【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「何がいけなかったんだろうか……士傑の坊主には出来ていたのに……」
高層ビル、ホークスの御用達の店ヨリトリミドリは、水炊きに焼き鳥と、鶏肉を扱う専門の居酒屋だった。その個室に通されたホークス、タカカズ、エンデヴァーと、此度の招待にあやかった緑谷、轟、常闇は……意気消沈しているエンデヴァーというレアな姿を拝む事となった。
「まぁあれだ、あんたが積み上げた20余年の変化を許さないガチ勢ってのはいるのさ、厄介ファン……とまではいかなくてもな」
そう言ってタカカズは、ノンアルコールビールの瓶からグラスに注ぎそれをエンデヴァーの前に置いた。ヒーロー達が頼んだ飲み物はノンアルコールだけ、緑谷達はソフトドリンクでともする事になった。
「ま、とりあえず食べましょうよエンデヴァーさん、水炊きの出汁もいい具合にでてるんで、まずは出汁から味わってもらって」
水炊きはまずスープからと、煮立つ白濁をカップにすくったホークスがそれも差し出し、他の面々にも配っていく。
「ほら、キミらも好きなの頼んでよ?ナンバー2の奢りだ、ここは焼き鳥も美味しいからさ」
ナンバー2が奢りで祝うから遠慮するなというホークスに、付き添いの雄英生徒たち三人はメニューを渡され、三人でそれを覗き込む。
「とりあえず皆が食べるセット頼むべきか?」
「フライドポテトに唐揚げもあるのはいいな……」
「焼き鳥なのに……豚バラ?」
遠慮するなとは言ったが皆がつまめるならセットかと悩む緑谷に、まだ年相応のジャンクなメニューもありホッとする常闇、実は福岡の焼き鳥は豚バラがあるのを知らなかった轟と、三者三様の反応を示した。
此度のエンデヴァーの祝い、他のヒーロー達にも声を掛けたが、結局来たのはタカカズだけであった。そのあたり、やはり近寄り難い印象はあるようだ。さらに、エンデヴァー自身もしもの為と酒もノンアルコールでと徹底してるあたりストイックさが見てとれた。
兎も角、エンデヴァーの祝宴はささやかに、ヒーロー二人と学生三人で行われたのだった。
「それで……こんな場を設けてまでわざわざ俺を呼んだ理由は、チームアップの件か?」
1杯目のノンアルコールビールを飲み干すや、祝いの席だろうと構わずこの男、エンデヴァーは仕事の話をし始めた。
「まぁまぁ、とりあえず水炊き突きながらにしましょうよエンデヴァーさん、始まったばかりですから……」
それには早すぎると、ノンアルコールビールをホークスが開いたグラスに注いだ。
「仕事人間なのも分かるが、少し立ち止まるのも必要だぜエンデヴァーさん、しかし……ホークス、なんでまたチームアップを?」
水炊きを小鉢によそおい、タカカズが皆に配り始めた中……学生組は自分たちがこの場に居ていいのかと考えながら、タカカズからよそってもらった水炊きにありついた。
「うめぇな、鳥だしも優しいし……ポン酢も違う」
「そうだね、鍋は家で食べたりするけど、初めて味わうタイプかも」
「うむ、美味い」
が、福岡の水炊きの味にまぁいいかと緑谷達は、邪魔しないように食べている事にするのだった。
「まぁでも、せっかくですから少し話しましょうか、キミら学生にも聞いといては貰いたい話だからね……」
が、ホークスはエンデヴァーの要望にも答えるべきかと、チームアップの話をする事にした、しかもそれは……この場で同席を許した3人にも聞いて欲しいらしい。
たかが学生でしかない自分達が、エンデヴァーとホークスのチームアップに関係がある事とは一体……小鉢に具材をすくっておかわりする緑谷は、その話がなんなのかと食べながら耳を傾けた。
「前にも話しましたけど……噂の件もあって貴方にチームアップをお願いするんです」
「改人、脳無……ヴィラン連合が持つ、悪趣味な操り人形……」
その単語に、緑谷の箸は止まった。それはかつて……USJを、保須を、そして林間合宿や神野を襲った、ヴィラン連合の人造兵器である。
「まさか……また現れたんですか、あの化け物が」
もしや、また現れたのかと緑谷は心配になり、プロヒーローの話とはいえホークスに尋ねた。
「キミとはやけに因縁があるみたいだよね、緑谷くん?キミはUSJで死柄木が連れた一体、そして保須では二体を見事討伐した……保須のは公式でエンデヴァーさんの手柄になったけどね」
「もったいつけるな……現れたのか、噂なのか、どうなんだ」
結局、現れたのか噂なのかとエンデヴァーはさっさと言えと促す。ホークスは焼き鳥を串から噛み外して食べ、飲み込んでから答えた。
「噂っす」
あくまで噂でしかない、それを聞いたエンデヴァーの目元の炎が揺らいだ、下手したら怒りで帰りかねないくらいに眼差しは厳しい。
「貴様……噂で俺とのチームアップを要請したのか?」
「えぇ、ただ……その噂も、この九州だけじゃなくて、全国各地の全く関連がない場所で出て来てるんすよ」
脳無の目撃談が、全国で?けど確証も実例も無い噂話だよなと、緑谷は首を傾げた。
「全国か……根も葉もない噂話とはいえ、それが各地で囁かれてるって事は、今はそれだけ一般市民の皆様方は不安になってるわけだ……一人で調べたのか、ホークス」
「ええ、秘密裏に」
その噂話こそが危ういなと、タカカズはヤゲン軟骨を噛み砕く。
「それで……貴様は結局何がしたいんだ?俺とチームアップをこだわる理由は?」
ノンアルコール頼んだよな?緑谷は一応ノンアルコールビールの瓶を確認して、普通のビールではないと再確認し、それでも酔っ払いとまではならないが、気を大きくして苛立ちを見せるエンデヴァーが、何を俺に望みチームアップするのかと結論を促す。
ホークスはエンデヴァーに人差し指で指差し、それから親指立ててサムズアップして言った。
「ナンバーワンの貴方に、頼れるリーダーになって欲しい、立ち込める噂話を貴方が検証して、安心してくれと、胸を張って貴方が伝えて欲しい!」
それは、嘆願とでも言うべきか。
オールマイト引退から活発になったヴィランの行動、そして今話した噂話とは言え、無辜の一般市民に蔓延する不安……それを取り除けるのはナンバーワンヒーローとなった貴方にしかできないと、真剣な声色でホークスは言う。
「俺は何もしない、まぁ控え室で言いましたけどようは、ナンバーワンのプロデュースですよね」
「貴様……」
が、その代わり自分は何もしない、その為にエンデヴァーをプロデュースして手助けするのが役目と、ホークスは和かに無気力宣言するので、おちょくってるのかと流石にエンデヴァーが立ち上がる。
「俺は楽したいんですよほんと、適当にダラダラパトロールして、今日も何も無かったとくだをまいて床につく……これ最高の生活」
そのままテーブルに肘をついて、笑いながらホークスは、理想を語った。
「ヒーローが暇を持て余す世の中にしたいんです……」
ヒーローが暇を持て余す……つまり、ヴィラン犯罪が無い平和な世界……それを聞いた緑谷は……。
「いいですねそれ、ヴィランも居ない戦いも起きない、平和な世界って事でしょ?」
「そーそー、ちゃんと定時退社できて翌朝までぐっすり寝れる平和な世界」
「ヒーローが目指す、最終目標じゃないですか」
ホークスの目標、願いに緑谷は理解と賛同を示した。永遠に続く戦いでは無い、平和でヒーローがスーツを脱ぎ、普通に暮らす社会……いつかそんな日が来て欲しいとホークスの目標に緑谷が頷く。
その最中だったーー
和かに笑っていたホークスも、ホークスの話に苛立っていたエンデヴァーも、そして二人の話を聞いていたタカカズも、一気に表情が変わった。
そして数瞬遅れて、緑谷、轟、常闇も気付いた。3人から、弛緩が消えて緊張が走る。
「……エンデヴァーさん、タカカズさん」
既に、臨戦態勢に入ったヒーロー3人、それに対して緑谷達付き添い雄英組も、ただならぬ気配に気を引き締める。
「お客様方、飲み物はーー」
「下がって!お姉さん!」
ホークスが叫んだ瞬間、窓の景色から一気に何かが、窓ガラスに衝突して破片を散らして現れた!
「きゃあああああああ!?」
「ホークス!タカカズ!避難誘導!!」
「了解!イズク!ショート!ツクヨミ!ドア開けて退路確保!非常ベル鳴らせ!」
「はい!」
タカカズが、ヒーローネームを呼び指示を出した。轟が個室のドアを開き、緑谷は近場の火災ベルを押して鳴らすと、常闇は即座に非常階段までの退路確保に動く。
ベルが鳴り響く中、店員の女性を庇いながら、ガラス窓を突き破る者を見て、それが何かを理解する。
まさか、ここで出て来るか……巨躯な異形と漆黒の肌、そして剥き出しの脳みそ……即ち、改人・脳無!!
「噂ではなかったか……何とも間のいい奴よ……!」
「祝いの場を狙うなんて、酷いことして来るじゃあないの……ホークス、俺は避難誘導するから、エンデヴァーと頼む」
「任しといてください、タカカズさん」
「さぁ、店員さんこっちへ、慌てないように」
脳無と対峙するエンデヴァーに対し、タカカズは酷いことをすると言いながら、今の自分では邪魔になると避難誘導を行うべきと見て、ホークスが庇った店員を連れ奥に消えて行った。
「赫灼熱拳……!」
ここからが本題だ、エンデヴァーは左拳を握り締め体内の熱を拳へ集中させ、そして思い切り左拳を現れた脳無へ振り抜いた。
「ジェット・バーン!!」
エンデヴァーの必殺技『赫灼熱拳』それは、溜め込んだ炎熱を、様々な形や攻撃法によって放つ技である。ジェット噴射の如く放たれた豪炎は、脳無を押し戻した。
余波で窓ガラスが割れて脳無が宙に投げ出されるも、背中のジェット噴気孔から空気を吹き出し空中に留まる。
エンデヴァーは、そのまま窓から飛び出して左右の足から火を噴き出し宙に浮き、脳無に対し構えた。
「来い、俺を見せてやる!!」
エンデヴァは、ナンバーワンとなったその日に、まるで真価を試すかのような戦いが幕を開いたのであった。