【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
ーー翌朝、今日も朝から雄英ヒーロー事務所は大忙しだった。島民の手伝いが殆どだが定時パトロールも欠かさない、些細な事でも助けに行こうと1年A組は出動する。
緑谷出久は基本、パソコンでのレポート打ち込みと、呼ばれた際の出動によるヒーロー活動……それと新島さんと言う近所のお婆さんの畑仕事をこの後に頼まれていた。
昨晩の虚偽の通報の事もあるが、あの島乃姉弟がある事ない事を村長に言おうが、もしそれで島民からクレームが来たら事実を言って追い返す気で待っていたが、一向に来ない。
一晩寝たら忘れたやもしれない、子どもというかのは案外頑丈だ、そうして今日も緑谷は積み上がるレポートをカタカタっターン!と打ち込んでいく。
「分かりました!すぐ向かいます!商店街で、観光客の荷物が無くなってーー」
「私行く行くー!青山くん、ご一緒しよ!」
「ウィ!」
芦戸に入った要請、忘れ物捜索に葉隠が手を上げ、チームアップに青山を誘い、彼は快く返事して立ち上がった。
「また忘れ物かよ〜そのくらい自分でーー」
忘れ物くらいで呼ぶなよと呆れる峰田、しかし芦戸はニマニマ笑いながら呟いた。
「依頼者の声……すっごく可愛かったなぁ」
「困ってる人はほっとけねぇぜ!!」
「何その移動方法!?」
手のひら返しの早い事、残像を作りながら峰田はスーーっとスライド移動して葉隠、青山と共に出動した。
「障子さんから、ビーチに応援が欲しいとの事ですわ!」
「なら、俺が行くよ!」
「俺も定時パトロールに……」
一気に動きが激しくなり出した、八百万が受けた要請に尾白が出動すると立ち上がり、常闇も定時パトロールに出ると言い出した。緑谷もパソコン右下の時間を見て、畑仕事の手伝いが近いなとレポート打ち込みを切り上げた。
「じゃあ僕も新島さんちの畑の手伝いの時間だから、出るよ」
席を立ち、玄関に出て緑谷は靴に履き替えた。
「行って来ます」
そうして正面玄関を出て、そのまま新島さんの畑への道をと左に曲がった瞬間ーー見知った姿と帽子を見かけた。間違えるわけがない、島乃活真くんだ。そのまま曲がり角に隠れたのを見て緑谷も近づいて、その背中に尋ねた。
「どしたの、活真くん?」
姉の真幌の姿は無い、一人で来たのかと背中を向けて座る彼に語りかけるや、活真は立ち上がり、もじつきながら言った。
「あ、あの……昨日はごめんなさい……」
「うん?ごめんなさいって……キミは素直に謝ったじゃないか」
緑谷は、昨晩の事ならもう説教したし、キミは謝ったから済んだだろうと言った。しかし活真は首を左右に振って謝る理由を言った。
「お姉ちゃんが……ちんちん殴っちゃってごめんなさい……代わりに謝りに来た……」
そっちか、緑谷はそう来たかと、少し悩みながら一つ尋ねる。
「おー……そっか……キミの意思で?お姉ちゃんが、代わりに謝りに行けとか言われてない?」
「ううん、僕が、自分で……代わりに謝ろうって……」
「そっかそっか……分かったよ、許すからさ、うん」
この子は姉を庇おうとしているらしい、健気だな、これが姉弟愛なのかな、弟も兄も居ない一人っ子だから分からないけど、ここでふざけんな姉貴連れて来んかいクソガキ、とは流石に緑谷は言わなかった。
この島乃活真くんの自己犠牲に免じて手打ちとしようと、緑谷は許すことにした。しかし……何故こんな事をしたのかは聞いてなかったなと、緑谷は片膝を付き目線を合わせて尋ねた。
「しかし活真くん、何故あんな事をしたの?」
尋ねられた活真は、体を横に向け、言いづらそうにしたがゆっくり理由を話した。
「お姉ちゃん、ヒーロー嫌いなんだ……昨日も、ヴィランが出たって言ったら……ヒーローは怖がって助けに来ないって言うから……だから、僕……」
ヒーロー嫌いか……緑谷は林間合宿で世話になったプッシーキャッツ、マンダレイの従甥の出水洸拖を思い出した。彼は両親がヒーローだったが、帰らぬ人となりそれ故に個性とヒーローを憎んでいた子だ。
もしかして、活真の姉である真幌も、ヒーローという職業に被害を受けたのかもしれないと思い、緑谷は頷いた。
「そっか、ヒーロー嫌いか、なら仕方ないね」
「え?」
「ヒーロー嫌いな人、よく居るからさ……まぁだからって、嘘の要請はダメだけどね?」
何故か?と緑谷は尋ねなかった、仕方なしと受け入れて、それはともかく昨晩のは駄目な事としっかり諭した。
「ヒーロー嫌いでもいいの……?」
「うん、仕方ないからね、人には好き嫌いあるし……活真くんはヒーローは好き?」
「うん、好き」
活真はそう言ってバックに取り付けたバッジを緑谷に見せた。忍者ヒーロー、エッジショットのピンバッジである。
「かっこいいよね、エッジショット、僕も同じの持ってるよ」
「ほんと!?お揃いだね」
「そうだね……活真くんは……ヒーローを目指してるの?」
キミもヒーローになる夢を持つのかと、緑谷の質問に活真は少ししょんぼりとして答えた。
「僕の個性……ヒーロー向きじゃないし、それに……お姉ちゃんも危険だって……」
その活真の言葉に、緑谷は察した。嗚呼なるほどと、あの真幌という少女はヒーローが嫌いだとして、それはさておき弟が危険なヒーローの仕事に憧れているのが心配でならないのかと。
だから……あんな嘘の通報までしてヒーローの駄目さを見せて幻滅させ、活真にヒーローの夢を諦めさせようとしているのかと。
姉弟愛というやつか、これは分からないなとそれを知るのは蛙吹さんだろうかと考える。轟くんには聞けない話だなと心中で苦笑しながら、緑谷は石垣に背を預け地面に座った。
「ヒーロー向きじゃ無いって事はさ、戦う事ができないって個性かな?」
「うん……でも、僕は悪いヴィランをやっつける、強いヒーローになりたい……エッジショットみたいな」
誰しもが、特に男の子はヒーローの強さに憧れる。けど自身の持つ個性はヒーロー向きじゃない、戦う力がないとギャップをこの子は抱いている、緑谷は頷きながら話を続けた。
「ヴィラン退治はヒーローの華だよね、けどね活真くん……ヒーローが最も重要な事って分かるかな?」
「重要な事?」
「うん、それはね……人を救う事なんだ、ヒーローの本懐はそこにある」
緑谷の話に首を傾げる活真、緑谷は興味を持ってくれた活真に語り始めた。
「災害に巻き込まれた人、傷を負った人……困った人、そんな人達を助ける為にヒーローは居る……ヴィランの大群を倒すよりも、そんな人を一人でも多く助ける事が、ヒーローがヒーローたる所以と思う、大切なのは……力じゃあない、助けたい、救いたいという思いだよ」
だから、と緑谷は活真にこう説いて終わらせた。
「重要なのは個性の向き不向き、良し悪しじゃあない、誰かを助けたいという気持ちがあれば、誰だってヒーローになる事が出来ると僕は思う」
だからこそ、それを恩師であり憧れに言われ、引き上げられたからこそ、自分は今ここに居ると緑谷自身も自覚して立ち上がった。
「だから、互いに頑張ろう活真くん」
緑谷はそのまま右手を差し出した、ヒーローを目指すもの同士、年齢は関係無い、いずれ彼が雄英……いや、どこのヒーロー科に入ろうと目指す場所は同じだと握手を促した。
「うん!」
活真も元気が出たのか、しっかり握り返し二人は握手した。そのまま活真は手を離して、またねと手を振って帰って行ったのだった。
「活真ちゃん、本当にヒーローが好きなのね……はいこれ」
ちょうどすれ違った、近所の農家の鈴村さんが元気に立ち去る活真を見送り、ビニール袋に入った差し入れの大根を緑谷に渡した。
「ありがとうございます、鈴村さん」
「……優しくしてあげてね?」
「え?」
大根を?と的外れな事を考える緑谷に鈴村のおばさんが心配そうな顔で話し始めた。
「あの子んちね、母親を早くに亡くして……父親は年中出稼ぎ、姉の真幌ちゃんと二人きりで暮らしてるんだよ……もちろん、私ら近所の者も面倒見てるよ?でも、あの歳で親が居ないってのは寂しいだろうから……」
父子家庭……しかも父親は出稼ぎで子どもたちだけで生活をしているのか……あの悪戯の通報も、寂しさから気を引きたい気持ちもあったのだろうかと緑谷は考える。
緑谷は鈴村さんに頭を下げて、一度大根を持ち帰ってから新島さんの畑仕事の手伝いに向かうのだった。
・峰田閃空
移動技、峰田が緑谷から頭を撫でられたりするのを回避することから生まれた、もぎたてヒーローグレープジュースの必殺技だ!
残像が見える移動は発動中無敵だが、発動時と移動後に硬直がある為、使用の際には注意が必要だ!