【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
『思えば……彼と出会ったから私は踏みとどまれたのかもしれないね、だからこそここでこうして、ラブラバと真っ当な仕事ができているのかもしれない』
GeL.incの代表取締役、飛田弾柔郎……彼は過去、迷惑系動画投稿者『ジェントル・クリミナル』としてヴィラン活動を行っていたが、ある出会いを経て反省して更生し、数年で会社を立ち上げ『ある事件』で伝説を築き上げて更なる躍進と共に大企業の社長にまで上り詰めた男であった。
『当時……ヴィランの端くれだった私も知っていた、イズクという雄英の学生……彼はまだヒーローですら無いというに、ヴィラン界隈では知らない者は居なかったよ、あの頃からもう言われていたね、エンデヴァーより恐ろしいヒーローが居る……そんな彼に私は捕まって、紅茶を共にする事となったんだ』
当時の彼との遭遇、そしてその出会いが自分を踏みとどまらせてくれたと、記者へ彼は語る。つまりは……余程酷い目に遭わされたのかと質問され、飛田は大笑いした。
『いやいや!まぁ生きるか死ぬかの瀬戸際だった!けど……彼は私やラブラバの身の上話を真摯に聞いてくれてね……自首を薦めてくれたんだ、彼はそれこそヴィラン退治には苛烈だが……まだ私やラブラバに間に合うからと、踏みとどまってほしいと言ってくれたんだよ……』
記者は驚いた、何せ彼が……イーヴル・ヒーローイズクが、ヴィランに対して親身に話を聞くなんて手段を取り更生までさせるなんて事を行うなど初めて聞いたからだ。それこそ、今の彼の決め台詞と言えば……。
『選べ、悪事をやめるか……この場で僕に脊髄ぶっこ抜かれるか!どうする!』
これである。それを断ったヴィラン達の末路は記者もよく知っている、彼に捕まったヴィランは刑務所より精神病院に行く方が多いなんて言われてるくらいだから。
『聞けば彼も、オールマイトに更生を諭されなかったらヴィランになっていたと言っていた、それで……次は自分が、手を差し伸べるべきだと感じたらしい……悪ですら救う、のが彼のヒーロー活動の理想なのかもしれないね……まぁなかなかできないと彼もそのあたりはため息を吐いていたよ……』
イーヴル・ヒーロー『イズク』列伝、インタビュー集より抜粋。
文化祭準備は続く、いよいよスパートがかかり、通しの練習だったりタイムテーブル確認等多忙になる中、緑谷は教室で芦戸に肩を叩かれてこう言われた。
「緑谷……演出隊もやってほしいんだけど……」
「いいよ」
「即答!?いや、訳くらい聞いてくれてもいいんだよ!?」
理由も聞かず頷くのは人が良すぎないか!?芦戸は理由聞いてからでもいいし、兼任だから多忙な為断られると思っていた為心配から待ったをかけた。
「まぁ確かに……どうして?」
「それは、僕が一曲目序盤からミラーボールになる演出で頼みたい事があるからさ」
そこからは僕が話そう、芦戸の後ろから青山優雅が顎に手を当てキメ顔で現れ理由を語り出した。
「演出隊の瀬呂くんから、僕の人間ミラーボールは最初こそインパクトで目を引いても数十秒で観客は興味を無くすと言われたんだ」
「そこで……緑谷の個性で引っ張って宙に浮かせ、上下左右縦横無尽に動かす移動型ミラーボールを作ろうってわけ!」
移動型ミラーボール……想像して成る程それなら更に観客の目を引けるかもと納得した緑谷だが、ふと疑問に思って二人に尋ねた。
「だったら瀬呂くんや演出隊に、青山くんをワイヤーやらセロハンで繋いで吊るしたらできるんじゃない?」
そもそもワイヤー使うなり、瀬呂くんの個性の出番ではなかろうか?という率直な疑問に、芦戸は首を横に振った。
「それも考えたけど……緑谷の引っ張る個性なら、まるで青山が空を飛んでいるように見せてインパクトがあると思うんだよ」
それも考えた、確かにできる、しかし……緑谷の個性で引っ張って宙に浮かせれば、擬似的な飛行ができるからそれは更に盛り上がると思って頼んだのだと芦戸が更に理由を重ねて説明し、演出隊の切島が手を合わせて頼み込んできた。
「わりぃ!色々兼任してるし、ダンス練習まで無駄にさせちまうけど……もっといいものにしてーんだ!総大将!」
「いいよ」
「即答!?」
こうして、緑谷は……演出隊も兼任して此度の出し物ほぼ全てのチーム入りを果たす事になってしまったのであった。
しかし……そこでやはり心配になった者が居た。
「けどよぉ、緑谷大丈夫なのか?最近目に隈ができてるし、何より全部のチームしながら衣装も作ってんだろ?」
砂藤がそう尋ねた、これでバンド、ダンス、演奏、裏方……そして衣装作成に他クラスとの調整と現場指揮と多忙も多忙を極めている。唯一やってないのは飯田が兼任している経理くらいだとあまりにやる事が多いと。
「衣装はもうできるし、八百万さんの創造したのを手直しやアレンジするくらいだからそこまでだよ?というか……今は楽しくて楽しくて、疲れを感じないからさ?」
疲労よりやりがいが勝ってるから心配しないでいいと、砂藤ににっこり笑顔を見せる緑谷は大丈夫だと宣った。
それは大丈夫と言えない兆候では?皆が訝しむ最中緑谷は笑顔を崩さないまま、演出隊の詳しい話を聞いていたのであった。
その夜……緑谷は衣装工房に籠りスパートをかけていた。あと一着で完了して、ここからは着心地や誤差を着て貰いながら直していくだけ、ダンス隊全員の衣装がようやく完成するぞと張り切る中、工房の扉がノックされた。
「はい?どうぞ?」
扉が開く、そこに居たのは…….麗日お茶子と八百万百であった麗日はお盆を持ち、ガトーショコラが3枚の皿にそれぞれ載っていて、八百万もティーポットとティーカップを乗せたお盆を携えていた。
「出久くん、今大丈夫かな?」
「紅茶を淹れましたので、砂藤さんのガトーショコラもございますよ?少し休憩なされては?」
夜の練習からすぐに手直しに工房へ入った緑谷に、少し休めと二人は言う。あと少しで完成だが……うん、少し休もうと緑谷は二人の誘いを受けた。
「ありがとう、じゃあご馳走になろうかな」
そうして……二人を招き入れて作業中休むために置いていた座布団とちゃぶ台を用意した。紅茶とケーキには合わないが、それでもこうして缶詰作業で休む時に緑谷は使っていた。
ガトーショコラが置かれ、八百万が紅茶を注ぐ。3杯のカップの内一つが置かれて、緑谷はその芳香が鼻に漂うと、嗅いだ事がないいい匂いが気になった。
「いい香りがする……知らない香りだ」
「ゴールドディップスインペリアル、幻の紅茶ですわ、お母様から差し入れで送られて来ましたの」
素人でも、ああ違うと分かるいい匂いだった。体がやすらぐと言うか、リラックスするなと、緑谷がそのティーカップに口をつけて一口飲み、ほうと息を吐いた。
「美味しい……体の内からなんだか、暖かくなって……」
緑谷は一口飲んだティーカップを置いて、目を擦りだしたが……そのまま横にバタリと倒れるや寝息を立ててしまったのだった。
「まさか紅茶のリラックスだけでバッタリ眠るなんて……余程寝てないみたいですわね」
「砂藤くんから話聞いてよかった……運ぼうか八百万さん」
紅茶に薬は盛っていない、リラックス効果でバッタリ眠るくらい寝てなかったのかと寝息を立てる緑谷を、麗日が手を触れて浮かし体重を無くして緑谷を作業場から運び出した。
今朝の緑谷が演出隊への参加が決まっての事。砂藤が、緑谷の隈を見てからふと気になっていたらしい。個性訓練がてらケーキを作っていた砂藤から聞いた二人が、ついでに紅茶とケーキを差し入れにして工房に来ればここまで疲労が溜まっていたのかと、二人はえっほえっほと緑谷を抱えてエレベーターに向かった。
さぁ、あとは部屋に運んで寝かしつけよう。エレベーターに入った二人は1階のボタンを……押そうとした。
男子側に行くには、一度1階に行かねばならない……しかし、八百万の指は……。
「八百万さん?」
自身の部屋の5階を押したのだった。
「い、一度具合を確かめるべきかと、あれだけで寝てしまったなら余程疲れていると思いますし」
「そ、そうやね、起きた後色々聞いた方がええかもしれんね」
突然寝てしまったなら、状況が理解できないだろう。起きた時に色々聞いたり話せた方がいいと、それで通ってたまるかな提案を八百万は出して、麗日は同意する。
女子側5階、八百万の部屋は最奥、一番手前は蛙吹の部屋…‥やましい事は無いのなら堂々すればよかろうに、二人はゆっくりゆっくり緑谷を運びながら八百万の部屋に向かう。
流石に起きてなかったらしい、難なく二人は八百万の部屋に辿り着き……運んだ緑谷共々中に入るのだった。