【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
涙を拭った緑谷は、部屋の電気をつけてからドアを開けた。斜め下に紫の球体があり、こちらを見上げている。
「峰田くん……ど、どうしたのこんな
夜に」
何とか繕おうとした緑谷に、峰田は真顔から笑みを浮かべて、両手一杯のスナック菓子やら何やらを見せて言った。
「夜更かししようぜ!断るの無しな!」
「ええっ……」
もう寝たいんだが……そんな迷惑は知らんと邪魔するぜーと言いながら峰田は緑谷の部屋に入った。
「ほらほら色々持って来たからさ、今日の事も愚痴りながら夜更かししようぜ〜?緑谷」
「いや、あの、僕もう寝ようと……」
「はいこれ、エナドリ」
テーブルに菓子を広げて、さらにエナジードリンクのプルタブを開けて緑谷に押し付ける様に渡す。開けられた以上、突き返すわけにもいかず、緑谷は床に座してテーブルを挟み峰田と向かい合った。
「今日は寝かさねーぞ緑谷、夜更かしだからな」
「これ一本だけだよ……」
「そう言うなよな、ほら……今日色々あったから吐き散らしてこうぜ」
夜更かしだと宣う峰田に、緑谷はエナドリ1本だけだと言うが、まるで絡み酒のように峰田は許さなかった。まぁ黙ってたら帰るだろうと、渡されたエナドリ缶を少し傾けて煽る緑谷に、峰田が言う。
「にしてもさー、今日の物間……本当にあり得ないよな、緑谷どころか緑谷の両親まで馬鹿にするし、負けた腹いせに緑谷の事を化け物呼ばわりするしよ……ヒーローの名門の雄英受かっといてあれは無いよな」
「まぁ……うん、ちょっとそこまで言って来るとはね、思ってなかったから」
実際緑谷は、あの時ブチギレていたが、個性暴走で一気に冷や水をかけられたようになり、それどころじゃなくなっていた。だからこそ、あの時物間への反撃を寸止めできたのだと思っている。不幸中の幸いというやつだった。
「俺、すげーなって思ったのがさ、後で録画してた映像見たんだけど、緑谷が物間に一撃殴るギリギリで止めて戦意喪失させてたんだよなぁ……緑谷、よく耐えたよな、普通殴ってたじゃん」
「それは……その……」
「正直、ちょい前だったら爆豪みたく脊髄抜くか、ケツ◯ナ破壊してたのに……あの時何かあったのか?」
一学期時点で同じ事があったら、こっちも反省文か謹慎の所業を行っていただろうに、よく止まったなと褒める峰田に対し、緑谷は黙るつもりが話してしまった。
「……訓練だけどさ、あそこで殴ったら……また昔に逆戻りしてしまうって感じて……だから止まれたって感じ……かな」
「よく耐えたよなぁー……普通ならさ、訓練にかこつけて〜とか考えちまわない?」
「正直言うと……浮かんだ、それも……」
「あ、浮かんだのか、なら更に凄いな踏みとどまって……」
エナドリを傾けながらすげぇすげぇと緑谷を褒める峰田。緑谷からすれば、そんな事を浮かんだ時点で異常としか思えなかった。
「凄くも何ともないよ、結局頭の中では物間くんに……仕返しを考えてしまってるんだから」
それが頭に浮かんだ時点で、あり得ないだろうと緑谷は峰田の過剰な、ご機嫌取りじみた称賛を否定する。峰田はそのままスナック菓子を一つとって食べて、エナドリを飲んで緑谷に言った。
「緑谷はさ、ちょっと高潔に考え過ぎと思うんだよなぁ、おいら……」
「え……?」
「ヒーローだって人間だぜ?それくらい考えると思うよ、ヴィラン憎しで仕返ししたくて、復讐する為にヒーローになったみたいなヒーロー居るじゃん?」
峰田の言葉に緑谷は黙り、耳を傾けた。ヒーローにだって、負の感情があって当たり前だろうと。ヒーロー好きなオタクなのに、全員が全員高潔なヒーローと思っているのかと彼は言う。
「おいらだって何でヒーロー目指してるか言ったか?モテる為だぜ?それでこの日本一のヒーロー科の雄英受けて緑谷と一緒のクラスに居るんだから、俗物も俗物だよ」
「そうなんだ……」
「そもそも、爆豪に至っては今はマシだけど、根っこは俺様第一で捻じ曲がった糞の汚水煮込みみたいな性格で雄英にいるんだぜ?」
「こふっ!」
かっちゃんが聞いたらハウザーインパクト放ちそうな事を峰田は、居ないから遠慮なくぶちまける。まぁ事実だから否定しようが無いので緑谷は思わず吹き出してしまった。
「だからさ、そんな思い悩まなくていいと思うぜ?自分や親を馬鹿にされたら怒るし、それで手に力が入るのが普通なんだ、むしろあの場で怒らずに聞き流したら親から虐待でもされたくらい不仲か、人の心が無いとオイラは思う」
あの物間の暴言と挑発で怒らない方が異常だよと、峰田は一気にエナドリを傾けた。まるで大学生の宅飲みを気取るように、ぷはーと息を吐く。
あの怒りを、彼は普通と言ってくれるのか……緑谷はまだなみなみあるエナドリの缶をテーブルに置いて、峰田に尋ねてみた。
「仮にだけど」
「あん?」
「峰田くんは、僕が人間じゃない化け物だった……って聞いたらどうする?」
そう聞いた瞬間、峰田は目を細めて即座に答えた。
「どこが?」
「え?」
「だぁから、どこが化け物って聞いてんの緑谷」
「どこがって……」
どこが化け物なんだよと、言ってみろと峰田に詰められた緑谷は言葉に詰まった。訓練を台無しにした個性暴走を知っている同じチームだろうにと、峰田は個性である『もぎもぎ』が生える頭を指差しながら言う。
「おいらのもぎもぎみてぇに、変な器官ができたのか?例えば、チンコが5つになったとか」
「そうはなってないけど、いや……あの黒い爪とか」
個性暴走の件を例に出せば、峰田ははぁとため息を吐いて緑谷に言う。
「馬鹿馬鹿しい……緑谷は化け物じゃあねぇよ、ちょっとオイラ達より強いだけのクラスメイトってだけだろ?」
「……」
「プロ並みに強くてヴィランが恐れるけど、オイラとエロトーク付き合ってくれる友達、個性がどうとかさ……おいらもう、そんな事で緑谷をどうこう言わないよ……だって、USJで先生や蛙吹、オイラを助ける為に、血を被っても戦ってくれたのが緑谷だからさ……」
外見が人間のままで異形でもない癖に馬鹿馬鹿しいと、峰田は自分にとって緑谷出久はまともな人間であり、クラスメイトであり、恩人であり友達であると……真正面から言い切って見せた。
その言葉に、緑谷の胸のつかえも渦巻くようなドス黒い感情も一気に取り払われた。思わず笑みがこぼれた緑谷は、エナドリを一気に飲み干した。
「おー、いい飲みっぷり……で?お開きにする?」
1本だけと言ったが、飲み干したから夜更かし終了かと峰田に言われ、緑谷は自室の冷蔵庫を開き、買い置きの缶ジュースを2本取り出した。
「予定変更、朝まで付き合って」
「よーし!とことん付き合うぜ緑谷!何するよ、ゲームでもする?深夜アニメでも見るか!」
緑谷は峰田の言葉に心が落ち着き、切り替える事ができた。こうして、緑谷と峰田は夜更かしを決行し……二人揃って翌朝の授業へ大遅刻するのであった。