【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「俺がお前達を育ててやる」
『鍛錬』その二文字が掲げられた額縁を飾る、事務所内トレーニングルームに緑谷達は集められ、エンデヴァーにそう宣言された。
一体、どう言う風の吹き回しなのだろうか?社長室で何かあったのか?いや、勘繰るのはやめようと緑谷は、No.1ヒーローより指導を賜われるチャンスを不意にしない為、深く聞く事をせず、流れに身を任せる事にした。
「だがその前に……イズク、爆豪、貴様らのことを教えろ……今抱えている課題、出来る様になりたい事を言え」
今の課題……出来るようになりたい事……緑谷はその問いかけに対して答えた。
「もっと早く、助けを求める人の下へ駆けつけるようになりたいです」
それは、先程のヴィラン退治にて露呈した事であった。
「今さっきの捕物で突きつけられました、僕は……かっちゃ……爆豪くんや轟くんより、二歩も三歩もヒーローとして遅れていると」
「え?」
緑谷の台詞に、お前それマジで言ってんのかとなる轟に対し、爆豪は真剣に緑谷の話を聞いていた。恐らくは、A組……いや、一年の中でも、プロすらも含めてトップクラスの実力を持ちながらそう言った緑谷の内心が吐き出される。
「はっきり言って、徒手空拳だったら僕は誰にも負けない自信があります……どんなヴィランが相手でも負けないと、けど……ヒーローの本懐は救助にあると思います、さっきのヴィランへの駆けつける速さ……僕は二人より断然遅かった、サポートガジェットありでこのザマでした……」
それを聞いて轟は、ああと緑谷の内心を理解した。戦う力だけではヒーローになれない、ヴィランの前に駆けつける速さがなければ、その手から命が零れ落ちる、二人に比べなんとお粗末なものかと感じていたのだった。
「個性は……脊髄ぶっこ抜き、そこから派生したあらゆるものを引き寄せる、だったな?それを利用して移動していたのか?」
改めて物騒な個性である、エンデヴァーも体育祭を観覧していた身、その凄まじさと息子との戦いで見せたポテンシャルからある程度は知っていたが、本人からの説明をしっかりと聞いて理解しようとした。
「ええ、はい……引っ張る反動で、少し前はこのグラップルガンの補助がなければ頭痛や出血がありましたが……今は補助無しでもある程度までは、けど……それありきで追いつけるか?なんです……サポートありきの力じゃなくて……サポートを失っても継戦し、なおかつパフォーマンスの減少を抑えたいと……えーっと」
要領を得ない、まとまらない説明にイライラし始めた爆豪。その緑谷の説明に、エンデヴァーは、即座に答えを出した。
「……要するに、より個性を理解して手足の様に扱かえるレベルまでになり、二人に追いつきたいと言うわけだな?」
「はい!!」
「今ので分かるんかい!No.1は伊達じゃ無い!!」
結構グダグダだったぞ!?待機組で見に来ていたサイドキックのバーニンが、その理解力にすげぇ!と声を上げた。
しかし、そんなエンデヴァーは……こうして緑谷と話すことによって理解した事があった。
緑谷出久は『自分と同じ』だと。
オールマイトという才能を前に……皆が歓喜と憧れを抱く中、ただ自分は追い越そうと必死だった。その為に何でもした、そして突きつけられた『才能』の差、決して埋まらない断崖絶壁。
それでも認めたくなくて、何とか越えようと、路傍の石でも瓦礫でも使って橋を架けようとしたが届かなかった。その果てに……息子に託す事しか出来なかった。
緑谷出久……同世代から見れば『戦闘力』ならば、その鮮烈さは目を焼くだろう。
だが『ヒーロー』としての彼は?
他の才あるクラスメイト、自分が願いを押し付けた焦凍、そしてその焦凍に勝った爆豪と比べてみたら?その輝きも鈍い光に見えてしまう。
それを彼は『狂気』で埋めてきた、それで皆より先に居ると見せてきた、しかし……いよいよその狂気すら超えて轟、爆豪二人の『才能』が輝き出している……。
「難儀な個性を抱えたな……キミも、こちら側の人間だったか……」
「?」
緑谷出久は、自分と似ている。感傷から口に出てしまったエンデヴァーに、緑谷は首を傾げた。
「次、貴様は?」
そしてエンデヴァーが爆豪に尋ねた、爆豪は淡々と言ってのける。
「逆に何が出来ねぇのか、俺は知りに来た」
何とも自信満々、過剰とも言える言葉にバーニンは笑い出した。
「っはははは!ナマ言ってら!」
「っせーな!つかテメェ、何でここに居んだよ!」
「わたし、今待機」
茶々を入れるバーニンに苛立つ爆豪だが、これが本心だと自らの手を見つめながら話し始める。
「俺の爆破は……やりてぇと思った事何でも出来る……一つしか持ってなくても、一番強くなれる……染みついた恐怖も乗り越えた……それにもう、ただ強えだけじゃあ本当の強え奴にはなれねぇって事も知った……」
握りしめた手に力を込め握りしめ、爆豪はエンデヴァーに言い放つ。
「No.1を越えるために足りねぇもん、見つけに来た……!」
やがて憧れを越えた、完全無欠のNo.1になるために、足りないもの、必要なもの、全部ここで見つけに来たとその言葉の力強さに、幼馴染の緑谷出久は気圧され、そしてそれでこそ爆豪勝己だと笑みが溢れた。
「いいだろう……では早速ーー」
「俺もいいか?」
緑谷と爆豪から聞いた、しかし息子からは何も聞かなかったエンデヴァーに、焦凍が声をかけたがーー。
「焦凍は赫灼の習得だろう!!」
既に課題は与えていると、エンデヴァーが何も言う必要は無いと声を上げた。
「……ガキの頃、お前に叩き込まれた個性の使い方を、右側だけで実践してきた……振り返ってみればしょうもねぇ、お前への嫌がらせで、頭がいっぱいだった」
俺にも言いたい事があるんだと、焦凍は右手のひらに冷気の球体を作り上げて語り出す。
「雄英に入って、こいつらと……皆と競う中で、目が覚めた……エンデヴァー、結局俺は、お前の思い通りに動いている……」
左手に、炎の球体を作り、そして消した。そのまま轟は、ふうと息を吐けば……蒼の炎が宙に漂って、エンデヴァーの目が見開かれた。
壊獣熱線『妖艶氷華』触れた敵を凍結させる、冷気の炎……それは、父エンデヴァーの『赫灼熱拳』の極意から、緑谷久の『火を吹くコツ』より考え、試し、轟焦凍が独自に編み出した技だった。
「焦凍、お前……!なんだそれは!?」
「覚えとけ、俺が憧れたのは……お母さんと二人で見た、テレビの中のあの人と……ヒーローでもないのに息子の為に戦って、息子でもない俺の背中を押してくれた、緑谷の親父さんだ」
「ぶぅううーーー!?」
その衝撃発言に、緑谷出久はびっくりして吹き出した。何言ってくれてんの轟くん!?緑谷は、あわあわと口元を押さえてエンデヴァーと焦凍が今ここで激突するんじゃないかと流石に慌てた。少なくとも焦凍の発言は、実父に『よそのお父さんのがテメェよりかっこいいんだよバーカ!』と言っているようなものである。
「俺は、ヒーローのひよっことして、ヒーローにたる人間になる為に、俺の意思でここに来た……!俺がお前を利用しに来たんだ、都合よくて悪いなNo.1……友達の前でああいう親子面はやめてくれ」
この場で親子を持ち出すな、ヒーローになる為に、ヒーロー足り得る人間として成長する為にここへ来たのだと言う実の息子の言葉にエンデヴァーは黙り込んだ。
雄英体育祭を経て、職場体験にも来たことで心を開いてくれたなんて思っていた。やがて自分の後を継ぎ、No. 1ヒーローの野望を果たす為に育てて来た。その果てに家庭は崩壊した。
『俺を見ろよ…エンデヴァー!!』
そして、失った。見ていなかったから、見るのをやめたから、焦凍だけを見るようにした。そのつもりがどうだ……自身が教えるはずだった必殺技の極意を、ヒーローですらない男から教えられ、自分で考え、研鑽し辿り着いていたことすら知らなかったのだ。
見ていたつもりが、また自分は見てすらいなかったのだとエンデヴァーは痛感した。
「ああ……分かった……これからは、お前たちをヒーローとして見る!」
だからこそ、エンデヴァーは……実子の意思を汲み取り、決めた。ここからは親子ではない、ヒーローとしてお前を見て指導すると。