【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「お邪魔するよぉ」
「村長さん」
正面玄関から入って来たのは、この那歩島の村長と、那歩島の島民達だった。彼らはラップや籠で包まれたお盆や皿、さらにはダンボールにクーラーボックスと様々な物を携えてA組事務所へ訪ねて来たのである。飯田が出迎え、次々と島民が上がって来た。
「さっきは、婆ちゃんを病院まで運んでくれてありがとうね?」
「バイクの修理、助かったわ」
「うちのバッテリーも」
「「ビーチの安全ありがとー!」」
「とれたての魚やでぇ!」
あっという間に、事務所の机所狭しに食事が並ぶ。男子大好物の揚げ物は天ぷらから唐揚げまで網羅、バランスよくと野菜サラダや煮物まで、沖縄に属するなら無論あるゴーヤーチャンプルーに、ラフテー、ピーナッツのお豆腐ジーマーミー豆腐、コラーゲンたっぷりの豚足ティビチ。
とれたての海の幸の刺身、あると安らぐだし巻き卵、他にも色々な料理が卓上に並んだ。
「お礼というわけじゃ無いけど……良かったら食べとくれ!」
「「「「いっただっきまーーーす!!」」」」
「キミ達!!少しは遠慮したまえ!!」
島民からのご好意の夕食に1ーA組は歓喜の声を上げ、飯田が少しは遠慮しろというが、むしろ遠慮こそ良くないだろうと、A組全員は夕食をいただく事にした。
「はぁーー……美味しかったぁ、豚足てびちに豚の内蔵を使った中身汁……それにゴーヤーチャンプルーの苦味が体に染みる」
「人の優しさが身に染みるな……」
沖縄料理の夕食を堪能して、にっこりと満腹にお腹を押さえながら緑谷は感想を呟いた。隣に座して食べていた障子も、優しさが染みると頷く。
「ヒーローをやってて良かったと思える瞬間よね……」
「うん……」
同席した蛙吹に麗日も、ヒーロー活動をやっててよかったと満腹からそう語る中、男子陣がゾロゾロと移動を始めていた。
「ばーくごうのかっちゃんくん?」
その内の上鳴が、嬉々として畳の間でくつろぐ爆豪に声をかけた。
「俺ら、風呂入って寝るから」
「宿直よろしくぅ!!」
次いで切島も爆豪に宿直を命じ、しばらく呆けた爆豪は叫んだ。
「何でだよ!?」
「だってお前今日何もしてないじゃん」
「ぐっ!?」
瀬呂から本日ずっと活動してなかった事を責められ、流石に罪悪感と責任はあるらしい爆豪は歯を食いしばり、宿直を受けるしかなかった。働かざる者、何とやらというわけである。
「さて……食器洗おうか」
「だな、手伝うぞ緑谷」
なら自分は食器洗いをするかと立ち上がる緑谷に、障子もそうするかと立ち上がる。
「皆でやればすぐ終わるね」
「パパッとやっちゃいましょ」
自然と麗日と蛙吹も手伝うと言い立ち上がり、緑谷達は食器洗いと片付けを始めた。A組の那歩島ヒーロー活動二日目は、こうして無事終わった。
片付けを終え、皆も風呂に入り寝る者が多い夜中……緑谷は雄英事務所である『いおぎ荘』の外に出ていた。食後の軽い運動、トレーニングの為である。
出入り口すぐにはいい感じの広いスペースがあるのだ、トレーニングには打ってつけである。
柔軟体操にてあちこち伸ばして、準備は完了。さて……身体の柔軟を終えたら次はと、足元の小石を見つけて緑谷は右手人差し指をクイッと曲げる、すると石が跳ねるように浮き上がった。
緑谷出久の個性『脊髄ぶっこ抜き』は……いつ何処でかは分からないが『AFOの因子』を射ち込まれた事により変異した個性……本来は、母である緑谷引子から遺伝した『引き寄せ』が緑谷出久の個性である。
その個性を用いた準備運動かつ、個性伸ばし訓練。また別の小石を左手人差し指にて引き寄せ、左右一つずつの小石が、緑谷の指の指示に従うようにあちこちへと動く。
この『引き寄せ』最初は相手の『脊髄』を引き寄せるのは楽で、それ以外の物体やらは引き寄せる度に鼻から血を流し、使いすぎたら脳が疲弊して目から耳から血を垂れ流すスプラッタな副作用が出ていたが、今はもうそんな事は無くなっていた。
余程巨大な物や、多数への行使となれば話は別だが、今は自らの手足のように個性を操れている。
ただ脊髄を抜くしかできないあの頃から、随分と使い方からその副作用への耐性と、ここまで成長できたんだなと緑谷は実感した。
さて……それはそれとして、と。緑谷は両手の10本指の指先を見て、そしてイメージし、集中した。それに応える様に、緑谷の全ての指先が破裂して黒色の禍々しい鋭利な爪が発現した。
「……相変わらず痛い」
『黒爪』……緑谷の中に分たれた、オールマイトの個性『OFA(ワン・フォー・オール)』の欠片、『OFA・M(ワン・フォー・オール・ミラージュ)』により現れた個性である。
実際は……OFAの五代目継承者の個性『黒鞭』が、これまたAFO因子により変異した個性であった。
個性OFAは、代々受け継がれていき、その経験や力を蓄え時代に継承する。それは個性も同じで、やがてそれぞれの継承者の個性が、その時になれば発現すると五代目継承者から緑谷は聞いた。
ただし、その全てがAFO因子により変異しているとも。
この黒爪……特徴は幾つかある。まず、鋭利で切れ味が凄まじい。鉄パイプやコンクリの壁すら切り刻む。さらに伸びる……何処までかは知らないが、その気になればどこまでも伸ばせそうだ。そして、出すと痛い。指の第一関節が爆ぜて現れる為毎回痛い。そのくせ解除したら何事もなかった様に指が再生する。
いざ発現し、使おうとしてもこのピーキーな性能を活かすには難しいなと思いながら手を眺めていると、宿直の爆豪がパトロールから戻って来てトレーニングを積む緑谷を見かけた。
「まだ使いこなせねぇのか、クソヴィラン」
「お、かっちゃん、お疲れ様」
緑谷は黒爪を出したまま、帰って来た爆豪に挨拶した。緑谷は黒爪を隠さなかった、皆に見られているのもあるが、特に爆豪は幼馴染として隠そうが隠さまいが変わらないから安心もあった。
「使いこなす……というより使い道がね、それこそ切るしかイメージが湧かないというか……てか、驚かないの?」
「脊髄ぶっこ抜くわ、人様武器にするわ、挙句には変身までして驚くかよ今更……」
その通りである、悪態を吐きながら緑谷の前を通り過ぎ、事務所の中に入ろうとした手前で爆豪は立ち止まった。
「何か、抱えとるんか?」
「え?」
「言えねぇ事、隠しとる事、あるんか?」
爆豪から、そんな事を尋ねられて緑谷はびっくりした。それこそこの下水煮込みの自己中の爆豪が、幼い頃から色々因縁を持った緑谷を心配しての台詞を吐くなど、緑谷本人からすれば青天の霹靂であった。
「あー……まぁ、確定……じゃ無いから言えない、しっかり裏取りしたら皆には言おうかと」
言ってしまいたかった、というか……爆豪勝己は気付いているだろう。何しろ彼はAFOの戦いを目にしていて、緑谷が出した黒爪は、AFOのそれと全く同じだったから。
「チッ……まぁいい、テメェがマジに化け物になってヴィランになった時は、心置き無くぶっ殺してやるからよ、せいぜい踏みとどまれや」
それは彼なりの優しさなのだろう。
物間に化け物呼ばわりされて、落ち込んでしまったが、やはり考えてしまう。いつか、本当に自分は化け物になるのではと。その時に介錯を頼むなら……まぁかっちゃんかなと緑谷は頷いた。
「その時は……頼むよ」
だから、緑谷は笑って頼んだ。その時はお願いすると、爆豪は舌打ちして宿直の電話番に戻ろうと事務所にあがろうとしたその時……。
「あの……」
緑谷と爆豪に、声がかかった。振り返れば、こんな夜中に出歩くには危なっかしい子どもが立っていた。
「あれ?確かキミは……」
緑谷は尋ねて来た子どもが、今日の昼に島の中にある山の上の公園で迷子になっていた、島乃活真だと見てわかった。
「ヴィ……ヴィランが……出たんだ!!」
「ヴィランがーーごば!?」
唐突に活真が叫んで、緑谷は叫んだ刹那そのまま爆豪に顔を押し退けられた。
「詳しく聞かせろ!!」