
この人が準優勝って、一位は誰だったんだと緑谷も驚いた。
「そう、聞いて?聞いてる?毎年ね、勝てないんだよ!凄い子がいるの!ミスコンの覇者、3年G組サポート科の絢爛崎美々美さん!一年から2年連続でグランプリなんだぁ」
「な、名前からして圧が凄い!」
名前がもう凄まじい圧を有している!すごい人が居るなと緑谷は2年連続覇者が3年連続取りに行くのか、はたまたそれをねじれが防いで有終の美を飾るのか、熱戦がミスコンで繰り広げられているなと舞台裏の攻防を垣間見た。
「今年のミスコンには……CM出演で隠れファンが急増しつつある拳藤さんも出る……」
ミスコンの手伝いをしていたらしい、BIG3の一人、天喰環が緑谷達の元に歩いてきた。そう言えば、ウワバミのCMで八百万さんと一緒に出演していたなと緑谷は思い出した。
「波動さんも気合が入ってる……大衆の面前でパフォーマンスなんて……考えただけで……いたたたた……」
「あ、相変わらずですね、天喰先輩……」
自分が出るわけでもなし、想像しただけで腹痛になる天喰に緑谷は苦笑した。
「だから、可愛いで行って昨年負けたんじゃない?ねじれはセクシーだって」
「しかしこれ以上は倫理的に……」
「うん?」
天喰先輩が腹痛に苦しむ中、先輩達が衣裳を前に四苦八苦していたので、緑谷はそちらが気になり目を向けると、ちょうど目があってしまった。
「なら外部の意見も聞いてみましょう?そこの一年生、今着ている衣裳とこっちの可愛い系……ねじれはどちらが合うと思う?」
客観は大事だが唐突だなと思いつつ……緑谷は率直な意見を先輩方に提示した。
「強いていうなら僕はレオタード系が好きですね、いい感じに鼠蹊部がーー」
「癖を押し付けるのはやめようね出久!エリちゃん居るから!」
あ、いかん、6徹のテンションを出してしまったと緑谷は頭を左右に振って精神を引き戻す。緑谷出久……彼はレオタード好きの鼠蹊部フェチであった。
その後は、サポート科に案内したのだが、発目さんがまた爆破し掛けたので退避し、一通りの案内を出久と通形は終えて食堂で休憩する事にした。
普段なら砂糖ミルクガムシロありのコーヒーを嗜む緑谷は、眠気を覚ますために慣れないブラックを普通に飲めてしまっており、エリちゃんはリンゴジュースを飲んで休憩していた。
「まー、こんなもんだね」
「どうかな……エリちゃん」
こうして、慣れるために案内をしてみたがさていかほどにと、二人はエリに尋ねた。
「よく、分かんない」
そうか、まぁ慣れ云々の前に全てが初めての社会から隔絶された虐待児だったのだ、あまりいい反応がいきなり来るのは難しいかと緑谷と通形は苦笑しながら互いを見た。
「けど……たくさん、いろんな人が頑張ってるから、どんなふうになるのかなって……」
と思っていたら……エリちゃんがそんな事を言い出したので二人の苦笑なぞ、笑顔に切り替わってしまった。
「それを人は、ワクワクさんって言うのさ」
その感情の正体はずばり、と話に入ってきたのは……雄英高校の校長先生、根津校長であった。根津校長は昼食だったらしい、チーズをガツガツ貪っており、その横では……。
「あ、ミッドナイト先生……」
「息災みたいね緑谷くん、聞いたわよ?インターンで凄い活躍したって」
ミッドナイト先生も昼食だったらしい、カレーライスを食べていた。微笑む彼女に緑谷は……やはりあの日を思い出して赤くなる顔を隠すように立ち上がって会釈した。
「有意義だったようだねぇ……うん、文化祭、私もワクワクするのさ!」
チーズを平らげてハンカチで口を拭いて、根津校長は言った。
「多くの生徒が最高の催しになるように、励み、楽しみ、楽しませようとしてるからね」
「警察からも……色々ありましたからね……」
「ちょっと香山くん?」
この賑やかな雰囲気こそ文化祭、自分もワクワクしてならないと根津校長に対して、ミッドナイトは少しばかり懸念が言葉に出てしまった。
「じゃ、君たち存分に楽しんでくれたまえ?」
食べ終えた根津校長が、緑谷と通形、エリにそう一言告げて立ち去った。それを見送った直後、ミッドナイトもカレーを食べ終えてから緑谷達に話を始めた。
「……詳しくは言えないけど、校長、頑張ったみたいよ?」
「やっぱり……文化祭自粛を上から?」
ミッドナイトの呟き、そして今の語りで緑谷も察した。相次ぐヴィラン襲撃の醜態で、文化祭を開くというのを快く思わない人も居る。オールマイト引退からヴィランの動きが著しく活発化する情勢下、生徒の安全を幾度も破られた雄英が文化祭をすれば、また襲撃の格好の標的となるのは見て取れるから。
「そう、その結果セキュリティの更なる強化、そして……万が一警報が鳴った場合、それが誤報だろうと即座の中止と避難が開催条件になったの……」
「厳しい……」
そして提示された条件下で、根津校長は文化祭開催をもぎ取ったのだ。緑谷の悲哀を感じる呟きに、ミッドナイトは優しく、安心してと言い聞かせるように話は続いた。
「勿論、そうならない為に警備はしっかりするわ、学校近辺にハウンドドッグを放つし」
「放つって……」
ハウンドドッグ……雄英高校教師陣の一人で、生徒指導の教師である。個性は『犬』である。というか、容姿が半人半犬の異形個性のヒーローだ。放つは少し言葉の使い方がよろしく無いようなと苦笑いする緑谷に、ミッドナイトは言う。
「そうそう!A組の出し物、職員室でも話題になってたわよ?青春、頑張ってね!」
「は、はい!」
職員室で話題に、それだけ期待されてるのかと緑谷はミッドナイトからのエールに元気よく返事をした。
「イズクさんは何をするの?」
そんなA組の出し物は何か?気になったらしいエリちゃんに緑谷は答えた。
「僕たちは歌とダンス、歌って踊って演奏するんだ、是非見に来てほしい」
今できる精一杯の笑顔で、エリにそう言った緑谷は、食堂内の時計を見てそろそろ戻って練習に行かなければならないなと、二人に戻る事を伝えた。
「すいません、そろそろ休憩終わるのでここらで……」
「ああ!言っとくけど俺も楽しみにしてっからね?」
通形も楽しみにしていると緑谷にエールを送り、緑谷は二人と別れ練習へ戻るのであった。