【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
合同戦闘訓練を終えて、いよいよ冬休みまで少しの一年A組。アクシデントはあったが、爆豪と轟は仮免再試験を無事合格し、晴れてA組全員が仮免持ちとなった。その再試験の帰り道、早速二人はヴィランを捕まえる活躍をして、インタビューを幾つものテレビ局から受けた……のだが。
「い、1時間もインタビューを受けて!!」
「爆豪まるまるカット!!画面見切れっぱなし!!」
「「だははははははははは!!」」
瀬呂と上鳴の笑い声がA組教室に響き渡る。轟と爆豪、受けたインタビュー全てが、放映の際に爆豪だけまるまるカットされていたのだ。
「使えやぁ……!!」
まるまるカットのインタビュー映像を見せられた爆豪は、歯軋りしながら絞り出すように呟いた。寮にインタビュアーが来ていて、その様子を他の面々も見ていたが、その様子は『カットは温情』と、口を揃えて言うくらいには酷いものだった。兎に角、轟の質問に対して苛立ち否定して叫んでいたのだ。
「ある意味……守ってくれたんやね」
「もう3本目のインタビューでしたのに……」
「仮免事件の高評価が台無し……」
あれを流していたら、雄英がさらにバッシングを受けていたのは目に見えていた。それをテレビ局側が配慮してくれたからこうなったのだろうと、麗日、八百万、耳郎が呟く。
「緑谷もインタビュー止められたんだよなぁ、勿体ない……」
インタビューと言えばと、笑いが飛ぶ中で峰田が緑谷に言う。博多の事件での活躍、つい最近までインタビューや取材に来ていたのがもう音沙汰が無くなり、今は轟と爆豪に向いている事を勿体なかったなと。
「いいよ別に……あの場で必要なのは、新たなナンバーワンのエンデヴァーが立つ姿だったんだからさ……僕は新聞の片隅で十分だよ」
あの瞬間、皆が望んでいたのは新たなナンバーワンのスタンディングだった。自分は部外者で、片隅に避けているべきだったのだと、わざわざ露出する必要も無いと緑谷は、スマホのニュース欄を眺めながら峰田に言うのであった。
「それはそうと……泥花市の被害だよ、悲惨極まりない」
ニュース欄から記事を眺めて、リンクのニュース番組動画を再生しながら緑谷は呟いた。
それは、合同訓練から二日後の事……泥花市という地方の街で、ヴィラン達が暴れ回り凄まじい被害規模の災害が起こった。その規模は神野を超える規模だったらしいが、地方の街であった為に犠牲者は少なく済んだらしい。
こんな規模の被害となれば、ヒーローへの非難一色になるかと思えば違った。街の人々は、犠牲になりながらも戦ったヒーローの叱咤激励へと変わりつつあったのだった。
「見ろやくんから、皆の見方が何か変わってきたよね?」
「見ろやくん?」
「そっか、緑谷現地で戦ってたからしらないよな、ネットミームになったエンデヴァーガチファンの少年が居るんだよ」
峰田もスマホを取り出して動画アプリを開き、その当時のニュースの切り抜きを見せた。
「あ、この子エンデヴァーがサインしようとしたら血涙流して逃げた……」
「血涙!?なんでだよ!!」
「ガチファンだったらしくて……媚びないのが好きだったのが変わったと……」
「そんな裏話があったんや……」
この見ろやくんにそんなストーリーがあったとは、現地の貴重な話がここできけるとは思わなかったと驚く峰田と麗日。
そんな騒がしいA組のドアが、勢いよく開かれた。
「楽観しないで!いい風向きに思えるけれど……裏を返せばそこにあるのは、危機に対する切迫感!」
スタスタと入ってくる二人の人物に、A組男子の目線が釘付けになる。
「勝利を約束された者への声援は……果たして勝利を願う祈りなのでしょうか……!」
揺れる豊かな双丘に、ポージングで強調される尻、刺激的な二人の女性は健康的な高校男子にとっては目が移ろうのは仕方なかろう、現れたそのヒーロー……マウント・レディが、ミッドナイトと共に現れA組に向かって宣言した。
「ショービズ職が濃くなっていったヒーローに今!真の意味が求められている!!」
「マウントレーーぐぇえ!!」
「うぁあああああああ!?」
緑谷がその名前を呼ぼうとした瞬間、峰田が恐慌状態となり、思わず緑谷の襟首を掴み締め上げてしまった。
「ちょ!?み、みねたくん!みねたく……!!首しまってる首が!!」
峰田の手を叩いてタップし、やめてくれと声を上げ、峰田はハッとして緑谷の襟首から手を離した。
「ああ!?すまん緑谷!!職場体験のトラウマが蘇ってきて……」
「けほっ……人生で初めて降参したかも……キミ本当になにされたの?」
咳き込んで我を忘れて近場の人間に縋るくらい、峰田はマウントレディからトラウマを刻まれたらしい。いやしかし、何故また彼女が?何用で雄英に来たのかと理由が分からないとなる中、続いて寝袋姿の相澤先生がのそのそ歩いて入ってきて理由を答えた。
「特別講師として彼女を招いた……お前ら、露出も増えてきたしな、ミッドナイトは付き添いだ」
露出……つまりメディア露出の意味だろう。増えてねぇんだよと今回の全カット事件で苛立ちを歯軋りと呟きに変える爆豪を他所に、峰田がマウントレディの元に近づいて指差しながら言い放った。
「オイラが言うのもあれだけど、一番ショービズに染まってんだろ!」
「お黙り!」
峰田の指さす手をバシィ!と払い除けながら彼女はA組に言い放った。
「今日行うのはメディア演習!現役注目株であるこのあたし、マウントレディが、ヒーローの立ち振る舞いを教授します!!」
このヒーロー社会、ヒーロー達は公務員でありながら歩合制という事もあり、ヴィラン犯罪鎮圧だけでは食っていけない。その為、公務員でありながら『副業』が認められている。
故に、ショービジネスという要素も加わってくるわけだ。いかに目立ち、認知してもらうかはヒーロー活動としても、生活の為にも必要な事である。
爆豪が全カットされたインタビューも、重要な一つの要素だ。仮に失言しようものならば炎上し、バッシングに晒され人気低迷から活動休止もありえよう。というわけで、メディアにおける立ち振る舞いやリテラシーを、特別講師マウントレディと学ぶ事になった。
その授業内容はーー。
「ヒーローインタビューの練習よ!」
「緩い!!」
グラウンドに建てられたセットを前にマウントレディが立って宣告した。何故か付き添いのサイドキックらしき人々がカメラのシャッターを切りまくっている、ミッドナイトは今回準備のためとセットに上がる階段を設置していた。
仰々しい訓練かと思ったら意外と緩いことに切島が叫ぶが、準備ができたらしいマウントレディが、轟を招く。
「ヒーローショート?こっちに……」
「はい……」
ではまず、彼が一例としてやって見よう。と、マウントレディがマイクを壇上に上がったショートに向けた。
「凄いご活躍でしたね、ショートさん」
「何の話ですか?」
「何か一仕事終えた体で!はい!」
「あ、はい……」
天然な轟の返しにマウントレディが説明し、意図をやっと理解して轟が返事をした。
「ショートさんは、どんなヒーローを目指しているのでしょう?」
「俺が来て……皆が安心できるような……」
「素晴らしい!貴方みたいなイケメンが助けに来てくれたら、あたし心臓バクバクよ!!」
「心臓……悪いんですか?」
天然な返しが更に畳み込んでくるが、その発言は逆にマウントレディから好感が上がった。やだなにこの天然イケメン、うちに欲しい!と声が漏れそうになるが、インタビューを続けた。
「どのような必殺技をお持ちで?」
必殺技を見せて欲しいと言われ、轟は一度壇上から降りて、あいも変わらず凄まじい氷壁を見事に作り出しながら答えた。
「穿天氷壁……広域制圧や足止め、足場作りと幅広く使えます、後は……もう少し手荒な膨冷熱波という技と、奥の手に今は燎原火という技を……」
轟のインタビューで、まさか父親が教えた技を出した事に、少しだけ緑谷は顔を綻ばせた。が、ふと耳郎がある技の事を思いついて轟に尋ねた。
「あれ?B組との対抗戦で止められたやつは?」
「あの氷の背びれができるやつ……あれは違うのか?」
砂藤も見せなかったが、止められた際に出来なかった技は違うのかと尋ねられて、轟はそれにも答えた。
「あれは……まだ制御が出来ないから技と言えない」
轟自身、骨抜に止めてもらえて助かった『技』もまた、緑谷久との交流で思いついた技だ。しかしまだ制御と放ち方に難がある為、技とも呼べないから答えないと轟は、壇上に上がりながら説明した。
そして、この技を完成させるには……実の父親から教えを得なければならない事を轟は理解していた。
「パーソナルなとこまで否定しないけど……安心させたいなら笑顔を作れるといいかもね!貴方の微笑みなんて見たら女性はイチコロよ?」
轟のインタビューはここで終わり、マウントレディから統括と評価が下りる。安心させたいヒーローを目指すならば、笑顔が大事だとウインクしたマウントレディに、轟は肝を冷やしたような唖然とした顔で言った。
「お、俺が笑うと……人が死ぬ!?」
「もういいわ!!」
天然もここまで来るかと、マウントレディも思わずツッコミを入れながら、轟のインタビュー演習は終わった。
「技も披露するのか……インタビューでは?」
インタビューで技まで披露するのかと、常闇が疑問を呈した。しかしこれにマウントレディは即座に理由を答えた。
「あらら、やだわ雄英生?みんなが貴方達のことを知ってるわけではありません!必殺技は己の象徴……何ができるのかは技で知って貰うの」
必殺技を披露するのは、自身のヒーローとしての名刺でもある。名前だけでない、何ができるヒーローなのかを知ってもらわなければ意味が無いだろうと。
「即時チームアップ連携……ヴィラン犯罪への警鐘……命を委ねて貰うための信頼……ヒーローが技名を叫ぶのには、大きな意味がある……」
A組の皆に、これがどれだけ重要な事なのかと、マウントレディは壇上で屈んで、目線を出来るだけ同じにして語った。しっかり特別講師をしている様子に、職場体験で色々あった峰田が呟く。
「ちょっと前まで、カメラ映りしか考えてなかった筈だぜ、あの女……」
マウントレディの変わり様に峰田が驚く、邪な気持ちで行った職場体験で見た姿とは大違いだと呟く彼に、相澤先生が何故かと理由を語った。
「マウントレディだけじゃないよ……今、ヒーロー達皆引っ張られてるんだ、ナンバーワンヒーローに……」
オールマイト引退後、そのナンバーワンに座したエンデヴァーが見せた、九州での勝利とスタンディング……それにヒーロー達は引っ張られて意識が変わりつつあるのだと相澤先生は語った。
「さぁ、バンバンインタビューしちゃうよ!」
どんどん進めていこう!マイクを向けたマウントレディが、A組にそう宣言し、インタビュー演習は始まった。
緑谷は、皆がインタビュー演習を受け、順番が回ってくるまでの間、顎に手を当てて考えた、結構難しい実習が来たなと……。
何しろ……自身のヒーロー像がインタビュー不向き、メディア露出が難しいからである。そもそも個性からして放送差し止めになると思うのだがと、自身の活躍した後の背景の凄惨さスプラッタ具合から考えて無理じゃないかと苦笑が浮かぶ。
皆しっかりとインタビューに答えている、爆豪も1人で受ければ自身のヒーローとしての俺様気質でしっかりとインタビューを完了していた。
「じゃあ次は……ヒーローイズクね、上がって来て」
そうこう考えていたら、もう自分の番が来てしまった。皆の目線が刺さる、緊張も中々に込み上げてくるなか、緑谷は決めた。
「凄い活躍でしたね、イズクさん?」
「……あの」
「うん?」
緑谷は一度、背後を見る素振りをしてから、マウントレディのマイクに向かって答えた。
「映して大丈夫ですか?モザイクかかります?ちゃんと」
突き抜けよう、こうなったら。自身がどこまで凄惨な景色を作るヒーローか、舞台を整えながら、設定を作って。緑谷の応答にマウントレディも少し苦笑した。
「あ、あー……大丈夫ですよ、うちでモザイクかけますし、生中継じゃないんで」
「いや良かった、血とか臓物とか生首が散乱してますから」
「どんな現場!?」
お前それヒーローの現場かよと流石にマウントレディが突っ込む、しかしいかんいかんと、緑谷の世界に引き込まれそうになるのを堪え、皆と同じ様な質問をぶつける。
「イズクさんは、どんなヒーローを……目指しているんですか?」
目指す目標、あり方……それはもう決めている。オールマイトにも宣言した、自分が目指すヒーロー……それは。
「恐怖の象徴です、ヴィランが名前を聞けば泣き叫び、出会えば命乞いをするような……まぁ決して許しませんが」
「そ、そうですか……あー、成る程……えっと、必殺技を教えていただけますか?」
どんなヒーローだよ、怖いよと青ざめるマウントレディは、必殺技を教えて欲しいと質問する。
緑谷は、マウントレディから少し離れて手をマウントレディにかざして引き寄せる所作をした。
「きゃっ!?」
マウントレディが握ったマイクが、力強く引き寄せられ彼女の手から離れ、緑谷の手に納まる。そのマイクで緑谷は改めて説明した。
「物を引き寄せれます、人間も、気分が高揚したら事象も引き寄せて、軌道をずらして回避もできます……が、これはあくまで本来の個性の添え物で……」
緑谷はマイクの頭部分を分解し、それをもう一度はめなおしてから質問に答える。
「脊髄ぶっこ抜き、頭なり首を掴んだ相手を、そのまま脊髄を引っこ抜いて殺せます、そして刺し直したら蘇生できます……つまりヴィランを生かすも殺すも僕次第というわけです、だから……」
カメラがそこにある体で、緑谷はマイク片手に言い放った。
「これを見てるヴィラン達、恐怖しろ、そして泣き叫べ……次は、お前だ」
言い終えた、と緑谷はマウントレディにマイクを返して、評価を彼女から貰う為定位置に立った。
「え、えっと……イズクくん?」
マウントレディは……カタカタ歯を震わせながら緑谷に総評を下そうとした。いやいや怖いよ!?これ学生の殺気とか雰囲気じゃないと、世界観は分かるけどとマウントレディの声に緑谷は返事した。
「はい」
「メディア受けは諦めよっか……」
「そうします」
先輩からのアドバイスに、そうしますと緑谷は一礼し、壇上から降りた。
このインタビュー演習から……まさかプロとなった緑谷のキャッチフレーズが『次はお前だ』という恐怖の台詞になるとは、誰も知る由も無かった。