【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
さて、これにて全ての試合が終わった。結果はA組が3勝1敗1無効試合という形で勝利した。試合後の反省として緑谷達も物間達も並び、先生方から講評が行われるのだがーー。
「えー……色々言う事があるがまず……緑谷、何なんだ?お前?」
端的に指摘が相澤先生よりされる。聞かれるよなと、緑谷は両手の指を眺めながら、どう説明したものかと考えた。
「すごく黒い物が顕現していたが……大丈夫なのか?」
「暴走していたか?技名は?身体の異常は無いか?」
厨二病の常闇、黒色ですらその暴走だの新しい技だのを見ても、流石に心配が勝っていた。二人とも大丈夫なのかと尋ねた。
「引き寄せの力が、俺たちの目にみえる様になった……は流石に違うか?」
「ああでもあり得ない話じゃないかもな、そもそも緑谷の脊髄抜きから引き寄せになって……首を引っこ抜く手が具現化したとかあり得るかもしれない」
切島や砂藤は、仮定の話しだが個性が肉眼で見えるようになったのでは?とまで言い出した。
緑谷の……個性の成長は著しい。ただ脊髄を引き抜き殺すだけだった個性は……体育祭で人を近くに引き寄せるまでになった。やがて一学期末では、引き抜いた脊髄を武器化という力を見せ、仮免前には引っ張る方向を自由自在にしてみせた。
そして何より……皆が見ている。『変身した姿』を、九州での脳無事件を皆が見ている。A組からすれば麻痺していたのだ、我らが総大将は常識はずれをやってのける存在だと。
「……何を馬鹿な、皆おかしいんじゃないか?」
憔悴しきった物間がそう呟いて、緑谷を歯を食いしばりながら睨みつけた。空気が重くなっていく……ああこれはと、緑谷は懐かしくも嫌な、心の軋む感覚が蘇って来た。
この眼差しはそうだ、よく知ってる目だ……慣れきってしまって、久々だからか懐かしささえ感じる。
「引き寄せの範疇に無いじゃないか!テレビで見せた変身も!今の訳の分からない黒い爪なんて!皆、皆!見ないようにしてるだけじゃないか!気付いたらどうだ!もう分かってるだろ!いくつもの個性を持ってるんだ緑谷は!もうこいつはーー」
「おい物間!!」
その先を、言ったらもう終わりだぞと鉄哲が止めに入ったが、それよりも先に物間寧人は言い切った。
「脳無と同じ化け物じゃないか!!」
改人脳無……AFOが作り出した改造人間。いくつもの個性を宿しながら、意思無く命じられた目標をこなす化け物。最早それと同じ化け物だと物間は緑谷を指差し言い切って、周囲が静かになる中鉄哲だけは止まらなかった。
「物間お前……いくらA組憎し、負けたのが悔しいからって、ヒーローになる人間が言っていい事と悪い事くらいは分別つけろやぁあ!!」
「待て!鉄哲!!」
鉄哲が鋼鉄化し、物間に殴りかかる。それをブラド先生も止めにかかったが、それより早く物間に向けて拳が振り下ろされた。
鈍い打撃音が鳴り響いた……鉄哲は目を疑った。物間を殴ったはずの拳が、緑谷の顔面にめり込んでいたのだ。だくだくと、鼻血を流す緑谷、鉄哲は驚いて拳をすぐ緑谷からどけた。
鼻が捻じ曲がって折れたのが分かる。緑谷は、右手で慣れているとばかりに鼻の骨を音を鳴らして整形し血を拭い、背後に居る物間に振り向いた。
物間は、ひっ!と怯えて声をあげて後ずさる。緑谷は、物間に対して口を開いた。
「物間くん……キミは……まともだよ、うん」
「え……」
緑谷は、物間の暴言に対して悲哀な眼差しで語りかけた。
「そう思って仕方ないからさ、うん、そもそも始まりから人殺しの個性だ……さらに今日、また変な個性が出て来て皆に迷惑をかけた……麗日さんや心操くんが居なかったらどうなってた事か……キミが僕を化け物よばわりするのは……仕方ないよね」
緑谷は、物間の暴言を受け入れた。言われて仕方がない事が起こったし、積み重ねすらあるから。その意見はまともであり、決して否定できないと。その暴走で対抗戦は評価できない、勝敗がついただけの内容が無い物になってしまった。
「けど……僕の両親を煽りに使った事、化け物を産んだって言ったことだけは、謝って……悪いのは……生まれて来た僕だからさ」
自分を悪く言う事は構わない、だが両親を馬鹿にした事だけは謝罪をしてくれと、真っ直ぐ緑谷は物間を見て、物間は呆然としながらも、すぐに気を取り戻し深々と頭を下げた。
「ごめんなさい……緑谷くん」
「ん、許した、じゃあ……すいません、鼻折れたんで医務室行ってきます」
それでこの話は終わり、と許した緑谷は先生方に鼻が折れたからと医務室へ向かうと言ってから、鉄哲にナイスパンチと最後に伝えて一人歩き出した。
「お、おい緑谷、付き添いはーー」
上鳴が付き添いすると言い掛けた瞬間、その肩を誰かが掴んだ。爆豪であった、爆豪は眉間に皺を寄せて上鳴に、分かるよな?とまるで問いかけるような眼差しを見せた。
一人にさせてやれ、という事だろう。医務室に向かう緑谷の背中を見た上鳴は、その普段から想像できない悲しみに染まって小さくなった背中に、誰か一緒に行かなきゃダメじゃないかと心配になった。
「緑谷少年、私が付き添うよ……大丈夫かい?」
一人にしなきゃならなくても、この人は絶対付き添うだろう。オールマイトは緑谷の背中に駆け寄り、優しく肩を叩いて声を掛け、共に医務室へ向かった。
「さて……アクシデントはあったが公評始めるぞ」
この重苦しい空気、中断したいが授業は授業だ、ブラドはそれでもと生徒達に声をかけて最終戦の公評に移った。