【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「じゃあな雄英生、あまりあからさまにんな事口にすんなよ〜?」
「あ、はい、ありがとうございます」
式典を終えた控え室の廊下にて、緑谷はサイン色紙を持って深々と頭を下げていた。その相手はラビットヒーロー、ミルコ。なんと、鼠蹊部発言を聞かれてしまっており、エロ坊主がと小突かれたのだ。
それはそれとして、サインとツーショットというファンサまでしてくれたので緑谷は一生の宝にすると決めたのであった。
ただの式典への参加だけだが、それでも全国から様々なヒーローが、そしてオールマイト引退後のビルボードチャートの発表を会場で見れてさらにサインまで……天国だなとミルコのサインを胸に抱いてしみじみ緑谷は思った。
「やー緑谷くん、さっきはどうも」
そうしてミルコの背中を見送る中、会場で不遜な発言をしていたナンバー2、ホークスがまた声をかけて来た。
「どうも、お疲れ様でした」
「そんなに畏まらないでいいよ、リラックスリラックス、もう終わったんだから」
式典も終わったから肩肘張らなくていいと笑うホークスは、緑谷の肩に手を置いて言った。
「で、よかったらだけど……これからエンデヴァーさんのナンバー1ヒーロー祝いをささやかに開きたくてね?今他のヒーローにも声かけてるんだ、タカカズ先輩にも伝えてもらっていいかな?」
「聞いてるぜホークス、そういう事なら参加しようじゃあないの」
控え室から出て来たタカカズが、車の鍵をクルクル回して参加するとホークスに伝えた。
「飲酒するなら送迎がいるだろう、同じ学校のよしみだから足は出すぜ?呼ばれたヒーローは公安からホテル用意されてるしな」
「りょーかいっす、じゃあ適当に声かけときますね」
ナンバー2による、ナンバー1を祝う為の懇親会、それを活動している地元で是非と言うホークスに、タカカズは参加と送迎は承ったと言えば、他のトップ10にも声を掛けてくるとその場を立ち去った。
「つっても、あのエンデヴァーが祝いを受け取るかねぇ……いらん、俺は仕事に戻るで終わりそうなんだが……」
20余年を経て目指したナンバー1ヒーローになったエンデヴァー、公私を捧げてヒーロー活動を続けた媚びない頑固な男は、果たして祝いを受け取るのかとタカカズは呟いた。
それから、1時間と少し……。
「異能解放!ばんざーー」
一人のコートを羽織った男が、何やらやらかし掛けたところを、幾つもの羽が突き刺さって凶行を止めた。
「エンデヴァーさん、好きな食べ物あります?そこの水炊きすげー美味いんですよ、鶏の味がしっかり出てて」
身構えたエンデヴァー、そして既に事は終わった様子に、緑谷と轟は目を見開いた。早い、そのくせまるで見なくても分かるとばかりにその羽は……。
「ああ!駄目よ!」
車道に飛び出した飼い犬を救い出し、飼い主の元へ戻してあげた。
「凄い……センサーでもあるみたいだ」
「これがナンバー2……」
「俺が言っていた事、理解してくれたか?緑谷、轟……」
地下駐車場に車を停め、出て来たホークスとエンデヴァー、その背後にはホークスの下でインターンを行った常闇が、驚く緑谷と轟に、ホークスのあまりに早すぎて、未来予知じみた先回りするような対応に驚かされた。常闇がインターンで何も出来なかった素振りを見せた理由を、しかと目の前で見せられたのである。
「ああ、ホークスの羽は微細な空気の揺れすら読み取る、その気になれば崩落したビルの中に埋もれた生存者も探知する、一枚一枚がセンサーの様に鍛え上げられているのさ」
実際、センサーは当たっているぞとタカカズが、ホークスの剛翼の秘密を皆に教授した。その羽の数枚が、やがて階段を上るのに苦労している老婆の荷物へ向かい抱え上げながらホークスは言う。
「ばぁちゃん、上まで持つよ」
「ありがとうねぇ」
自然な人助け、また気づけなかった。そして生放送の後にこうも歩けば、トップ10ヒーローの三人が集まるとやはり群衆は集まってくる。
「ホークス2位おめでとう!」
「ホークス写真撮ろ!」
「見たぞ放送!自信満々でカッコよかったぞ!」
柔軟に、あちこちから来るファンにファンサービスをしていくホークス。これが、日本で2番目に選ばれたヒーローなのかと人々の憧れを一身に受ける様に緑谷も、轟も、常闇も感嘆した。
「タカカズや!実物で見るとガッチリしとるなぁ」
「タカカズさん!サインと気合い入れおなしゃす!」
「こんどうちにも飲みに来てぇん!」
その傍で、むさ苦しい空間が出来上がりつつあるタカカズもまた、トップ10入りの人気を実感していた。
が……対してナンバー1はと言うと。
「エンデヴァーや……」
「威圧感すごかぁ……」
「じゃああそこに居るのは、息子の焦凍くん?雄英体育祭二位の?」
ヒーローによって、求められている物、感じる雰囲気は違う。ナンバー1でありながら、その威圧感と貫禄故にファンでも近づけないのが、エンデヴァーなのだろう。
人気もヒーローを構成する一つ、ここまで違うんだなぁと納得している中……ふと、もじついてこちらを見ている人が居た。
中学生くらいか、その少年は意を決して向かってくる……エンデヴァーにサインでも貰いに来たのかなと思っていたその足は……緑谷の方に向かって来た。
「あの……緑谷……出久さんですよね……」
「え?あ、はい……」
まさか、自分に声を掛けられるとは思わなかった、緑谷は名を聞かれそしてその通りと頷いた。
「その……雄英体育祭見て……僕、貴方の言葉にすごい元気つけられたんです……抱えた個性で、生きなきゃいけないって」
あの時か、轟くんとの戦いの時の……確か自分のは個性の関係で、アーカイブでしか見れないから、この子はわざわざそれを見てくれたのかと、緑谷は理解した。
「それで……よかったら、その、サインを書いてもらっても……」
「へ!?僕の!?」
「はい……」
まさかの事態と、サインペンと色紙が目の前に出されて、緑谷は驚愕する。まだヒーローにもなってない仮免の自分に、まさかファンが居たなんてと……緑谷は震える手で、色紙とサインペンを受け取った。
やばい、めちゃくちゃ緊張する、けど求められたなら書くのがヒーローだよなと、サインペンのキャップを外して……あ、名前聞かないとと少年に尋ねた。
「えー、名前は……」
「山尼嵐です……」
名前を聞いた緑谷は……恥ずかしながら思いついたのはこっそり練習していた自らのサインを色紙に描き、山尼嵐くんへ、とちゃんと名前を刻んだ。
「どうぞ」
「あ、ありがとうございます!」
この日、緑谷は初めてヒーローとしてファンサのサインをせがまれ描いたのだった。
一方で……。
「違う……エンデヴァーはそんな事せん……」
「え!?ち、違うのか!?」
「親父ぃ……」
エンデヴァーはガチ勢ファンにファンサしようとして解釈違いだと逃げられ、息子に醜態を晒したのだった。
・山尼嵐
イーヴル・ヒーローイズクのファン第一号、最初のサインを手に入れた福岡に住む中学生。ちょうど帰宅途中、お祝いの店選び中のホークス達一団の中に、緑谷出久を見つけてサインを書いてもらった。
雄英体育祭のセリフに元気つけられたらしい。
個性は『ヤマアラシ』で、その長い鋭利な針で昔からその気がなくても人を傷つけてしまい、個性を疎んでいた。
元ネタは仮面ライダーアマゾンの獣人ヤマアラシで、名前は当時の誤植『獣人山アマアラシ』から来ている。