【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「はい、終わったよ?ペッツいるかい?」
「ありがとうございます……」
医務室にてリカバリーガールの治癒を受け、鼻骨骨折を治した緑谷は、彼女からペッツを一粒貰って口に放り込み早速噛み砕いた。
今になって……昔は言われ慣れてた言葉が自身を締め付ける。昔なら問答無用で脊髄ぶっこ抜いてたが、それをしなかったのは緑谷自身の精神が少しは成長したからかもしれない。だからこそ、抑える事が出来たからこそ、溜め込んでしまっている事実が今、緑谷にはあった。
「オールマイト……あの、因子の話……言うべきですかね……」
付き添いで来てくれたオールマイトに、緑谷は尋ねた。自身の個性の変質にはAFO因子が関わっている、それをもう皆に言っておくべきかと尋ねた。
緑谷の相談に、オールマイトも悩んだ。言うべきか、言わざるべきかと……そもそも、緑谷の個性を受け入れてくれたA組だ、仮にこの話を改めてしても受け入れてくれるのはオールマイトも大丈夫だとは思う。
だが『学校全体』はどうだ?と、オールマイトは考えてしまった。
職員会議でも挙がった内通者の件がある。もしも、ここで皆に暴露して、それが他のクラスにまで伝わったら?内通者の耳に入ったら?
ただでさえ、ヴィラン連合に幾度と学内行事を襲撃されたなかで『AFO因子を持った生徒』なんて出て来たら、それこそ緑谷出久を『内通者』の身代わりに仕立てあげる事もできるとオールマイトは思いついてしまう。
「……緑谷少年、すまないがまだ、やめておいた方がいい、校長にかけあってもいいかい?」
「分かりました……じゃあその……寮に戻ります」
皆に話すのは待ってくれ、そう言われた緑谷は立ち上がり、そのまま医務室から立ち去った。オールマイトは寮まで送ろうとしたが、今度は付いていけないくらいに緑谷の背中が煤けていたので、伸ばそうとした手が止まってしまうのであった。
「リカバリーガール……私は……調べるべきでは無かったのでしょうか……」
獄中のAFOに唆され、血液を調べて知ってしまった事実が今になって重くのしかかる。知らなければよかったのかと聞かれたリカバリーガールは、オールマイトに答えた。
「いつかどこかで向かい合う事になったさね……私らは、しっかり見守ってやるしかできないよ」
たとえ調べなかったとしても、どこか先延ばして知ることになっただろう。だから折れないように、間違えないように私たちが居るのだと、リカバリーガールはオールマイトをそう諭した。
「ただいーー……」
「緑谷!すまねぇ!!」
「うわぁあ!?」
寮に帰ってロビーに入った緑谷を出迎えたのは、鉄哲の地面につきそうな勢いある謝罪だった。流石に驚く、そもそも何故彼がとリビングスペースを見たら、B組の面々が何人か訪ねて来ていた。そこに、鉄哲の謝罪を聞きつけたらしい飯田が緑谷を出迎えた。
「おお、帰ったか緑谷くん、鼻骨は大丈夫かい?」
「ああ、うん、治してもらったよ飯田くん……と言うか、何故B組が?」
「今日の合同訓練の反省と交流を兼ねて何人か来てるんだ」
ああそれで、と緑谷は納得しながらも鉄哲がそこからさらに続けた。
「うちの物間があんな事言っちまって、申し訳ねぇ!俺も殴っちまったし……」
「いやいや、あれは済んだ話だからさ……その物間くんは?」
あれはあの場で済んだ事、謝罪なんて必要なかろうにと緑谷は鉄哲を諭す。その物間は流石に来てないが、一応あの後どうなったのかだけ尋ねた。
「あぁ物間な……一週間の謹慎になったよ」
「えーー」
「ブラド先生がな、流石に戦法でもラインを超えているし、最後の罵倒は看過できないってよ……」
鉄哲から語られた物間のその後に、緑谷は呆然とした。確かに、ライン超えはそうだがあの場で自分は許した、なのに何故と驚く様に緑谷は尋ね返した。
「いや……僕は許したし、謝罪も受け取ったから……え?何で……」
「そうでもしねぇと、今後物間の居心地がキツくなるからだよ」
緑谷の呆然とした呟きに、轟が横から入って理由を説明した。
「轟くん……」
その表情は、少し眉間に皺を寄せて憤りが緑谷には見てとれた。
「緑谷、例えばこれが緑谷と物間の個人間の話だったら、お前が許せば終わっただろうが……授業中の、クラスメイトが見ている前で、公然とお前と両親を侮辱して、さらには化け物呼ばわりだ……いくら何でもヒーローを目指す人間が、そんな事をしていいはずも無いだろ」
個人間での謝罪を受け取り許すのは分かる。が、今回は場所と状況が、緑谷の許しがあろうと決して許されないのだと轟は語る。
「ここでお前が許しても、A組もB組も全員納得できるかと言われてできるか?俺は……正直できねぇ、一週間謹慎は軽いと思ってるくらいだ」
「まぁなんだ、物間の戦法なのは俺らも十分理解してるけどよ、やっぱりいい気分にはならないわけだ……禊の謹慎ってやつだ、あれを何も咎め無しで受け入れる事はできねぇし、物間もお前に庇われたから反省すると思うぜ」
見せしめだと思うが、そうでもしなければあの場の全員が納得も出来ないし、物間を許す事はできないだろう。轟はあれだけして謹慎一週間は軽いと、鉄哲も物間の戦い方は理解を示すが流石に今回は擁護はできないし、反省してほしいと頷いた。
「そっか……うん、わかった、ありがとう二人とも……」
「あ、おい緑谷……」
「ごめん、今日は先に寝るよ……」
緑谷は逃げる様に、先に寝るとだけ伝えて部屋に戻るのだった。
暗い部屋でただ一人……緑谷はベッドの縁に背中を預け体操坐りになっていた。もうどれだけ時間が経ったか分からない、夕食にも降りずひたすらこのままでただ押し黙り、座っている。
緑谷はひたすらに、自己嫌悪で潰されそうになっていた。ただ普通に、戦闘訓練になる筈だった。確かに物間の暴言に対して怒りはあったが、それでもアクシデントで訓練をめちゃくちゃにしたのは自分で、化け物呼ばわりされてもしかたなかった。
だが、久々に……堪えた。真正面から指をさされて言われたのは、いつ以来か……緑谷の忘れられない過去を思い出させるには十分だった。
『この、化け物!!』
『首輪をしといて外に出さないか、殺処分しろ!!』
『人間じゃ無い!!怪物が!!』
『うちの子に関わらないで!!』
指をさして、口々に吐き散らして来た大人たち。今でもしっかりその目を、嘲りを覚えている。
『ゆ、許してくれ!ぎゃあああ!?』
『ごめんなさいごめんなさい!!』
『ひぃい!!す、すいませんでしたぁ!』
『み、緑谷くん?お願いだから、や、やめていただけませんでしょうか?』
その度、やり返して屈服させて来た自分も居る。そうするしか、分かってもらえなかったから……。
少しはマシになれたかと思った、今日も何とか抑え付けて、物間への反撃を寸止めできた。けれども彼は化け物と緑谷を恐怖から罵った。
いつになったら……いつになれば……自分は『まとも』になれるのだろうか。緑谷は自身に問いかけた。
『まとも?なれないよ』
『だってお前は、一皮剥いたら醜い化け物だろ』
自答が返って来る、決してお前はまともになれやしない。そもそも生まれた時からそうだっただろうと。
『過去を思い出しなよ、いい気分だったじゃないか?個性を好きに使って、気に入らない奴を壊して、学校の支配者を気取ってたじゃないか』
『誰もが自分に恐怖して道を開けて、廊下の真ん中を歩いて気分を良くしてたじゃあないか、先生すらも頭を下げて!』
『たまに現れる反抗する奴を、見せしめに壊して恐怖を広めていた!暴力での支配が心地よかったんだろ?現に弱いやつから感謝されてスカッとしてたもんなぁ!?』
ああ、何も言えない……醜い部分が湧き出て責め立てる。違うと言えないから、ただ聞き入るしかできない、だって全てが事実であるが故に。
『オールマイトも後悔してるだろうぜ、こんな化け物をヒーローにしようなんて考えた事を……期待に応えるなんてできやしないのに……』
『クラスメイトはお前を今も内心、化け物扱いしてるだろうさ!!』
『先生達も思ってるぜ、こんな奴を雄英に入れるんじゃあ無かったとさ?……』
「あ……あう……うう……」
涙が、両目から流れ出して、緑谷は嗚咽を必死に噛み締めて、それでも漏れ出してしまった。聞かれない様に、決して聞こえない様に噛み締めて、自責に追い込まれる緑谷……その瞬間だった。
『緑谷ぁー、オイラだけど……』
ノックが鳴り響き、扉の先から峰田の呼びかけが聞こえた。