【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「姉ちゃん!ヒーローにヴィランの事報せなきゃ!」
「携帯繋がらないから仕方ないじゃない!」
通報して携帯が突然圏外になった島乃姉弟は、必死に走って家に戻っていた。携帯が繋がらないから家の電話ならと、基地局を破壊されたら電話ができない事を二人は知らない。それでも助けを呼ぼうと、必死に家への道を走った。
「一度家に戻って村の皆んなに……」
ようやく家が見えて安堵が少し湧き上がった瞬間だった、緑の閃光が数度家を切り裂くように光り、島乃姉弟の自宅は爆発した。
「うわぁあ!?」
「きゃああ!!」
爆風で二人の帽子が空へ舞い上がった。そして二人の目の前に、一緒に暮らしていた家の残骸が煙を上げて現れる。
「家が……」
「見つけたぞ……B型の細胞活性」
その煙の中から、黄色い眼光を灯したスーツの男がゆっくりと歩いて現れる。自分たちの家を破壊した、ヴィランが!
「少年、キミの個性を奪う」
声を聞いた瞬間、真幌は活真を庇うように手を広げ、必死に声を絞り出した。
「こ、来ないで!」
「安心しろ、殺しはしない」
静止も聴こえちゃいないと、歩みは止まらない。真幌は恐怖と、弟を守るためにと絞り出した勇気のせめぎ合いの果てに手を伸ばして叫ぶ!
「く、来るなったらぁ!!」
現れた巨大なピンクのシーサーが、スーツのヴィラン、ナインに襲いかかった。しかしナインは意に介さず、そのまま歩き続ける。
「幻なのは分かっている……」
近づいて来たヴィランに、活真は真幌に抱きついて、真幌も活真を庇うように抱きしめた。その手が、ゆっくり伸びて活真に触れようとした瞬間ーー。
即座に二人を抱えた緑谷が、近場の林に飛び上がり、そのまま飛翔して二人を救出した。
「イズク!?」
「出久兄ちゃん!」
両脇に抱えて空を駆ける緑谷を見上げたナインは……何だ、今の個性はと首を傾げた。
「身体強化……いや、跳躍した跡が地面に無い……自分を引き上げた?」
人間が跳び上がる挙動ではなかったと、身体強化や超パワーではないと分析したナインは、林の方角にゆっくり歩きだした。
二人を抱え、緑谷は林の先の地面にゆっくり降り立つ。ヒーロースーツの滑空翼、子ども2人ならギリギリ風を掴めるようだ。
「2人とも、大丈夫?走れる?」
そのまま地面にゆっくり降ろして立たせて、島乃姉弟に走れるかと尋ねた。
「「うん!」」
「よし、早くここから離れて」
緑谷の言葉に従い、走り出した2人の背中を見届けて……一度眼を閉じた緑谷は、再び眼を開ければ優しい眼差しは消え失せ、冷たい眼差しに切り替わって背後の林の中に足を踏み入れた。
奥から、近づいてくるスーツ姿のヴィランに緑谷は声をかけた。
「はい、そこで止まれ」
止まれと、冷たい声で話しかける。しかしヴィランの歩みは止まらない。
「なぜあの子達を狙う?」
緑谷も、歩みを止めなかった。そのままヴィランと対峙する為にゆっくり近づく。
「……どけ」
「もしかしてあれ?ペドフィリアなの?救えないな、最近のヴィランってさぁ!」
子ども狙う理由はその為かと挑発した緑谷に、スーツのヴィランナインは右手をかざし、爪を紫色に光らせながら言った。
「邪魔をするなら、殺ーー」
殺す、そう言い切る前に、ナインは絶句した。
「!?」
音も無く、緑谷はすでに間合に飛び込み右拳を腰から振り上げ、ナインの顔面向けて放っていた。
「でりゃああ!!」
気合と共に放った一撃は、ナインの左手が阻んだ。いや!左手に拳は触れていない!何かが残り数センチ、緑谷の拳を阻んでいた。
緑谷は拳の感触から、これが何かを考える。硬さに阻まれたというより、まるで押し込まれて阻まれた感覚は、風圧にも似ている……恐らくは空気の障壁!
そのままナインが右手の爪を緑谷の顔面に向けた瞬間!緑谷はバックステップと共に、左手をかざし、左に振り抜いた。
「むっ!?」
強い力でナインの右手が、緑谷の所作に連動して動かされ、爪から放たれた紫の光弾が意図しない場所に発射された。間合いが開く、緑谷は今このヴィランが見せた個性に、関連性が無い事を嫌でも理解する。
「空気の弾丸じゃない……爪を弾丸にして飛ばした……お前、まさか……」
二種とは言え、違う個性を見せたヴィラン……そんな事が可能なのは、自分が知る中で一人しかいない。そして何より……口元の工場地帯のパイプじみたマスク……。
「まさか、AFOに息子が居たとはな……。それでペドフィリアとは、救いようの無い……」
あのAFOに息子が居たとは……緑谷は勘違いしながらも、その二種の個性とはまた違う個性を持っているやもしれないと、警戒しながら間合いを保つ。
「腕が引っ張られた?引っ張る個性……なんとも矮小な個性だな」
対してナインは、自身の右腕が意思に反して動かされ、緑谷の個性を矮小と称してゆっくり間合いを詰め始めた。