※この作品はR-18です。

【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】   作:ぶっこ抜きデク

331 / 697
scene16 怨嗟の紫炎

轟達の前に現れた、謎のアイス屋のおじさん。唐突にここは引き受けると宣い、キメラの前に立ちはだかるが、飯田は流石に待ったをかけた。

 

「危険です!ここは我々に任せてください!!」

 

 当たり前だ、民間人にしか見えない中年の男が、義憤に駆られて無謀を行なっている様にしか見えない。

 

「ヒーローか一般人か知らねえが……怪我するぜおっさん!!」

 

 キメラからすればどちらだろうと関係無い邪魔をするならヒーローだろうが、そうでなかろうが叩き潰すだけだと、アイス屋のおじさん向かって襲いかかった。

 

「いかん!瀬呂くん!!」

 

「全く!!危ないっすよおじさん!!」

 

 飯田の指示に瀬呂が両肘からテープを射出し、おじさんを救助しにかかる!間に合うか分からんと、キメラが先か、テープが先かと前後からそれぞれが向かっていく。

 

 しかし、この数秒……轟達は信じられない景色をその目に焼き付けた。

 

 まるで……背後が見えてるかの様にアイス売りのおじさんは、体を横に少し捻り、瀬呂のテープを見ずに避けた。そのテープがキメラに向かって伸びて行き、キメラはそれを払いのけた。

 

「なーー!?」

 

 そこからだった、瀬呂が空振りしたテープに反応したキメラが宙を舞った。聞こえたのは乾いた、何かを叩いた音。キメラは突貫した勢いによって宙を舞い、景色が逆さまになった。

 

 見えたのは、右足を抱え蹴りを放とうとするアイス屋のおじさん!

 

 そして、和太鼓を思い切り叩いた様な衝撃音が、キメラの腹部から鳴り響いた。

 

「ごーーがー!?」

 

 突き刺した、そう言うしか無い程の一撃。宙を舞い逆さまに落ちかけたキメラの腹を鋭い横蹴りが、体をくの字に折り曲げ呻かせて、そのままキメラは等速直線運動で吹き飛び砂浜に落下した。

 

「我々が苦戦したヴィランを一撃で……!」

 

「おいおい……マジかよ……」

 

 つい先程まで、自分たちが力押しで負けたヴィランが、たった一撃で吹き飛ぶという事態に、常闇と瀬呂が唖然とする。

 

「あ、貴方は……一体!もしかしてヒーローですか!?」

 

 まさか、この島に自分達以外にヒーローが居たのかと飯田は尋ねた。しかしアイス屋のおじさんは、傍に落ちた麦わら帽子を被り直して顔を隠し、飯田の質問に答えた。

 

「ただのアイス売りで、武道が趣味のおじさんだ、この島のヒーローの友人でね?彼が本島のヒーローに引き継ぐ間、留守を頼まれたのさ……」

 

 ヒーローではない、アイスを売る武道が趣味のおじさんと名乗る男は、麦わら帽子の影で顔を見せなかったが、確かにその男は笑った。

 

「ヒーローではないが、私も島の人間……荒らされていい顔はできないのでね……キミ達は避難誘導を、務めを果たしなさい」

 

 土煙をあげて倒れ伏すキメラと、悠然と立つアイス売りで武道家の島民。しかし、仮免ヒーローである自分が、守るべき島民に戦わせるなどと、飯田は声を上げた。

 

「しかしーー!」

 

「飯田、俺たちは島民と観光客の避難を優先しよう」

 

 飯田を嗜めたのは、轟だった。ここはこの武道家の言う通り、自分たちが避難誘導を助け早急な避難をさせるべきだと。

 

「飯田、悔しいが……俺たちは足手纏いになる、あの人は仮免ヒーローの俺たちより強い……プロヒーローと同じくらいにな」

 

 常闇も轟に賛成した、あの一撃で分かってしまったと。ここに居る仮免ヒーローの自分達より、あの島民の武道家の方が強いと。

 

「確かに、島民に任せるなんてあっちゃいけねぇけどさ……戦うだけがヒーローじゃねぇ、とりあえずは安全を確保しねぇと、な?」

 

 瀬呂も気持ちは分かるが、それが一番安全だと飯田を説得する。飯田は思い出した……かつて、保須にて対峙した『ヒーロー殺し』に言われた言葉を。

 

 

 

『まず、あいつから助けろよ』

 

 

 

 私怨で仇討ちをしようとした挙句、敗北してヒーローとしての責務を指摘された。今優先すべきは……避難が完了していない、島民や観光客の避難だと、飯田は切り替えた。

 

「不甲斐なくて申し訳ない!ご協力、感謝いたします!!」

 

 しっかり最敬礼でもって、飯田はアイス売りの武道家に協力を感謝した。その言葉を聞いたらしい、武道家は背中を向けて親指を立てて任されたとジェスチャーで応えた。

 

 

 

「さて……」

 

 アイス売りのおじさんは……雄英のヒーロー達が島民の避難に向かったのを見て、自ら吹き飛ばしたヴィランの元にゆっくり歩きながら、話し始めた。

 

「この一帯……チャイニーズマフィアやインドネシアの海賊、海域に関わる全てのヴィランには、ある決まりがあるんだ……」

 

「ぐ、が……ごぁあ……」

 

 腹を押さえ、涎を垂らし悶絶するキメラを見下ろして、おじさんは言う。

 

「この島周辺で、一切のヴィラン活動を禁止する……だ、俺が直々に忠告した、数年前からな?」

 

「がぁあ!?」

 

 キメラの頭部を踏みつけ、砂浜に口付けをさせるおじさんの目は、恐ろしく冷たい。

 

「それを知らず、暴れるヴィランは偶に出るがな……その度に俺が躾けてやった……で、だ……尋ねるが、お前どこのヴィランだ?」

 

「その足を……どけろぉおお!!」

 

 首を振り上げ、足を退かし立ち上がるキメラ。怒りに身を任せ、拳を振るう!だが、その全ての攻撃は軽々と弾かれて、空振りする!

 

 そしてーーアイス売りのおじさんの右手が、キメラの首を掴むや、淡々と処理するかの様に言い放った。

 

「燃えろ」

 

 その一言共にーーキメラの身体が、一瞬で炎に包まれた!

 

「ぬぁああああ!?ぐぁ!?あぁおあああ!!」

 

 一瞬で全身に火が回ったらキメラ、その炎は……普通の赤い炎ではなかった。

 

 紫色の炎……必死に消化しようと砂浜に身体を転がし、さらに海水にまでその身体を浸したが……その炎は消えなかった!

 

「無駄だ、俺の炎は普通じゃあない……水や砂じゃあ消えないんだ……俺が消えろと命じるか、燃やし尽くすまでな」

 

 転がり、火を消そうと必死に暴れるキメラを見下ろすアイス売りのおじさんの言葉に、燃え続けるキメラは気付いた!

 

「お、お前!まさか……な、何故こんな島に!!いや!死んだと聞いたぞ!?」

 

 キメラも、ヴィランの端くれ……その『伝説』は耳にしたことがあった。

 

「決して消えない、紫の炎を使うヴィラン!!AFOが逃げ出した男……怨龍……!!」

 

 その正体をようやく理解したキメラを見下ろして、アイス売りのおじさんであり、ヴィラン『怨龍』は呟いた。

 

「失礼な、俺はただ……強者との死合を望んで漂う、流離いの武道家だ」

 

 勝手に人をヴィラン扱いするなと、再び燃えるキメラの後頭部を踏みつけながら、怨龍はそう言った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。