【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
縄に繋ぎ、無重力で浮かせた物間を引っ張り麗日は自陣の牢屋に移送する。しかし……妙に静かだ。誰も助けに来ないし、捕まった物間本人も煽ったり気を引くように話に来ないなと、難なく牢屋に辿り着いてしまった麗日は、物間をそのまま牢屋に入れた。
「解除」
物間がそのまま牢屋の床に座る様に着地した。顔を見せない項垂れたまま……一体、彼は何をしたのだろうかと大人しい物間を一瞥したが、すぐ合流しなければと麗日は立ち去ろうとした。
「どうして」
その間際に、物間がやっと声を上げた。
「どうしてキミたちは……あんな化け物と居れるのさ……」
ズキリと、胸が痛んだ。緑谷の事をまだ物間は言うのかと、麗日は厳しい顔で振り返って物間を見つめた。
「首を引っこ抜いて殺せるんだぞ……どう考えてもヒーローになれやしない、今だって変な力が出てきたじゃないか……何でキミたちはーー」
「同じでしょ、誰だって」
苛立ちを飲み込みながら、けど我慢はできなくて、麗日は言い返した。
「誰だって、個性は……変に使ったら人を殺してしまう……私だって、浮かせて高いとこで解除したら落下死させてしまう……芦戸さんの酸も、峰田くんのもぎもぎも……誰だって間違えたら人を殺しかねないんよ……」
『個性』は、それだけ恐ろしい力だ。ふとした手の狂いが、邪な考えが、取り返しのつかない事になる。誰だって、人を殺せてしまう可能性がある……。
「だから、学ぶんでしょ……ここで、ヒーロー科で……間違って使わないように、その個性を理解して暴走しないように……物間くん、この試合で緑谷くんは……暴走してしもうたけど、物間くんの首を引き抜こうとした?」
「……………」
思い返せば、何も言い返せない。こちらは家族すらも罵倒して怒らせ、暴走の引き金を引いた。原因は自分だと重々承知している、そして暴走の最中彼が言った事を思い出す。
『物間くん逃げて』
その気があれば、暴走した力をこちらに向けて……とも考えられただろう。それよりも、両親を罵倒して許せない筈の相手を逃す為暴走に抗った。
そして先程もだ……殴るだけで済まされない筈が『寸止め』に救われたのだ。
殺すしか能が無い?何を馬鹿な……今自分は、傷一つも無く戦意を砕かれて敗北して捕まっているじゃないかと、物間はようやく理解する。
完全敗北、その四文字が物間の頭に反響した。
「もう行くね……あと、終わったら緑谷くんに謝って……」
これ以上はもう言わない、せめて終わったら謝罪はして欲しいとだけ言い残し、麗日は皆が戦う戦線に戻った。
「収まった……みたいですね」
その戦線近くに、ブラドキング、そして相澤、オールマイトの教師陣が到達し、邪魔にならない場所から様子を伺っていた。緑谷の暴走が止まったのを皮切りに、両陣営が作戦もくそもない正面衝突となり、激しくぶつかり合うのを3人は見て、とりあえずどうするかとブラドは二人に尋ねた。
「暴走を考えたら止めるべきですが、その様子は見えないが……」
先程の惨事を考えたら中止にすべだろう。オールマイトは心配でならないが、相澤はブラドに言った。
「続行します……」
「相澤くん……」
「あれが……緑谷の暴走が個性由来の物なら、俺の抹消で止めれますから……何より……」
相澤は、この試合をまだ見届けねばならないと、視線の先でいよいよぶつかり合う二人を見て続行を決めたのであった。
様々な物体が飛び交う最中、二人はいよいよ相対する。間合いは互いに遠間だった、先に動いたのが心操であった、捕縛布を操りそれを緑谷の左足首に絡ませたのを見るや、緑谷は笑って右手を振り抜いた。
ヒーロースーツの袖から伸びて来て、心操の左腕に絡みついたのは……鎖!緑谷出久が好んで使う『鎖分銅』である!
布と鎖、材質は違えど紐状の得物を操る物同士、火花が散った。
ジリジリと、互いに力を込めて、タイミングや呼吸を読もうと、摺り足で円を描く様に互いに横へ動いて……最初に仕掛けたのは心操だった!
緑谷の近接戦の恐ろしさを知りながら!死地へ飛び込む突貫!それに対して緑谷も間合いを詰めて、鎖で捉えた心操の左腕を引っ張り体勢を崩しにかかる!
身体が崩れながらも心操はスライディングして、その崩しすら利用して緑谷の横を抜けながら、捕縛布を引き込み緑谷に膝を着かせ、さらに首へ巻き付けにかかる!
それを緑谷はわざと倒れ首に巻かれそうになった布から避け、転がりながら左足首に絡まる捕縛布を自らに引き込み、間合いに入った心操の顔を踏み抜く様な蹴りを放つ!
緑谷の蹴りがペルソナコードに掠って外れた、が!構わず心操が緑谷の蹴りで伸び切った足をがっしり脇に掴み、足も絡ませて捻り上げにかかる!
まさかのヒールホールドに緑谷は、心操が捻る方向に自らも転がってついていきながら右足で心操を蹴って剥がし、二人はまた鎖と布に繋がれたまま、間合いを仕切り直すのだった。