【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
轟焦凍は、両親から両方の個性を受け継いでいる。
『半冷半燃』右からは母から受け継いだ冷気を、左からは父でありヒーロー『エンデヴァー』より受け継いだ炎を継承し生まれて来た。正反対をそれぞれ扱い、その強さも受け継いだ轟だが……それ故に頼りすぎたと言う見方もできよう。
過去、炎を封印して体育祭にて緑谷と対峙した際も、超接近戦の徒手空拳では追い込まれて最後は見様見真似の父の技でなんとか緑谷から辛勝を勝ち取った。
そして此度も、鉄哲の個性により氷も炎も耐えられながらの近接戦に持って行かれて打ちのめされていた。
「個性伸ばしの一環よ!テメェ……かまどの中で暮らした事あるかぁ!?」
炎を乗り越えて、轟に近づく鉄哲は熱を持ち赤くなった体で叫ぶ。さらにと鉄哲は拳を握りしめながら言った。
「それだけじゃあねぇぞ……俺ぁ林間合宿でなぁ、緑谷にヒビ入れられてから考えたんだ!より強く硬く鍛えるにはってなぁ!!わざわざ刀匠の鍛冶場に頭下げて!身体を打ち鍛えてもらったのよぉ!!」
右脇腹を指差し、小さい傷を見せつける鉄哲。この少年もまた、緑谷と関わり更に向こうへと歩み始めた。
『自覚しろ!!お前は誰よりも強い力を秘めていると!!』
何故、今更になって昔の父を思い出すのか……。
『呆れた……本気で戦うんじゃあ無いの?』
本気で戦った、そして勝てた、お前に……。轟は鉄哲の打撃に意識を奪われそうになる中で、過去をいくつも思い出す。
『蒼い炎の出し方?』
『はい……教えてくれませんか、久さん』
期末試験の後、林間合宿前……I・アイランドで轟焦凍は一人の男に頭を下げていた。彼は、ヒーローではない『芸術家』であった……。
緑谷久……緑谷出久の父親であり、I・アイランドにて働く、ヒーロースーツやガジェットのデザイナーである。
そんな彼の個性は『火炎放射』だった。息子には継承されなかったその炎は、自身の炎……いや、父親である
エンデヴァーすらも超える温度の『蒼炎』をも吐けるという、何故ヒーローになってないのかわからない、強い個性の持ち主であった。
I・アイランド事変の後、観光を皆が楽しむ中……轟は一人、緑谷久の工房に訪ねていたのであった。父を憎み封印していた炎を、さらに強くできないかと師事する為に。
轟は、I・アイランド事件でヒーローですらない彼が、息子である緑谷出久の為に単身テロリストからマシンガンまで奪い、コントロールを奪われた警備ロボを焼き溶かす蒼炎を見て、お願いしに来たのであった。
『困ったな……それはできないよ』
わざわざ訪ねて来て悪いがと、久は困った顔で教えられないと頭を下げた。
『どうしてですか……』
『いやだって……そもそもキミと僕の炎の出力方法は違うからさ?』
それは何故?という轟の問いに、決してキミをいじめたりとか、気に食わないから教えないのではないと、久は諭す。
そもそも、炎の出し方が互いに違うから無理なのだと真っ当な理由からであった。
轟焦凍の炎はそもそも、体質からしてそのまま炎を放てる身体を有しているという、そういう身体なのだ。
対して久の『火炎放射』は『燃料』に着火して火を吹くという仕組みで炎を吐いている。その燃料は『酒やアルコール』で『アルコール度数』によって燃料の質が変わり、炎の温度も変わるのだ。
『私が蒼炎を吐けるのは、純度の高いアルコールが質のいい燃料に変わるからで、これは鍛えて温度が上がったわけじゃ無い……アルハラからの個性事故で偶然見つかったんだ……』
『アルハラって……』
『上司にスピリタス……まぁ度数高い酒を無理矢理ね、それで回避行動で火を吐いて焼いてしまったんだ……今も上司は包帯に包まれて管に繋がってるよ』
嫌な上司から無理矢理飲まされた酒で判明した個性の詳細……轟はしまったとすぐに頭を下げた。
『すいません、そんな事も知らずに……』
『言っても無いのに謝る事は無いよ……もしかして……父親には聞きたく無いって感じかな?』
轟の謝罪に久は事故だから謝る必要無いと、頭を上げさせた。そして、自身の個性を伸ばすなら父親を頼るのが良かろうものの、赤の他人の自分を尋ねた理由は、やはり家族間の問題かと問う。
轟は……体育祭で緑谷に呪縛を解いて貰ったが、それでもまだ高校生の多感な時期で、積み重なった過去があった。職場体験でエンデヴァーの事務所を指名して活動したが、まだ炎の操作の極意を尋ねる気にはなれなかったのである。
『……色々あったんで、そうしなきゃならないとは思うんすけど……』
『親子というのは、難しいね……』
久は轟に、仲直りしろだのとは言わなかった。家族問題の因縁に、他所様が踏み込むのはお門違いだと理解しているから。しかし、自分の子供の友達が、悩みに悩みどうにか進みたくて、自身を頼って来た気持ちを久は無碍にできなかった。
自分はヒーローでは無い、かと言って自身の『宴会芸』程度の技を彼に教えても意味などないかも知れない……余計な事かも知れないと考えた久だったが、手土産にはなるかと椅子から立ち上がるや、工房の奥から酒瓶を握りしめて轟の元に近づいた。
『キミには余計で、無意味かも知れないけど……頼られたから教えるよ、僕の火の吹き方を』
『いいんですか……』
『ついておいで、デイヴに場所を借りる』
それは、たった一日の師弟関係……本来なら息子に教えたかった火の吹き方、個性が受け継がれなかった故にできなかった『親子の交流』を、久は轟焦凍と行ったのだった。