【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「ああうそ、なんて事!大丈夫ナイン!?」
蹲り股間を押さえるナインにスライスはオロオロとするのを、島乃姉弟が何があったのかと呆然とする。その前にカラスの大群が壁の様に現れると、二人は何者かに抱えられた。
「安心しろ!味方だ!!」
「今のうちに!!」
口田がカラスを呼び寄せ阻んで貰い、障子がその最中に二人を抱えあげる。真幌の幻影を見て助けに来たのであった。
「梅雨ちゃん!」
「ケロ!」
二人だけじゃない、麗日と蛙吹も現れて、麗日は倒れた緑谷と爆豪に触れて無重力状態を作り、その二人を蛙吹は舌で纏めて巻き上げて搬送する!
「おぉおお……お、追え、あ、あの少年を……!!」
「駄目よナイン!そんな状態で……まず治療が先だわ!!」
ちんこを引きちぎられて出血が止まらない!まず治療が必要だと、スライスはポケットから信号弾を取り出し、空に向け引き金を引いた。
「信号弾……仲間も居たみたいだな?」
「ぐぁああ……ああ……!!」
ビーチから信号弾の光を見上げた怨龍は、紫の炎に包まれ呻く踏みつけたキメラの後頭部から足を退けて、右手で指を弾いて鳴らす。
魔法の様に紫の炎が消え去る。所々焦げているが、火傷が見えないあたり、本人の耐火性は異形型でも高いらしい。怨龍は背中を向け、キメラに言い放った。
「仲間を連れてこの島から消えろ……明日まだその姿を晒すなら、次は骨も残さん」
悠々と、背中からの奇襲すら何とでもなると見せつける様に砂浜を歩き怨龍は立ち去る。まさかのイレギュラー、伝説のヴィランとの遭遇に、キメラは牙を見せて唸る。
この程度で逃げてなるものか、だが今は仲間が心配だと、ふらついて立ち上がったキメラは、凄まじい跳躍で砂浜を立ち去った。
ヴィランの襲撃は……ヴィラン達の一時撤退をもってようやく収束した。だが、その被害は小さくは無く……那歩島の住民や観光客は、避難を余儀なくされた。
雨が降るーー夜の帳が下りた那歩島、雄英高校1年A組、そして那歩島の島民、観光客は島で取り決めていた避難所の工場へ避難していた。
「二人とも……個性使いすぎだって……」
耳郎は、八百万と上鳴の姿を見て言う。八百万の個性『創造』により、必要な物資を次々と生み出す。その中のバッテリーに上鳴が溜め込んだ電気を放電し、電力を確保していた。
「いつ、ヴィランが来るかわかりません……」
「ここで無理しなくて……いつするんだウェイ」
「ウェイウェイしてきたじゃん……」
自分のやるべき事をしなければ、二人は限界まで個性を使い、物資と電気の確保に勤しむ。
一方で避難民に安息を与えるため、他の者達も動いていた。
「どうぞ……」
「熱いから気をつけて!」
「一人一個ずつだよー!」
「皆の分あるからねー!」
避難の際にはやはり、食事は大切だ。尾白や切島、青山に葉隠は調理班が作った味噌汁やおにぎりを避難民に配っていた。
「ヴィランは……どうなったかの?」
「安心してください、皆さんは我々が必ずお守りします」
村長から現状を尋ねられ、飯田は此度の力不足があったが、笑顔を崩さなかった。ヒーローの苦しい顔は皆を心配させる、だから笑顔でしっかり大丈夫だと言い切り安心させた。
ヒーロー達だけでは無い、島民達も有事で出来ることを手伝う。ヒーロー達だけに任せてはならないと、調理場で握り飯を握り、味噌汁をどんどん作った。
「食材が豊富な島でよかったわ……」
幸いだったのは、この島の食材、食糧が豊富だった事だ。第一次産業で生計を立てる者が大半で、余程長期の避難でもなければ飢えることは無いと、そこだけは安心できると野菜を切りながら蛙吹は呟く。
「捕まえたヴィラン、どうしたの?」
唯一、爆豪が討伐して確保したヴィランはどうしたのかと芦戸が尋ね、食事を運んでいた瀬呂が答えた。
「ああ、地下のボイラー室に閉じ込めたってよ……いくら尋問しても何も言わないらしいぜ」
そのヴィラン、マミーは地下に拘束して情報を吐かせようとしたが、その辺りは敵の結束も強い、決して口を割らなかった。
避難所の工場内、仮眠スペースは島内の医師による治療スペースとして、怪我した島民の治療や応急処置にあたっていた。麗日はそんな島の医師や看護師達への差し入れとおにぎりを運んできた。
畳の間に敷かれた布団に怪我人が寝ている中で、緑谷と爆豪も怪我により気を失い、治療を受けていた。
「轟くん、出久くん達の容体は?」
看護の手伝いをしていた轟に、麗日が尋ねた。
「まだ意識が戻らない……」
「診療所の先生が処置しているが……」
同じく看護していた障子も、包帯に巻かれ目を覚さない二人を見て言う。ここまで、強い二人が大怪我を負うヴィランが居るという事実に、麗日は挫けそうになるがしっかり飲み込んで、医師達の差し入れを置いて挨拶を交わす。
「お疲れ様です……」
麗日の声に、医師が申し訳なさそうに答えた。
「すまんな……わしらの個性でできるのは、傷口を塞ぐ事ぐらいじゃ……骨折はどうにもならん……」
「これ以上は本島の病院じゃないと……」
目立つ傷は塞がれたが、骨折はままならないと、島の医療の限界がここに現れた。ヴィランがまだ居る、救援は来ない……どうしたらと目を閉じる二人を麗日達は見つめた。
「僕に手伝わせて……!」
麗日達の背中から、小さくも力強い声が響き渡った。
意識の混濁……浮遊感……緑谷は暗闇の中を見回しながら、ここはどこだと自身の居場所を確かめる……。
まさか、死んでしまったか?何ともあっけない……こんなに簡単に死ぬとはと、ため息を吐いた。
ふと、声が聞こえた。その方角も分からない闇の中を、頼りに歩いていく……そして、緑谷はその景色を見つけた。
『ここは……』
打ち捨てられた錆びた遊具、生え散らかした雑草……ここは、自分の育った折寺の、郊外にある廃公園……。
緑谷出久の、修行の地だった。
『うぁああああああああああ!!』
叫びを上げる、ついTシャツと短髪姿で、泣き腫らしながら、木に拳を叩きつける子どもが居た。あれは……そうだ、自分だ、小さい頃の自分だと思い出した。
ああ、確か……個性を知って、ヒーローになりたい事を色々な人から否定されて、泣き腫らしてここに来たのが始まりだったなと、両手から血を流しても殴り続ける幼い自分を見下ろした。
それにしても、弱い、まるで打ち方がなってない……所詮ヒーローの真似をしただけだと眺めていると。
『そんな握りでは、手を怪我するぞ、小僧』
背後から、そう声がかかる。顔にモヤがかかった大人が、泣いて木に八つ当たりした幼い自分を諌めた。この声……聞き覚えあるな、緑谷もまた声に耳を傾けた。
モヤのかかった大人が、小さな緑谷と目線を合わせ、そのぼろぼろな無骨になった手を見せて、語りかける。
『小指から、順番に……指の付け根に沿う様に握って……そう、親指で締める……』
緑谷は思い出した、そうだ……この人だ、何も知らなかった、ヒーローの真似をしていた僕に、初めて拳の握り方を教えてくれた人はと。いきなり現れた、名前も知らない男に言われるがまま、小さな緑谷も、今の緑谷も、拳を握り込む。
『腕だけじゃない、地を踏みしめる足、腰の捻り……それらを合わせ、殴る標的に拳がぶつかる瞬間ーーその刹那に力を込めるーー』
謎の大人が、そう言い聞かせて小さな緑谷が八つ当たりした大木を殴った。揺れる巨木と、落ちゆく木の葉……小さな緑谷は涙を拭い、言われるがまま……真似する様に大木を殴った。ほんの少しだけ揺れた……。そして、小さな緑谷は手を押さえて蹲った
『一万回だ、一日一万回、そうしたら痛みにも慣れて少しはマシになろう』
その稽古方法、名前は『立木打ち』と知ったのは、緑谷がヒーローになる為に武術を調べ始めた7歳の頃であった。
謎の男も消えた、小さな自分も消えた……あるのは、木の皮がめくれ幹の露出した巨木……緑谷は、それに触れてから、思い出す様に拳を握りしめーー過去をなぞる様に拳を放った!
巨木が揺れる、木の葉が舞い落ちる。あの人くらいにはなれたのかと、始まりの男を思いながら振り返ると、消えたはずのもやの男が立っていた。
うっすらと、顔のモヤが取り払われていく……そして、その顔を目にした時、緑谷は驚いた。
似ている……顔の彫りの深さや、眉毛の形こそ違うが……その雰囲気は、自分の父親、緑谷久と似通った部分が多々あった。
「貴方は、一体……」
そう尋ねた瞬間、緑谷の景色は真っ白に染まった。
貴方の好きな変身方法を選んでください
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