【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
ナインが、緑谷出久と爆豪勝己によって討伐された直後の事であった……未だに山林を燃やす火事が止まらぬ轟達の戦闘区域……キメラの氷像にヒビが入りつつあった。
「がぁあああああああああああ!!」
そのヒビはやがて全体にはしり、キメラは冬眠から目覚めた。轟は……轟達は勝っていた、完全なる勝利だった。
しかし、周囲のキメラが燃やした山林の熱か……はたまたキメラの執念か、それが凍結の縁から彼を蘇らせたのであった!あと少し、ほんの少し時間が経てば、救助が到達していた際の時間だった。
「ガキの癖して……やりやがったな、くそ……」
しかし、キメラも万全ではない。冷え切った身体を完全に動かし切るのは難しいらしく、一歩を踏むのも重々しかった。ナインは、スライスはどうなった……それは分からないが、こうして今復活して目の前には倒れ伏したヒーローのガキ共が居る事は分かる。
「精魂尽き果てたか、なら、運の悪さを呪うんだなぁ!」
生かして帰しはしない、自分を凍結させた轟からまず殺してやると歩み出したキメラであったが……。
「帰れと言わなかったか?」
キメラの耳に聞き覚えある声が届いた。燃え盛る山林の火の海、その中から人影が悠々と歩いてきて、その姿を現した。
「やってくれたな、貴様ら」
「怨龍……!!」
この那歩島に潜伏していた、かつての伝説のヴィラン、そして昨日ビーチでキメラを叩きのめした男、怨龍がキメラを睨みつけた。
「一度負けておきながら、倒れた者達を殺しにかかるとは……浅ましい男だな」
「うるせぇ!!テメェに、何が分かるってんだぁ!!」
「知らんな……何か理由があろうと、無かろうと、貴様はこの島から帰らなかった……まだ俺の前に現れるならば……」
一度忠告して逃した命、懲りずにまた現れたかと怨龍は右手を掲げて、言い放つ。
「死ぬ覚悟はあると見た」
掲げられた手に、キメラが燃やした山林の火が、怨龍の手へ集まっていく。水も無しに火災は鎮火し、まるで火に意思が宿り、主人の元に集えと言わんばかりに。
「冥土の土産に持っていけ、全てを灰燼に滅する怨嗟の拳」
集まった紅の火は、怨龍の手で呪われた紫の炎となり、怨龍は握り拳を作り上げて構え、言い放つ。
「灰燼滅拳(かいじんめっけん)ーー!」
「ぐぁぉあああああ!!」
キメラの最後の抵抗として、噛み殺しに怨龍へ飛びかかる!その懐に入り込んだ怨龍は、紫炎の拳を思い切りキメラに叩き込む!
「鬼炎万焦(きえんばんしょう)!!」
凄まじい打撃音とともに、キメラの背中から衝撃が突き抜け、背後の凍った河川が砕け、さらに木々を揺らした。キメラは呆けたように口を開きながら膝をつき、崩れ落ちる。
「あ、ああ、あああ!熱い!!熱いいい!!」
さっきまで凍え切ったキメラの身体が、徐々に熱を帯びて悶え苦しみ始めた!やがて、身体のあちこちから、紫色の炎が炉心融解の如く漏れだして、キメラを包み込んだ。
「俺の鬼火は呪われた火、貴様の血を、内臓を、細胞を、骨すら焼く鬼の火よ……」
燃え盛るキメラは遂に声も上げれなくなり、ただ助けを求める為か、怨龍に掴み掛かろうとしたのか、腕を伸ばしたが……やがて指先から崩壊していき、灰になっていった。
そして、紫の炎が消え去った場所には、キメラだった灰だけが残り、それを見届けて怨龍は背を向けて言った。
「絶命勝利」
灰が風にさらわれていく中、怨龍はふと空を見上げた。自衛隊のヘリが見えた、恐らく救援が来たのだろうと怨龍は、そのまま森に消えていった。
那歩島と城塞から少し離れた島、綺麗な花が咲き誇る孤島に、その男は現れた。
死柄木弔、ヴィラン連合の首魁は、花を踏みしめながら歩いて、そして目的の姿を見て呟いた。
「そのなりで生きているあたり、やはりあいつは無茶苦茶だな……」
「あが……ああ……か……」
そこにあったのは、ナインの脊髄付き生首だった。つまり、あの島には緑谷出久が居たわけだと、このナイン率いるヴィラン達の結末を理解しながら、呻くナインに近づいた。
「し、がらき……助けて……くれ……俺は……まだ……」
「安心しなよ、あんたの夢は俺が継ぐよ……」
そのなりで、まだ生きたいと抜かすナインの浅ましい事。死の間際には人間性が出るというが、王を目指したこの男は、所詮はチンピラ程度の器だったと死柄木は、ナインの近くに屈みながら見下ろした。
「や、やめ……」
「だから、おやすみ、ナイン?」
死柄木の左手が、ナインの顔を鷲掴みにした。そしてナインは、その身体から色を失い……粉々に砕け散ったのであった。
「お疲れ様……」
そこには、もうナインという存在すら元から居なかったとばかりに、痕跡すら無くなってしまったのだった。
那歩島、ヴィラン襲撃事件最終報告。
ヴィラン名『マミー』
本名 巻原 包傭……行方不明。同犯行に及んだ仲間である『スライス』こと、羽咲 斬香の証言から、雄英高校ヒーロー科に首を切り落とされ、死体損壊されたとあったが見つからず。
ヴィラン名『スライス』
本名 羽咲 斬香……逮捕。連続児童強姦事件の犯人、及び器物損壊、暴行、殺人の罪でタルタロスに移送。仲間をヒーローに殺されたと証言したが、その仲間は行方不明、証言が不透明かつ支離滅裂となり、精神病棟への移送も考えられる模様。
ヴィラン名『キメラ』
本名 今 鳥獣郎……行方不明。対処にあたった轟焦凍、切島鋭児郎、飯田天哉、蛙吹梅雨の証言から、凍結で捕獲した筈が姿は無く、逃走したと思われる。現在捜索中。
ヴィラン名『ナイン』
本名 不明……行方不明。緑谷出久と爆豪勝己が戦闘によって吹き飛ばしたが、周囲の島にも戦闘地域周辺にも痕跡は見当たらず。島ごと吹き飛ばしかねない個性のヴィランであった為、被害拡大を考え生捕りを不可能と見て討伐したと緑谷出久は証言。現在、痕跡を捜査中。
以上の報告を持って、那歩島ヴィラン襲撃事件の報告を終了する。