【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
迷子の捜索をする事しばらく、方々を飛び回り、話を聞いて迷子の少年を探して、緑谷が辿り着いたのは山の上の公園だった。公園と言っても、滑り台が一台だけの公園とも言いがたい場所だが、田舎の公園はこんなものかも知れない。
「お姉ちゃーん、どこにいるのー?」
姉を探しているらしい、姿を見かけた緑谷は少年に声を掛けた。
「活真くん?島乃活真くんかな?」
歩いて近寄り、緑谷は膝を曲げて同じ高さに、目線となって確認した。その少年、島乃活真は緑谷の姿に目を輝かせた。
「ヒーロー……」
このヒーロースーツで、ヒーローと呼んでくれるのかと緑谷は、大概は『そんなスーツのデザインのヒーローが居るか!』と言われるが、今回は真っ当にヒーローと呼ばれた事に感激した。
「お姉さんと逸れたんだよね?さ、僕が一緒にーー」
逸れた姉の元に僕が連れて行く、そう手を緑谷が差し伸べた瞬間だった。
「遅い!遅すぎる!!」
滑り台から少女が、怒りながら降りてくるや緑谷に詰め寄った。
「お、お姉ちゃん……」
「貴方名前は!!」
指差して詰め寄る少女に、緑谷はゆっくり立ち上がり名を名乗った。
「僕はイズク、イーヴルヒーローイズクと申します、キミは?」
名は名乗った、じゃあキミの名前はと緑谷は尋ねるや、膨れ面で少女は名を名乗った。
「活真のお姉ちゃんの真幌!」
活真の姉と聞いた緑谷は、たしか迷子探しで麗日が電話対応したのもこの子だったよな、と思い出す。ああこれはしまったな、ヒーローより先に探して見つけたのかと、仕事を失敗した事を理解した。
「そうか、先に見つけたんだ……不甲斐なくて申し訳ない」
深々と頭を下げる緑谷に、ふふんと鼻息荒くして真幌はスマホを見せた。
「ほんと、これが雄英ヒーロー科なんて酷いものよ、迷子探しに1時間も掛かるなんてーー」
「待てーー」
その真幌の台詞を聞いた瞬間、緑谷の雰囲気は一変した。頭を上げるや真幌のスマホを取り上げ、そのタイマーを見てまさか……と理解した。
「ちょっ、何すんのよ!?返しなさいよ!!」
「試したのか?嘘の要請で」
「ヒュッ!?」
さっきまで優しかった言葉と、眼差しのヒーローが一変して厳しい眼差しで怒りを孕んだ抑揚になり、真幌は固まった。
「子どもだから知らないかもだけど、嘘でヒーローや警察を呼んだ場合、偽計業務妨害罪という罪になる……ほんの悪戯だろうと、許されない事だ」
「こ、子どもがやった事でしょ!何を本気に……」
「そうか、自覚があってやったんだな……」
「あーー」
鎌掛けに引っ掛かり、真幌は後退りした。緑谷は……特にこれ以上は言わない事にして、真幌にスマホを返した。
「以後気をつけるように、二度目は無いよ」
「な、何よ偉そうに!行こう、活真!」
反抗的な態度で、そのまま真幌は走り去っていった。いつの時代でも、子どもの悪戯とはあるものだなと、思いながらため息を吐く緑谷に、活真が近づいた。
「あ、あの……」
「うん?」
「ごめんなさい……けど、来てくれて……ありがとう……」
嘘の要請への謝罪、それでも来てくれた事への感謝を、活真は恥ずかしがりながら述べた。
「もう!お礼も謝りも必要ないわよ!」
「ああ!?」
気を悪くした真幌が戻って来て、活真の手を取り早足に立ち去る。それをついて来ていた麗日と耳郎がすれ違い、何があったのかと緑谷のもとに駆け出した。
「出久くん、どういう事?」
「何か、言い争ってたけど……」
二人に尋ねられた緑谷は、そのままあった事を伝えた。
「虚偽の通報、僕たちがどれだけ早めに来るかあの子……試してたんだよ」
「悪戯電話ってこと?」
「うっわ、マジィ?」
二人の背中を見て、麗日も耳郎も少し顔を顰めた。まさか悪戯電話に1時間も割かれるとは、徒労にも程があった。
「一応注意はしたからさ……はぁ、とりあえず事務所に戻って報告しようか」
結果は事務所に帰って報告だと、緑谷は公園の出口に向かう中、ふと耳郎は呟いた。
「緑谷……そのスーツさ、暑く無いの?」
「あ、確かに、この日差しに黒はキツない?」
麗日も思った、熱帯の太陽光降り注ぐこの島で、緑谷の黒色統一したヒーロースーツはキツくないかと。
「うん……結構キツイ、まぁ上着のコートは脱げばいいかな……」
流石に帰る時は上着のコートは脱ごうと、緑谷はヒーロースーツのコートを脱ぎ去って脇にに抱える。それでも暑いなと、ジリジリと肌を焼く日差しに緑谷は顔を顰めながら公園から出るとーー何やら鈴の音が鳴った。
風鈴にも似た涼しげな音に、緑谷も、麗日も耳郎も何だろうと辺りを見回すと……丁度道路沿いで荷車を押す男が居た。
「アイス〜アイスは〜〜いらんかね〜〜キンキンに冷えた〜〜アイスだよ〜〜」
「へぇ……珍しい、移動販売のアイス屋だ」
麦わら帽子を被った男が、鈴をつけた荷車を押しながらそう声を上げている。アイスの移動販売なんて初めて見たなと、緑谷は物珍しくなって眺めた。
「こんなに暑いと食べたくなるよねぇ……でも今、うちらヒーロー活動中やし」
「買い食いなんてもってのほかだよね、行こう二人とも」
この暑い熱帯の地域で食べるアイスは、さぞ美味しいだろうが今はヒーロー活動中である。買い食いなんてダメだと麗日も、耳郎も冷たさと甘味の誘惑を断ち切りながら、通り過ぎようとした。
「おやキミ達、雄英の学生ヒーローさんだよね?」
だが、そのアイス売りのおじさんは、通り過ぎようとした緑谷達に声を掛けたのであった。
「はい、そうですが……」
「どうだい、アイス食べてかないかい?一本50円だよ」
「安っ!?」
採算取れないやん、ガリ◯リくんより安いアイスに思わず麗日がびっくりする。
「すいません……ヒーロー活動中の買い食いは……」
だが、今自分達はヒーロー活動の最中だ。我慢しなければならないと緑谷が断ると、おじさんはふむ……としばらく考えて何かを思いついて荷車の蓋を開けた。
そして、手作りらしい三つの細長い三角錐の白、茶色、薄桃色のアイスを取り出して言った。
「やれしまった、間違えてアイスを箱から出してしまったぞ……このままでは溶けてしまう……」
「え、え?」
「あの、何を?」
何故唐突に、間違えて出したように見せるのかとアイス屋のおじさんがわざとらしく言うと、そのまま3本のアイスを緑谷達に手渡した。
「いや、参った参った、ヒーローさん、勿体無いから食べて助けてくれないか?お代はいらないからさ?」
「ええ、そんな?」
「いやそういう訳には……」
麗日や耳郎も焦った、緑谷は成る程なと理解した。こっちが業務中の買い食いがダメなら『溶けるアイスを勿体ないから、廃棄するくらいならヒーローに食べて助けてもらった』という形にしたと。
お代はいらないとまで言った、そして緑谷出久……ヒーロースーツの暑さにやられて誘惑に負けてしまった。
「あむ……」
「ちょっ!緑谷!?」
「ああ、食べてもうた……」
白の円錐型のアイスバー……それを口に含んだ緑谷に衝撃が走った。食べたのはバニラだろう、舌がそうだと理解する。しかし……今まで食べたアイスクリームのバニラの、それこそ店売りのチェーン店から、スーパーの高級アイスブランドのバニラよりも……そのどれよりも美味しかったのだ。
「これ……本当に50円?嘘だ……軽く1000円は越えるよ」
「そ、そんなに美味しいん!?」
「ええ……ああもう!」
緑谷が食べれば、ならもう乗せられてしまえと耳郎は薄桃色、麗日は茶色のアイスバーを口に含み……二人して目を見開いた。
「うわぁ!?い、いちご感がすごい!!何このアイス!?」
「濃厚でその奥にほろ苦さも……こんなチョコアイス初めてや……」
「喜んでもらえてよかったよヒーローさん、また見つけたらぜひ買ってね?それじゃあ〜」
二人も初体験の味にうんうんと頷くアイス売りのおじさんは、また街で見かけたら今度は買って欲しいと笑って、荷車を押して離れて行った。
「行ってもうた……次見つけたら、買わないかんな」
「いやぁびっくりした……これ50円なんて絶対儲けないよ……」
二人して名残惜しそうに棒を眺めながら、次会えたら今回の分も含めて必ず買おうと決めた麗日と、このクオリティで50円で生活できるのかとおじさんを心配する耳郎。
その一方で……緑谷は、その後ろ姿に首を傾げるのだった。
「あの人……何処かで会ったか?」
以前自分は、あのおじさんと会ったような気がする……記憶の片隅に、忘れ去った記憶の中に、何故かあの声を自分は覚えているようなと引っかかったのだった。
・アイス屋のおじさん
緑谷達の前に現れた、アイスの移動販売をしているおじさん。麦わら帽子に昔ながらの手押し車がトレードマーク。緑谷はどうやら、彼と何処かで会ったようなと引っかかっているらしい。アイスは1本50円、バニラ、ストロベリー、チョコレート、ココナッツ、紅茶味で販売中。