【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
ー10:00ー
ブザーが鳴り響き、幕が開く。満員御礼の体育館で、バンド隊もダンス隊も客と対面して、声援が叩きつけられた。
緑谷は探した、エリちゃんはどこだと目を動かして……見つける。通形先輩が見やすいように抱えていて、まだ周りの声援や初めて見る光景に追いついてないようだ。
声援や客層も様々だ、一年坊主頑張れと叫ぶ先輩、ただじっと値踏みするように見上げる生徒……そして八百万の隠れファンが多数居るらしい、まさかの八百万コールが客席を染め始めた。
今日まで頑張って来た理由……皆に楽しんで貰いたい気持は変わらない。例え、トラブルの中心だと罵られようと、自己満足でしかないと言われようと、ヒーロー科だろうが普通科だろうがサポート科だろうが経営科だろうが心は同じだと思っている。
そして……自分が救って、笑顔を知らない女の子に笑顔を取り戻させる為に、今日まで自分は頑張って来たのだから。
眼差しは向けた、気付いているかな?気づかなくてもいい、ただその目で見て楽しんでほしいと緑谷は始まりを待つ。
照明が落ちる……そして、始まりの狼煙を上げるのは!!
「いくぞゴラァああああ!!雄英全員……音で殺るぞぉおおお!!」
ドラムの爆豪!!爆風と共にスモークが広がり音楽が鳴り響く!!掴みは派手に、一気に自分たちの世界へ引き込み、練習通りに緑谷はステップを踏み始めた。
「よろしくお願いしまぁあーーす!」
耳郎の声が響き渡る、観客は爆豪の爆破と演出、音圧で一気に引き込まれたのが緑谷にも分かった。
歌声も、ギターもベースもドラムも、キーボードも、誰も走らず調和して決して崩れない。思わず緑谷は笑みが溢れた、胸に湧き上がるこの感情、楽しいという感情は、今まで体験した事なかった。
溢れそうになる、歯止めが効かなくなるけど、緑谷は我慢した。あくまで今は1人のダンサー、アドリブなんてダメだからと、緑谷は笑顔で踊り続ける。
ふと、右に居た砂藤と目が合った、砂藤は普段見ない緑谷の笑顔を目撃してしまいびっくりするも、即座に笑顔を返した。
飛び跳ねて、腕を掲げて、叫んでしまいそうになる。こんなに楽しい事は初めてだ、サビに入りいよいよ前半の目玉だと、緑谷は青山に目線を送り駆け出した。
紫色の稲妻を迸らせて飛び跳ねて、青山も迎え撃つように跳ぶ。右腕同士を互いに交差させ、勢いつけて青山を緑谷は天井に引き上げた。錐揉み回転する青山が最高点に到達するや、ネビルレーザーをあちこちへ飛ばせば、人間花火そのもので、観客は歓声を上げてその最中に緑谷はステージへ着地した。
さてここからは裏方、緑谷はダンサーの前を横切り着地した青山に親指立ててステージから退場し、階段を駆け上がった。
「いい感じだぜ総大将!次も頼んだ!」
「頼まれた!」
切島よりバッチリだと言われ、次も頼まれたと言われながら演出組に合流し、次のタイミングを待つ。ステージでは峰田のハーレムパートが始まる、サビまであと少し、天井裏に乗り出して緑谷は曲を聴きながら、切島のゴーサインを聞き逃さぬよう集中する。爆豪が盛り上がるサビへのドラムロールが鳴り響き、タイミングを合わせーー。
「くるぞ!!」
切島の合図を聞いて、青山を引っ張り上げる。演奏中でありながら八百万が腕からクラッカーを生成して打ち鳴らし、瀬呂もテープを射出し、口田は鳩に指示を出して飛ばし、轟は氷橋を天井に架けた。
切島は氷塊を抱え、氷橋を走り冷気のスモークを撒き散らし、緑谷もミラーボールとなった青山を、氷橋の上でリズミカルなステップを刻みならあちらこちらに引き上げて動かした。
ふと、通形とエリちゃんを見つけると、通形があそこに緑谷が居るよと指をさして来た。
そして……緑谷は見た。
笑っている、エリちゃんが、笑っている!笑顔を失った少女が、指で頬をつねり笑おうと無理をしたあの子が、楽しそうに笑っている!
「エリちゃん……!」
気持ちが昂りを抑えられ無くなる、緑谷のテンションが最高潮になった。曲もいよいよ終盤、氷橋に登って来たダンス隊も、それぞれの振り付けと役目を果たす。蛙吹の舌に釣られた麗日が観客に触れて浮かせ、無重力で浮かせた、観客も身を委ねた。
青山を隣に着地させ、最後のステップを思い切り刻む。青山と一種顔が合うや、互いに笑いそして……最後のポーズを経て一曲目は終了した。
口笛に歓声が体育館を揺らした、ああ、もうこれで終わって良くないか?最高の数分間だったと、氷橋の上で息を切らした緑谷は、隣の青山に肩を叩かれた。
「行っておいで、さらに盛り上げてきなよ、緑谷くん」
その言葉と同時に、照明が消えた。ああ、そうだ、次は僕の番だ……けど、大丈夫かな、皆……受け入れてくれるかな?台無しにしないかな……。
このまま終わって良くないかと思ったが、エリちゃんが見てるとなれば、応えて頑張らないといけないと、緑谷は氷橋から跳んだ。
スポットライトが、緑谷を追った。これは話になかった演出だった、ふと轟が操作しているのを見て、ステージに着地した緑谷は、メインのマイクスタンドの場所に立ち、常闇からギターを手渡され、それをしっかり肩にかけた。
「まだ声出せるかぁ!雄英!!」
自然と出たコール、それに対して観客の雄英生もレスポンスを返した。
「もっと声出せ雄英!!」
もっと、もっと声出せと煽ればさらにレスポンスが返ってきた。
「腹から声出せ雄英!!」
イェエァアアアアアアアア!!まるで声の殴り合い、それを聞いた緑谷はマイク向かって叫んだ。
「叫んでイこうぜDIE SET DOWN!!」
その合図と共に、爆豪のシンバルがリズムを取り、二曲目が始まった。