※この作品はR-18です。

【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】   作:ぶっこ抜きデク

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249話 養殖と天然

巨体が、ゴム鞠の如く弾んだ。それほどの衝撃と威力の拳を叩き込まれ、蜘蛛型脳無……『ハイエンド』ことアラクネは、理解するまで時間が掛かった。

 

「な、に……痛み……あまりに……痛……」

 

 ハイエンドと呼ばれる、改良された脳無は、以前までの脳無と違い自身で思考し行動する知能を有している。だからこそ、より高度な作戦行動や巧妙な戦い方ができるわけだが……同時にそれは、ある物まで獲得してしまった。

 

『感情』である。

 

 戦闘への多幸感、食欲への飢餓と欲……このアラクネと呼ばれる個体は、人間の血肉を欲して、より効率的にと一般市民へターゲットを決めたが、そこをヒーロー達に邪魔され、まずはこいつらを倒すのが効率がいいと考えて、そして実行した。

 

 あとは彼方に聞こえる悲鳴を頼りに狩りを始めるだけ……そんな矢先に頭部へ受けた衝撃、そして目の前の黒い鎧を着た人物を見て、理解のために思考を始めた。

 

「グルウうぁああああああああああああ!!」

 

 獣のような咆哮が、福岡の街に響き渡る。中継の為に飛んでいたヘリからも、何事かとその発生源にカメラが向けられ、そこでエンデヴァーが対峙する脳無とはまた別の脳無が現れていた事にやっと気付いた。

 

 そして……対峙する黒い鎧を着た、背中を逸らし叫ぶ人物にカメラが向けられる。当の緑谷本人は知らない、自身の戦う様が撮影されているなど、知る由も無い。

 

 ハイエンド・アラクネはその咆哮を聞いて、首を傾げた。

 

「ヒーロー、じゃ、ない?オれ、達と……同じーー」

 

 そう片言で呟いた矢先、アラクネの蜘蛛の足6本のうち2本が、宙を舞った。

 

「あ、え?」

 

「がぁあああああああ!!」

 

 そのまま赤紫の触腕が、左腕から伸びて首に巻きつき、思い切りコンクリートへ叩きつけられ、間髪入れず馬乗りになる緑谷。そのまま思い切り顔面向けて、拳を叩き込んだ。

 

「うぁああぉぉあぉぉああ!!」

 

 衝撃が地面に走り道路に亀裂が走る!左右の拳が順番にアラクネの顔面を殴り抜くたびに道路の亀裂は広がっていく。

 

 しかし、アラクネの足が再生するや、緑谷の身体を6本全て使って跳ね上げ、素早く起き上がり、即座に逃げへはいった。

 

 ビル壁に足を突き刺して上がっていき、あのままではまずいと、痛みでアラクネは理解したのだ。

 

「まず、い!逃げない……と!……殺される……!?」

 

 ハイエンドの弱点は、その知性、感情であった。人間と同じ思考を持ってしまったが故に『恐怖』を理解してしまう。今の瞬間で、もはや勝負は決してしまったと言えよう。

 

 例え再生の個性を有していても感じた『死』への恐怖をアラクネは理解して、逃げに切り替えた。

 

 ビルを登り切り、兎も角逃げねばと這い回るアラクネだったが……視界が突然がくりと下がった。

 

「あ、あーーあ!?」

 

 追いついていた、既に、緑谷が!そして6本の足を腕部のアームブレードで切り落とし、移動を封じたのだった。

 

「や、やめ!」

 

「おおおおおぁああああああ!!」

 

 再生していく間もなく、次は足の1本を根本から掴んだ緑谷が、思い切り引っ張り引きちぎった。更にまた一本、もう一本と、まるで無邪気な子どもが昆虫の足を引っこ抜いてイタズラするように、アラクネの足が引き抜かれる。

 

「さ、再生、さいせ、できな、な!!」

 

 その恐怖が、さらにアラクネへ異常を引き起こした。なんと、再生するはずの足が生えてこないのだ。いくら個性には使用限界があれど、その原因をアラクネは理解できなかった。

 

 アラクネ自身が……恐怖に飲まれ、屈服して再生を拒んでしまったのである。因子が、再生を拒否したのだ。

 

 もはや動けなくなったアラクネは、見下ろす黒い鎧のヒーローを見て、その手が首を鷲掴む様を必死に止める。

 

「ま、まって、ゆるし、て!やめ、て!!」

 

 命乞いも虚しく、アラクネの頭部は身体から脊髄ごとぶっこ抜かれて、活動停止した。

 

 それと同時に……エンデヴァーもまた、対峙していたハイエンドを更なる業火で焼き切り、スタンディングを見せていたのであった。

 

 

 

 

 

「以上が、福岡で起こった一部始終だ……ドクター、あんたプリンスの変身に関して何か知ってるか?」

 

 薄暗い、幾つものガラスの円筒が並ぶ部屋で荼毘は、その時見た全てを話した。ドクターと呼ばれた男、禿頭の白衣の男はPCに映し出された映像と、荼毘の証言を聞いて、顎に手を当てて頷く。

 

「変身については全く持って知らんが……この子は昔、10数年前にワシが診察したのを覚えとるよ……そうか、死柄木弔に全て移行してからこう育ったのか……」

 

 ドクターは、緑谷出久を知っていた。診察したとも言う、しかし変身体に関しては知らぬ存ぜぬと言い、話は続いた。

 

「AFO様が死柄木を拾う前の話でな、後継者を作ろうと世界中のワシのような協力者に少しばかり実験を行わせた、AFOの個性因子を媒介にしたウイルス、それをランダムに当時の乳幼児に打ち込んで、適応した者を後継者にしようとな」

 

 まだAFOがオールマイトに一度倒される前の話、死柄木弔を拾う前の事だと言う。自らの後継者を新たに作り出そうとしたAFOは、自身の個性因子からウイルスを作り、それを世界中の協力者へ渡し乳幼児に打ち込ませたという。

 

 様々な方法で、それこそ予防接種や病気で入院した際の点滴、無造作に選んだ乳幼児へ打ち込んだのだと。

 

「10数年前……そういやあったな、乳幼児の大量死」

 

 荼毘もそういえばあったなと思い出す、世界中で乳幼児が個性暴走や高熱で亡くなったとか、未知のウイルスのパンデミックとなっていたがウイルス自体見つからなかった不可解な事件だったと。

 

「あれの原因はそれじゃよ……で、その際に日本国内で唯一生き残ったのがこの子じゃ、その事をプリンス自身は知らんみたいじゃがの?」

 

「じゃあ……プリンスって呼び方もハズレじゃあねぇみたいだが、AFOは接触しなかったんだな」

 

「その時にはもう、弔を拾って育て上げる話に移行していたからのぉ……ま、その弔が、今この瞬間ダメになった時の予備くらいにしかAFO様は思っとらんみたいじゃが……こうも成長するあたり侮れんわい」

 

 ドクターの話を聞き終え、画面に映るハイエンドの脊髄を掲げる姿を見て、荼毘は何も言わず立ち去った。見送ったドクターは、しばらく画面を見つめて一息を吐いて呟いた。

 

「AFO様が捕まっているのが悔やまれる、まさか昔の凍結した実験が成功して、こうして成果を晒しているのだから……」





緑谷出久は、10数年前に予防接種の際、当時のドクターによってAFO因子をランダムに決めた一人として射ちこまれ、それが原因で高熱にうなされ生死の淵を彷徨った。奇跡的に回復し、しばらくして個性が発現する。本来は『引き寄せ』だったが、AFO因子により捻じ曲げられ『脊髄ぶっこ抜き』となる。
 死柄木弔が、AFOによる『養殖』の後継者ならば、緑谷出久は野に放たれた『天然』の後継者である。
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