【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「ねー聞いた?緑谷、捕まったんだって?」
「昨日のヘドロのやつの件だろ?いやー助かるわ、遂にあいつ殺しちまったとか聞いたけど」
「本当助かったわー、あんなヴィラン因子さっさと死刑にしちまえばいいのさ」
「学校に平和が訪れて良かったよ、本当……」
緑谷出久がオールマイトに助けられた翌日……緑谷出久は警察に捕まった。その事実は即、折寺中学校に響き渡った。
空席になった彼の席を見て、それぞれ雑言を吐き散らすクラスメイト達の中、ただ1人金髪の少年だけは何も言わずに空席の椅子を見つめていた。
ーー前日ーー
「あああくそっ!あのヴィラン幹部候補生!!」
街中にて苛立ちを空き缶にぶつける少年が居た。彼は『かっちゃん』こと爆豪勝己、緑谷出久の幼馴染でクラスメイトである。そして、つい先程教室の大惨事の清掃を脅されて押し付けられた者であった。
「ダセェ!クソダセェじゃねぇか俺はぁ!ああ!?」
爆豪は思い出す、また自分は脊髄をぶっこ抜かれて殺されて、また慈悲をかけられ戻されて蘇生させられた……しかも緑谷の脅しの笑みに屈してしまったのだ。
恐らく、緑谷出久の個性『脊髄ぶっこ抜き』を彼は、この世で一番その身に受けた被害者であった。最初に緑谷を『ヴィランの子』といじったのも彼であり、そして緑谷が脊髄を初めてぶっこ抜いた相手でもある。
それから度々、衝突の度にぶっこ抜かれて分からされた結果……頭に手を置かれただけで自尊心も何もかも捨てて屈してしまう様になってしまった。
「こんな無様な姿で……オールマイト超えなんてできるかよ!くそっ、くそっ!」
彼もまた、オールマイトというヒーローに憧れた一人であった。故に怒る、自分の無様な姿に、悪に……ヴィランに屈して脅されて命ぜられ動いている様に。
『もう一回、行っとく?』
「ーーーー!!」
だが思い出してしまう、刻まれてしまっている、あの冷たい眼差しと笑みはヒーローでは無い、無慈悲で冷徹な死への一幕、そして想像を絶する痛みに叫ぶ自分と、電源のように消える意識と景色が、爆豪から緑谷への反抗心など奪ってしまった。
「クソっーー」
震え出す体の情け無い事、また目についたペットボトルを蹴り飛ばし、爆豪は考える。あのヴィラン幹部候補生を倒す算段を、そもそもビビるのがいけないだの、考えていた矢先ーー。
『いい個性の、隠れミノーー』
爆豪の身体に流体が覆い被さった。
ーーー
緑谷出久、帰宅せず学校への道を戻る。助けて貰ったオールマイトの言葉を脳内で繰り返しながら。
『個性は如何なるものでも、その人の意識と使い方で正義にも悪にもなる……』
個性の使い方を間違えてはならない、分かっているし、理解もしている筈。オールマイトの姿に憧れて、個性も現れていつか自分もと思いながら今日まで生きて来て……今の自分を省みる。
「確かに、もう立派なヴィラン幹部候補生だな、僕は」
分かってもらおうと必死だった、やりかえしもしたが自分からは決して手を出さなかった、明らかに罵倒や敵意、悪意があって初めて力を使っている。そうしたらどうだ……校内に逆らう奴は、かっちゃん以外居なくなった。
「まずは……謝罪から、か」
皆に謝ろう、今日の事も今までも、それで許しちゃくれないだろうが、まずはそこからだと歩いていれば、ふといつも通りかかる田等院商店街が騒がしかった。
「今日はやけに騒ぎが多いーーって……」
そこでは、先程自分を襲ったヘドロのヴィランが暴れ回っていた。何故だ、オールマイトが捕縛した筈だと思い返す中、自分が質問の為に飛び去る彼に捕まった時の事を思い出す。
あの時か!?あの時に、しがみついた拍子にペットボトルが落ちたんだと出久は気付く。
ヒーロー達は何している、中学生が人質に……手が出せないのか!?様々な焦燥が入り混じった声を聞いた出久も、少し見てから学校に帰ろうと雑踏を掻き分け……見てしまった
ヘドロのヴィラン、それが纏わりつく中学生はーー。
「かっちゃん!!」
その刹那には、出久は民衆の壁を越えてヘドロヴィランに走り出していた。
「馬鹿やろーー!!止まれ、止まれ!!」
ヒーローの誰かが叫んでいる!それでも出てしまった!もう止まれない!!どうする、どうする!?出久は、通学カバンを爆豪を取り込まんとするヘドロヴィランに投げつけた。
『ぬっ!?』
「て、テメェクソヴィラン!?なんでお前がぁ!?」
「五月蝿い!!黙ってて!!すぐ助ける!!」
とは言ったが……先程自分が被害にあってしまったのは知っている。自分の個性で、このヴィランを引き剥がすなんて無理だ……だったら諦めるか?そんな事はオールマイトもしない!!
ヘドロを掻き分け、必死に引き剥がしながら、出久は考えた。かっちゃんを引っ張り出す?無理だ!自分のぶっこ抜きは個性であって決して馬鹿力では無い!自分に纏わりつかせる?本末転倒だ!!
「もう少しなんだからぁ……邪魔すんなあああ!!」
「無駄死にだ、自殺志願者かよ!!」
駄目なのか、所詮自分はヴィラン能力でしかない人間なのか?考えろ、考えろ!じゃなきゃあ本当にやられる名も無きヴィランその1だと……その時……ヘドロヴィランと『目』があった。
「そこだぁあああ!!」
『ぎぃいい!?』
そうだ、こいつ目があるのか、こんなに大きい目が!目には『視神経』がある!視神経は『脳』に繋がり、脳は即ち『脊髄』に至る!!ならば掴める、ぶっこ抜ける!いや『ぶっこ抜けるのだと信じる!!』
出久に笑みが浮かび、ヘドロヴィランの双眸が、その笑みを捉えて戦慄した。なんて冷ややかで邪悪、そして無慈悲な眼差しに、ヘドロヴィランの動きは止まる!
「うぁあああああーーー!」
『や、やめろ!やめ、イギィいい!?』
ヘドロの中から聞こえる、ブチブチと引きちぎれる音と、苦悶の声、そしてーー。
「あぎゃあああああーーー!!」
断末魔の声が上がる、くり抜かれた両目について行くように、神経に繋がった脳髄と、元はそんな形だったのか分からない脊髄が引き抜かれて、ヘドロヴィランは形を無くした。