【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
その日、日本中がその光景を目撃した。
始まりのスタンディング……傷つき、苦戦しながらもその腕を掲げて勝利を伝えた新たなナンバー1ヒーロー、エンデヴァーの姿を。およそ、全てのテレビ局がこの姿を放送した中で……一局だけ、別のニュースが流された。
黒い鎧に身を包んだヒーローが、脳無の首を持ち抱え上げる様……流石に手元はモザイクがかかったが、エンデヴァーとはまた別エリアの避難していた一般人達が、その姿をスマホのカメラで撮影し、SNSによって拡散された。
『黒いオールマイト、現れる』
『もう一つのスタンディング』
さらに……そのテレビ局はしっかりその後も撮影に成功していた。変身が解除され、現れたヒーロー……漆黒の衣装に身を包んだ彼は何者なのか……その答えは情報社会では辿り着くまで一夜と掛からなかった。
雄英高校の正面ゲートが慌ただしくなったのは、林間合宿の襲撃以来だろうか、様々なテレビ局やマスコミが押し寄せ、一人の少年に会おうと必死に騒ぎ立てていた。
「緑谷出久くんに是非インタビューを!」
「彼の個性は何でしょうか!映像では変身してましたが!」
「オールマイトの隠し子という噂は本当なんですか!」
福岡でのスタンディング……エンデヴァーが苦戦した脳無を無傷で討伐し、あまつさえその首を掲げる様は、日本中に彼の名前を知らしめた。
ヒーローを育成する学校からすれば、まだ仮免取り立てのセミプロヒーローでありながら、一線級の活躍をするのはアピールにもなるし、喜ばしい事かもしれない。
が、今年の雄英は、1-Aを中心に色々とあり過ぎた。その為根津校長はこの件に関しては慎重な対応をと教師陣に通達した。
そしてーー当の本人たる緑谷出久は……。
「はぁ!?インタビューにテレビ全部断ったぁ!?」
「なんでだよ緑谷ぁ!?有名になるチャンスだったろ!」
1-Aの教室……福岡から帰還した緑谷に、上鳴と峰田があれからインタビューやテレビ取材は受けたよな?どうなんだと言われ、緑谷は全て断っていると言うやそう叫んだ。
「だって……目の前で一人ヒーロー死んでるし、タカカズさんは入院、轟くんも常闇くんも軽傷で済んだけど、そんな惨状で何を悠長に活躍を嬉々として自慢できるのかって……」
緑谷からすれば、目の前で死人は出るわ招待してくれたヒーローは大怪我するわ、クラスメイトは危なかったわの3重のアクシデントを前に、何を自分だけヒーローインタビューの壇上に立つ厚かましさがあるのか、と言う事になっていた。
「そ、そうか……そりゃちょっと考えるか……」
「軽傷なのが奇跡だったって……」
緑谷本人からしたら、クラスメイト2人の活躍と、亡くなってしまったヒーローへの慰問をお願いしたいくらいだった。だから、今も取材だのテレビインタビューだの来たら全て断りをして欲しいと、担任の相澤先生にお願いした。
それはそうと……緑谷は上鳴と峰田の顔を向けながら、二人にこちらから尋ねてみた。
「聞かないの?あの姿が何なのかって……」
そう、自分が変身した姿に何も思わないのかと、もはや全国にその姿が知れ渡ってしまった、あの黒い鎧の姿について尋ねないのかと聞いた緑谷に、上鳴と峰田は顔を見合わせて頷き、上鳴は言った。
「そりゃあさ、気になるけど……話せる準備できてる?」
「え?」
「総大将、個性で苦労しててUSJの時に色々あったじゃん?だから、言える準備できるまで俺は待つよ?」
上鳴は逆に、話せる心の準備ができてから聞くけど?と尋ねて来たのであった。一学期のヴィラン襲撃事件で、一度は雄英を辞めそうなくらい追い詰められたから、言える準備ができたら聞くよと諭したのだった。
「今更何来ても驚かねぇって緑谷、脊髄引っこ抜けて、熊も倒せて、あの脳無を無傷で倒せるお前に次は何があってもさ?」
それに、今更色々規格外の力を見せている以上、次何があっても驚きはしないと峰田も頷いた。
緑谷は、二人の話を聞いてしばらく黙って……笑ってしまった。
「本当……お人よしだねキミ達も、このクラスの皆も、本当に僕こんな幸せでいいのかなぁ……」
普通なら避けるだろうに、まさか話せるまで待つし、何が来ても驚かないと言い切る二人に緑谷は笑うしかなかった。このクラス、根っこから善人しか居ないのかもしれないと緑谷は微笑みながらそう思うのだった。
やがて、教室に入って来たクラスメイトから、インタビューの件を何度も尋ねられた。その度勿体無いと驚かれて、変身体に関しても聞いては来なかった。
福岡の出来事を、忘れさせるような日常が今日も始まるーー。
そんな楽しい日々が、いつまでも続いてくれたらどれだけ幸せか……。そんな儚い願いを打ち壊すように、運命の歯車はもう回り始めていた。
言い忘れていた事がある。
これは……悪の個性を生まれ持った少年が、運命を乗り越えて、正義のヒーローになるまでの物語だ。