【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
心操人使は、塩崎が洗脳に掛かった事実と、上鳴の自身を使った囮作戦に戦慄していた。こうも上手くいくのか、そして何より仲間を信じて託せるのかと、パイプの張り巡らされた奥地で、ペルソナコードを調節しながら上鳴の決断力に冷や汗を流す。
『俺だけ捕まるってどう?』
『捕まる?』
ツタの壁を前に上鳴は笑っていた、蛙吹も唐突な提案に尋ねるが、上鳴はゆっくりツタに向かって歩きながら言った。
『俺が警戒されてんなら……向こうハズレくじじゃんねぇ?さらに、体育祭ん時も、電気防ぐ時にツルめっちゃ使ってた……俺が暴れてヘイト稼げば、ツルが手薄になるんじゃね?』
完封された敗北だからこそ、よく覚えていたのかも知れない。普通なら、一度負かされた相手は臆する筈。それよりも今の思いつきなら勝てると感じたのか、自ら上鳴は死地に踏み込んだ。
『その隙に、心操と梅雨ちゃん!おいでぇ〜!!』
いや、死地とすら思ってないのかもしれない。訓練だから線引きしてるとかではない、心操は分かってしまった。上鳴電気は……根っからのお人よしだ。
だから、自分が囮になってのヘイト稼ぎをして、自身がどうなろうとこの試合は勝てると踏んで、そのまま後ろ歩きで笑顔を見せながらツタを踏み、自ら塩崎に捕まったのだ。
その後、蛙吸や自分がどう動くか、どう合わせるかも考えて無い。『この二人なら上手くやるっしょ!』と軽い気持ちで囮とヘイト役に上鳴は請け負ったのだ。
暗がりの配管が密集した隙間で……心操は相澤先生から与えられた捕縛布を握りながら、上鳴の作戦から合わせて塩崎を洗脳できた事態に思う。
決してみくびっていた訳ではない、だが突きつけられた。経験の差を、これがヒーロー科なのかと。
そしてーーこの上鳴から連なった心操の奇襲により、B組の連携は一気に崩れ落ちた。
鱗飛竜は、辺りを見回し、心操を探した。声の方角から所在を割り出そうとしたが……B組が集まっていた空間がいけなかった。タンクや配管に囲まれた、声の反響する場所は、心操がどこから声を上げたかを判別できなくした!
「宍田!敵の位置はーー」
こうなれば、宍田の鼻に索敵を頼るしか無い。それを確認しようとしたが、宍田は鱗の声を無視して駆け出す!
「そっちに一人居るのか!おい、喋れよ!!」
もう一度声をかけたが応答しない、いや……応答できない!!この空間で、もしも割り込んで来た心操の変声機からの声だったら?自分まで洗脳されたらそれこそ終わりだと宍田は考え、心操か蛙吹かは分からないが、兎も角匂いの方角へ行く!
「哎呀(アイヤー)!口元見てりゃ安全だろうが!!」
受け答えしなければ洗脳はされない、近場に居るなら口元を見て判別できるが、ビースト化してハイになった影響か、普段こそ冷静な宍田ももうそこまで頭が回っていなかった!
「とりあえず塩崎を起こさねぇとーー!」
こうなったら塩崎を洗脳から解き放つ!鱗を弾丸のようにを打ち出す『鱗銃』で塩崎を起こしに掛かったが、ピンク色の舌が塩崎を引き上げてそれを許さなかった!
「これで鱗銃は当たらないわね!!」
「蛙吹!?」
鱗の前には蛙吹が現れた!その姿に鱗銃を乱発するが、素早く跳ね回り当たらない!動きもいい、一人での対応は難しいと見た鱗は、心操に向かう宍田にもう一度声をかけた!
「宍田!蛙吹だ!!」
だが、宍田は応答しない!心操の洗脳を止めようと、その洗脳に操られないようにパイプ群を殴り続け向かっている!
コミニュケーションが取れない、連携が崩される……その瞬間を、蛙吹は逃さず飛びかかり、ドロップキックで鱗に攻撃を仕掛けた!
宍田は、パイプ群を破壊して密集した場所を走る。ビーストの個性でその身のこなしは、即座に心操の目の前まで辿り着いた!同じ学年とは思えない、獣人の巨躯な肉体を前に、汗を垂らす心操……ペルソナコードの摘みを弄り、鱗の声を模して話しかける。
「流石だな……」
その手には乗るか!腕を振り上げた宍田に対し、今度は成功させると、練習の成果を心操は遂にその手から放たれた!
炭素繊維が織り込まれた特注の布が、パイプの一部に巻き付いて思い切り引き込みボルトを外し、宍田の頭に鈍い音を立てて落下して叩きつけられた!
イレイザーヘッド直伝!!
『操縛布』
円場の時には追いつけなかったが、今度は見事に先手を取れた!気絶してもおかしく無い質量が無防備な宍田の脳天に叩き込まれたが……。
宍田……崩れず!!ビーストの個性は、人智を超えた肉体強化もあり、意識を刈り取るまでには後一つ足りなかった!心操の驚きが見て取れた宍田、ここで心操を捕縛すると再び腕を振り上げる!
「後ろだ!!後ろだ黙示録!!」
悪あがきが過ぎる!宍田はもう洗脳に掛かってなるものかと応答せず心操に襲いかかる!
が……呼び名で気付いた。その呼び方は……B組内でしか呼ばれてない呼び方であると、気付いた宍田だったが……。
「避けろぉおおおおおーーーー!!」
時既に遅し、蛙吹に捕まった鱗がその舌を使って投げ飛ばされ、頭を後頭部にぶつけられ、気絶したのであった。
「やったぁああああーー!」
「うむ!見事だ!!」
モニターでA組の勝利が決まったのを見て、麗日が両手を上げ喜び、飯田も賛辞を送った。
「おい、心操やべーだろ……ハンデになってねーだろ……」
そして、最後に心操の入ったB組と競い合う峰田は、ハンデが機能してないと心操の活躍ぶりに焦りを見せた。
「第三者、俯瞰視点だと現場のB組の焦りようが分かります……上鳴くんの囮から、一気に心操くんが場を支配して総崩れ……こんなのが相手だとヒーローだろうがヴィランだろうがやり合いたくありませんね……」
「ああ、悔しい事にウチのB組が一気に持ってかれた、宍田が鱗の言葉に応じなかったのもわかってしまう……」
解説のミスター緑谷も、B組の総崩れには第三者視点で見ての感想と前置きして、B組のコミュニケーションが絶たれて一気に流れをA組&心操が持っていったのを見て肝を冷やした。B組贔屓のブラドキングも、上手くしてやられたと負けを認めざるを得ない盛り返しに唸るしかなかった。
緑谷はサラサラと、いつの間にか取り出していたノートを記し終えてそれを閉じて自前の解説席から立ち上がる。
「ではブラド先生、ここからはよろしくお願いします」
「むぉ!?お、おう!勝者……A組&心操チーム!!」
解説、ミスター緑谷はここで終わりとブラド先生に一礼して、解説席から離れた緑谷。そして閉じたノートをくるくる左右の人差し指で挟みながら、峰田や芦戸、麗日の元へと向かいながら呟いた。
「さーて……どうやって勝とうか、あの厄介チームに」
緑谷出久、抜け目無く物間&心操チームへの作戦を企画中。