【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「何なのよあのヒーロー!人を見透かした態度!気に入らないわ!きっとあれよ、ゆーえーでも特に問題児が集まったのがこの島に来たんだわ!」
島乃真幌は、緑谷に諌められた事を根に持ちながら、売店で買ったソーダアイスバーを握りしめてブツクサ吐き散らしていた。
「そもそも、こんな島で事件なんて起こる訳ないのに……島流しでここに送られて来たんだわ!」
どこでそん言葉を覚えたのやら、地元を流刑地扱いする真幌に対し、手を繋いでソフトクリームタイプを舐めながら活真は言った。
「嘘でも……ちゃんと探しに来てくれたよ……あのお兄ちゃんは、ヒーローだよ……」
そう言われた姉からすれば面白くはないものである、血を分けた弟が姉たる自分の意見に賛同しないのは。ならやる事は一つだと、真幌は子どもの頭で精一杯考えれる事で決めた。化けの皮を剥いでやると、そうしたら弟はヒーローに幻滅してくれるだろうと、ソーダアイスを噛み砕いた。
「んーーー!?」
「お、お姉ちゃん!?」
そんな一気に食べたりするから、真幌はアイスクリーム頭痛によって呻き、活真に心配されるのであった。
同時刻……雄英高校の職員室にて、オールマイトはちらほら振る雪を窓から見つめながら呟いた。
「A組……ちゃんとヒーロー活動やっているだろうか……」
特にアクシデントの多いA組……ちゃんとやって頑張っているか心配だと呟くオールマイトに、相澤が答える。
「那歩島の人口は1000人……ここ30年の事件は些細なものばかり……この島の場所でありながら不思議なくらいですし……問題ないでしょう」
ここ30年、事件という事件は起きてすらない。むしろ、この台湾とインドネシアに隣接しながら、全くもって事件も関心もない田舎の島、という事になる。楽観的な見方になるが大丈夫だろうと相澤は言う。
「それに、ヒーローってのは貴方のように大災害に単身赴いたり……凶悪なヴィランと戦う事ばかりじゃあありません……守る者との関わりは、あいつらにとって貴重な体験になる筈です……」
ヴィラン退治、災害救助だけがヒーローじゃない。何もない日常における市民達との関わり、交流……些細な事だろうと手を差し伸べて地道に解決し、信頼を得る事もプロとして必要になる。相澤の言葉にオールマイトも頷いた。
「……ヴィランで思い出したんですが……オールマイト」
「む、なんだい?相澤くん?」
話はこれで終わりかな、オールマイトはデスクワークに戻ろうとした最中に、珍しく相澤から尋ねられた。
「AFOは都市伝説でしたが実際に居て、貴方は退治した……で、あんたなら知ってるか、はたまた嘘の都市伝説か分かるかなんですけど……AFOが逃げたヴィランが居るって、本当ですか?」
相澤からの質問に、オールマイトは驚きも、動揺もしなかった。全くの嘘の話か?となって、オールマイトが自身の椅子に座ると、口を開いた。
「私も話には聞いた事がある、まだAFOの他にも……世界中にあらゆるヴィラン組織が台頭し、ヴィラン組織が互いに潰しあってたアジア全域での話でね……」
オールマイトが平和の象徴として現れたヒーロー全盛期の以前、まだヴィラン組織が世界中に存在し、ヒーローどころか身内同士でも潰し合いをしていた時代の事らしい。
「私も見た事は無い、ただ確かに居たらしい……ヒーローだろうと、ヴィランだろうと、道を阻む輩は大組織も個人も関係なく、叩き潰した災害のような……そんなヴィランがね、質問したキミも名前は知っているだろう、怨嗟の龍と書いて、怨龍というヴィランさ」
「怨龍……」
相澤はその名を口にして反芻する、そして目を細めた。本当にこの人、いくつなんだと、アジアのヴィラン組織の抗争なんて、自分がまだ雄英の試験勉強してた時期じゃあなかったかと。
「一時期、AFOの率いていた協力者が彼と接敵して壊滅し、支配していた地域を手放したのを聞いたよ……それっきり話は聞かない……死んだのかはたまた今も潜伏してるのか……」
オールマイトすら知らない、AFOが逃げ出したヴィランという都市伝説……事実だったとはと、それ話をしといた方が良くないかと思った相澤は、聞くことは聞いたと切り上げて目薬を差してパソコンに向き直った。
「あー……疲れたー……」
雄英高校1ーA事務所では、今日の業務を終えた生徒達が椅子に座って披露に項垂れていた。
「労働基準法プルスウルトラしてるし……」
「委員長、ちょっと細かい仕事受けすぎじゃね……?」
総勢20名が居ながら中々に多忙だった。前に居たおじいちゃんヒーローがこれだけ仕事を捌いていたとは思えない。瀬呂は、流石に細かい事まで出動を受けすぎていると飯田に苦言を呈した。
「事件に、細かいも大きいもないだろう?」
しかしそれは一蹴された、規模は関係ない、ヒーローが求められているなら駆けつけるのが必然と彼は言ってのけた。
「ヒーロー活動をしているとはいえ、私たちはまだ学生……誠実にこなし、島の皆様から信頼を得なければ」
この積み重ねが、信頼と信用になるから手を抜いてはいけないのだと副委員長の八百万も意見を補強した。
「はーい!ここに来て……一度もヒーロー活動してない奴がいるんですけど!」
いやらしい笑みで峰田が手を上げるや、峰田はある人物に指差してそう言った。爆豪勝己、島に来て現在二日目……一切の出動なしであった。
「わざと事務所に残ってんだよ、お前らが出払ってる時にヴィランが出たらどうすんだ?ああ!?」
「この島にヴィランは居ねぇだろぉ……」
尤もらしい言い訳と共に、親指を下に向けるサインを峰田に返す爆豪、近くに座していた切島は、こんな平和な場所にヴィランがいる訳も無いだろうと言い訳に苦言を呈した。
「いや、そうも言い難いよ切島くん、むしろこの島、平和すぎるくらいだ」
「え?そうなのか?」
その苦言に待ったをかけたのが緑谷だった。この島は何故か平和すぎるんだと、緑谷は机にあった那歩島マップを広げながら、切島と爆豪の居る畳部屋に上がって説明した。
「那歩島は日本最南端の沖ノ鳥島とほぼ同じ緯度で、経度は石垣島と同じで……台湾とフィリピンの間あたりに位置する……この辺りはそれこそ、中華系、東南アジア系の海賊ヴィランやギャング組織が輸送船を襲う事が多いんだよ」
「この島の海域ってそんな危なかったんか!?」
「社会科の授業の一環で出たぞ切島くん!」
驚愕する切島に、むしろこれは習ったぞと飯田も補足した。この海域は特に日本から、東南アジアへの輸送航路があり、それを狙う中華系や東南アジア系のヴィラン組織が居ると。
「おいおい……じゃあマジに海賊ヴィランがこの島を占領とかあったりするのかよ……」
それを聞いた峰田も授業内容を忘れていたらしい、そんな危険の孕んだ島なんかよと震え出したが、緑谷は首を横に振った。
「筈……なんだけど……何でかこの島にヴィランが寄りつかないんだよねぇ……」
「寄りつかない?」
不思議な事に、そんな危険な海域にありながらこの島にヴィランは寄り付いていないのだと緑谷は言った。
「うん、この島で引退なされるおじいちゃんヒーローが勤務していた間ずっと、島の中で事故やらはあったけど近海でのヴィラン犯罪はここ数十年で数えるくらいなんだよ」
「なぁんだ……心配させんなよな〜緑谷……」
「ま、だからかっちゃんの言うヴィランに備えると言うのも馬鹿にはできないんだよね、ねーかっちゃん?」
「テメェに言われたかねぇわクソヴィラン……擁護のつもりか、ああ!?」
別に擁護したつもりはないが、理不尽極まりない切れ方をされて緑谷は苦笑した。そんな『那歩島におけるヴィラン犯罪と輸送航路』の解説を終えた矢先、扉が開く音が響いた。