【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「なん、だよこれぇ!!止まれ!!止まれぇええ!!」
生爪を剥がされた様な激痛が続き、伸びた黒い帯たちが周囲の障害物や配管を切り刻む。必死に何とか押さえ込もうと、左の拳で自らの右手を殴る自傷行為を行おうが、その現象は止まらない!
此処に来て、何でと緑谷は焦りと苛立ち、何より悲しみが湧き上がってきた。
オールマイトに、悪に堕ちる淵から引き上げられた。雄英に来て学んで、ようやく自分の個性が、人を殺さず人を救える個性に変わろうしてきた。
それなのに、また……こんな事になったらそれこそ、物間が言った通りになってしまうじゃないかと、緑谷は必死に周囲を切り刻む暴走した個性を止めようとしたがーー。
「うぁあああああーー!?」
まるで、別の意思を持っているかの様に指から現れた帯状の物体が緑谷を、貯水タンクに叩きつける!さらにそのまま別の場所に振り回されて叩きつけられ、肉体が軋みを上げ始めた。
「み、緑谷!?」
そこに丁度、心操が隠れていたらしい。アクシデントに目を見開き声をかけたのを見て、緑谷は声を上げた。
「し、んそう……くん!離れてぇ!!」
離れてと宣ったが、また黒の帯が暴れ出して緑谷は宙に投げ出された。意識が遠のく最中……緑谷は声を聞いた。
『心配しなくていい、さぁ身を委ねて、僕が居る……さぁ、力を抜くんだ』
聞き覚えのある声だった、よりによって何とも心地いい声だ。しかし、それに従ってはならないと緑谷は、本能と直感で理解して必死に意識を保つ。
「出久くん!!」
そんな緑谷に、呼びかけて現れたのは……麗日お茶子だった。宙を舞う緑谷の元に駆けつけて、その身体を押さえ込もうと両腕両足全てを使い抱きしめたのだった。
「出久くん……落ち……ついてぇ!!」
抱きしめて分かる、なんて力だろう。どれだけ鍛えたのか、自分で押さえつけるのは無理だと。それでもと、必死に麗日はしがみついた。
「うら……らかサ……ン……離れてえ……!!」
緑谷は、離れろと薄れる意識の中で彼女に言う。傷をつけてしまう、絶対ひどい事になる、その前に離れてくれと涙を流して訴えた。
「離れる……もんかぁ……落ち着いて!落ち着けぇ!!」
どうすれば止まるか分からない、どうしたらいいか分からない。それでも……彼が涙を流して必死に耐えているのに、離れてなるものかと麗日は緑谷を止める手段を必死に考えた。
初めてヒーロー活動を目にした時……周りの人々の表情に目が行った。人の、喜ぶ顔が好きだった。
彼と出会って、そして助けられた時。その笑顔は……なんて儚くて、消えてしまいそうなんだと思った。
私はその笑顔を知っていた、疲れ果てた両親と同じ……無理をして頑張ってる人の笑顔。心からじゃない笑顔……本当はつらいのに、泣きたいのに、苦しいのに……それでも彼は私たちの前にいつも立って戦っていた。
身体を血に染めて、ボロボロになって、それでも立ち上がる。ヒーローは……無償の献身という原理主義があって、それを体現するかのように。
けど知っている……彼は『泣き虫』だって私は知っている。理解してくれる人も、そばにいてくれる人も居ない、だから……まるで自分を人身御供にしてようやく理解を得ないといけなくなっていたのだと。
私は思った……。
ヒーローが辛い時……誰がヒーローを守ってあげられるのだろう、と。
「あぁあ!!ああぁああ!!うぁああああああああ!!」
麗日は見た、緑谷のその肉体が……黒く、何か生き物めいた触手に包まれていく様を!!そしてそれが、自らにも纏わりつき始めたのを!!
それでもと、麗日は必死に力を込めて離れてなるものかと押さえ込む中、視界の一瞬の景色に居た人物に叫んだ!!
「心操くん!洗脳を!!出久くんを……止めてぇぇ!!」
その姿を、心操人使はただ見上げるしかできなかった。突如緑谷の身体に起こった異変、あたりの障害物から配管まで切り刻む黒の帯状の物体があちこちに伸びて止まりもしない。
それを必死に止めようとする麗日から、洗脳を使い止めてほしいという唐突な頼みに、どうすればと呆けそうになった。
自分は一度、緑谷に殺された。無様に、1秒と掛からず。出会った時は、なぜこんな個性でヒーロー科に入れたんだと妬んだ。
そして、その個性でもなってみせると頑張って来たと、生まれ抱えた個性で生きていくしかないと皆の前で叫んで、その在り方に……妬みが恥ずかしく思えた。
だから、自分は頑張れた。心操はペルソナコードを外して、必死に抗う緑谷向けて声を上げる。
「緑谷ぁぁ!!」
お前がそう言ってくれたから、だから俺はここまで来たんだと想いを込めて、そのためにここまで来たんだと心操は腹から叫んだ。
「俺と……戦えぇえ!!」
なのに、個性暴走なんかにいいようにされてんじゃあねぇよ!!さっさと戻ってこい!!
心操の叫びを聞いた瞬間ーー緑谷は刹那の間、意識が吹き飛ぶと……黒の帯は全て静止して緑谷の指に戻って行った。