【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
文化祭当日……緑谷出久は、早速朝イチで資材搬入として体育館へ赴き、準備を済ませてから外出した。本番までの時間、リラックスして臨む為に調べがついた喫茶店での朝食と紅茶を楽しむ為に赴く。
朝、8:30のことであるーー。
「んー……静かだなぁまだ……」
文化祭たる本日は土曜日、学校も仕事も休みな週末は静かだった。そんな雄英周辺の、ホームセンターの隣にあるこじんまりとした洒落た建物が本日のお目当ての店、ここでの朝食を燃料にして一日頑張ろうと緑谷は小走り気味に歩いた。
すると、入れ替わる様に緑谷は、背の高いマスクにサングラスとコートを羽織った男、そしてその半分以下の身長の少女とすれ違った。こちらも、サングラスにピンクのコートと帽子で、まるで姿を晒さない様にしていた。そこまで寒いだろうか、今日はと考えながら緑谷はすれ違い様に挨拶をした。
「おはようございます」
「ああ、おはよう」
ただすれ違ったので、学生らしく挨拶をしただけ。しかしーー緑谷はその声を聞いて、店に入ろうとした足を止めた。見事な渋みのダンディボイスだった、聞き間違えるわけがないと緑谷は振り返り……その二つの背中を見つめて眉間に皺を寄せた。
「待て」
その一言を聞いた男女は、まるで氷柱に貫かれたかの様に足が止まった。
(ば……馬鹿なぁ!?何故、何故に緑谷出久がここに!?キミもしかして、わざわざ紅茶を飲みに出てきたのか!?ここまで!!そんな趣味があったのか!親近感湧いちゃったよ!)
立ち止まってしまったジェントル・クリミナルは、マスクやサングラスに隠した顔が冷や汗でダラダラになって、あまりのアクシデントに内心ここからどうしたらいいと焦りに焦った。
サングラス越しに、ラブラバもどうしましょうと助けを求める様に見上げて来た。最初から決めていた、出会ったら即座に逃げるとジェントルは決めていた、しかしいざこうして声をかけられただけで足が竦んでしまったのである。
決して殴りかかられたり、怒声を浴びせられた訳ではない、待ての一言、それが自分への疑念や敵意、殺意を明らかに孕んでいたのをジェントルも、ラブラバも感じ取ってしまったのである。
「な、何か……?」
一目散に逃げなければならなかった、しかし恐怖心がジェントルから判断力を奪い去って振り返ってしまった。何してるのジェントル!?逃げるって言ったじゃない!?振り返ってしまったジェントルにラブラバが震えながらコートの裾を掴んだ。
「さっき……そこの喫茶店から出てきましたよね……どうでしたか?今からモーニング食べようかなって思ってて」
モーニングの味の質問、真意は何だ!?どう返したらいい、何を答えたら逃げれるとジェントルは考えて……乾いた口で質問に答えた。
「い……いやぁ、私はモーニングは食べてないんだ、ここの紅茶が絶品でそれを嗜んでいたんだよ?少年には分かるかな?ゴールドティップスインペリアルという幻の紅茶をこの喫茶店では出してるんだ」
兎に角話して、平静を取り戻し煙に撒け、この場から逃げて仕切り直せ、いらないことまで喋ってしまったかとジェントルは心臓を高鳴らせる。
「へぇ……ゴールドティップスインペリアルを?あの幻の紅茶を出してるなんてそれは知らなかったな……」
緑谷の返答に、ジェントルはびっくりした。まさか知ってるのかキミは、紅茶を嗜んでいるのかと仲間を見つけてしまった喜びが出てしまった。
「知ってるのかね!ゴールドティップスインペリアルを!キミも紅茶に見識があるのかい?」
興奮気味に、篝火へ誘われる蛾の様にゆらゆらしながら緑谷へ近づくジェントル、大して緑谷は微笑みながら語り出した。
「つい先日、クラスメイトからご馳走になったんです、素人ながらにあれは初めての味わいで……幻の紅茶と聞いてびっくりしましたよ……」
自分は素人でしかない、しかし素人ではあるが初めて飲んで美味しかったですよと正直に語る緑谷は、笑顔のままさらに話を続ける。
「ルーティーンってやつですか?仕事前の気分を高める為に、特別な紅茶を飲むのは?ジェントル・クリミナル?」
「あーー」
確認であった、この男がさて本当にジェントルクリミナルか、声をもう一度聞き、名前を出して緑谷は反応を見たのだ、そして言葉に詰まってしまったジェントルに対して、緑谷は一歩近づいた。
「こんなとこで何をーー」
「逃げるぞラブラバ!」
「ええジェントル!!」
瞬間、背を向けてジェントル・クリミナルは飛翔した。まるで、空気をそのままトランポリンにした様に跳ね上がる様な飛翔で、ラブラバを連れて空に舞い上がったーー。
ジェントル・クリミナル、その個性は『弾性(エラステシティ)』触れた物に弾性を付与することが出来る。今彼は足元の空気に弾性を与えてそれを利用して大ジャンプしたのだ。
ジェントル・クリミナルは緑谷の個性を知っている、彼の個性はそれこそ恐ろしいが、頭部ないし頸部を掴まねば意味無いと、だからまず距離を離す!逃げる!逃げた先から改めて此度の企画を再開しようと考えていた。
ただし、それは雄英体育祭があった5月の緑谷出久の話である。ジェントルは知らないーー。
「Get Over Here!!(こっちに来い!!)」
「ぬぁああ!?」
「きゃあああ!!」
ジェントルに、ラブラバに、二人の脊髄が掴まれて引っ張られるような感覚が体に起こる。そのまま引き戻されるや、二人の頭部は……緑谷出久のそれぞれ左右の手によって鷲掴みにされた。
「つぅかまえたぁ」
戦慄が2人に疾る……掴まれてしまった、詰みである。いや!まだ何とかなるかもしれないと、ここでラブラバが抵抗に出た。
「ジェントル!愛してるわ!貴方だけでも逃げて!!」
ラブラバがそう告げるや、ジェントルの体にピンク色の稲妻がーー。
「いだだだだだだだだだ!ギブ!ギブアップぅうう!?」
「きゃあああぁああ!?痛い!痛いぃいいい!!」
発生したがそんな事しようが逃さないよと、二人の頭蓋骨がミシミシ悲鳴をあげて激痛が起こり、二人して痛みに絶叫した。
ラブラバ、個性は『愛』愛を囁く事で、最愛の人間を短時間パワーアップさせる、この場合はジェントルなのだが……その愛を無慈悲に緑谷出久は握力で捻り潰したのであった。
「何しようが構わないけどさ?このまま二人とも仲良く頭蓋割って脳みそぶち撒けてもいいんだけど?」
「き、キミ!?そんな恐ろしい事言ってヒーロー科の自覚はあるのかいだだだだだ!?」
「あんたのどこがヒーローなのよ!?レディには優しく、あんぎょああああああ!?」
二人して、それがヒーローの所業と台詞かと言われてイラっときた緑谷はさらに握力を上げた。絶叫が静かな住宅街に響く中、緑谷は二人に言い返した。
「失礼な、ちゃんと仮免受かったヒーローの卵だよこっちは、そしてこの僕が一般的ヒーローの様な慈悲を持っていると思わない事だ」
そういいながら、緑谷の腕が動く。二人して聞いてしまった、首からミチミチと、筋繊維が裂ける音を。それを聞いて二人は絶叫すら止まり、恐怖に震え出したのをその手から感じた緑谷は、二人の頭部から手を離した。
「が、今日の僕は気分がいい……これから楽しみな文化祭前に気分転換しようとこの店のモーニングを楽しもうと来てたからさ……」
二人の肩に、背後から手を置いて……緑谷は囁いた。
「ちょっとお茶を飲みながら話しよっか?」
ジェントルとラブラバは、すでに命は握られていつでもその気になれば、この少年に殺されると理解して、彼の誘いを断るなどできなかった。