【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「救助、避難、そして撃退ーーヒーローに求められる基本三項目、通常は救助か撃退、そのどちらかに基本方針を定め事務所を構えるが……俺は三つ全てをこなす方針だ」
緑谷達はエンデヴァーとサイドキック達に外に連れられ、パトロールを始めた。パトロールの最中に弁舌が始まる、そもそもヒーロー事務所は活動方針を定めて開くが、基本は二つの方針で事務所を構えると。
『救助活動重視』か『撃退活動重視』か……助けるヒーローか、戦うヒーローか……避難誘導に関してはどのヒーローも、チームアップや事件遭遇の際にこなせて当たり前としておき、その二つを方針に事務所を建てる。
エンデヴァー事務所ではどちらもやる、人々を助け、ヴィランを退治し、そして避難誘導も欠かさないとエンデヴァーは言った。
「管轄の街を知り尽くし、わずかな異音も逃さず、事件事故があれば誰よりも早く現場へ駆けつけ……被害が拡大せぬよう野次馬が居れば熱で遠ざける……基礎中の基礎だ並列に思考し、迅速に動く……それを常態化させる」
これらはあくまで基礎の基礎、やって当たり前の事だと言ってのける。即ち『常在戦場』の心持ちであれと言うわけかと、緑谷は自身の中で纏めた。
「何を積み重ねるかだ……雄英で努力を、そしてここでは経験を……山の如く積み上げろ、貴様ら3人の課題は経験で克服できる……この冬の間に一回でも、俺より早くヴィランを退治してみせろ!!」
そんなエンデヴァーから与えられた課題はシンプルだった。この冬が明けるまでに、エンデヴァーより早くヴィランを退治しろ。言うに易し、行うに難しなこの難題……が与えられた瞬間ーー。
早速、通信機からシグナルが入ってエンデヴァーが即座に移動開始した!
「待てやーー!?」
「早い!?」
そのシグナルを聞いた緑谷も、コンマ遅れて爆豪と轟よりも早くエンデヴァーと同じ方向に飛び出したーーが!即座に二人に追いつかれる!
反応速度なら二人よりもある、しかしそれすら塗りつぶされてもう、轟と爆豪に追い抜かされてしまった!
痛感する『個性の差』
いかに凶悪残忍極まりなくても、強くても、駆けつけるスピードがノロマなら意味が無い!その手から救える命が、滑り落ちる!なら今、やれる事はーー!
「最短ルートを!」
思いつく限りの最短で!真正直に行くなと、緑谷は爆豪と轟とは違う別ルートの為グラップルシューターを使用して空を舞う!
さっきのヴィラン退治である程度スピードやタイミングは掴んだらしい、まだまだ上手く使うまで時間は要るが、それでも先程よりはうまく使えていたーーが!
「これでもまだーー!?」
それでも、轟や爆豪が既に先を行っていた!エンデヴァーはさらに先へ!自分たちをグングン離していた!それでも、それでもと緑谷はグラップルシューターと引き寄せを利用した移動術と最短ルート選択を利用して食らいついた。
「当て逃げ犯確保!!」
「一足遅かったな……」
爆豪と轟がたどり着いた、その数秒遅れてやっと緑谷は現場に辿り着いた。バイクの当て逃げだったらしい、既にサイドキック達が処理していた。
「冬はギア上げんのに時間掛かんだよ……」
爆豪が言い訳をするが……その本調子ですら無い爆豪に追い抜かされ、そして最後の到着という事実……というか、緑谷は轟にある事に気付いた。
「待って、轟くん……エンデヴァー……さらに強くなってない!?そもそも飛べたヒーローだっけ!?」
「おい、今更気付いたんかクソヴィラン?」
そう!今更である。質問してない爆豪にすら言われる始末だった。何故空を飛べるようになっているんだと、エンデヴァーは飛行能力を有してなかったはずだと。
「ああ緑谷……福岡の脳無の件から親父は、エンデヴァーはさらに強くなってる、今の飛行もそうだ、ジェットバーンを応用した飛行だよ」
「名前通り……努力のヒーローなんだね」
あの場に自分も居た、そして脳無を倒した……けど改めて緑谷は実感する。エンデヴァーの凄さ、さらなる成長性……本当にこの人がずっと、No.2に甘んじていたのかとその恐ろしさを。
そうこうしているうちに、またエンデヴァーは飛んだ!また違う場所で事件があったらしい。
「行きな!ここはまかせて、あの人が焦凍くん以外に物を教えるのはレアだから!」
ここは任せなさいとサイドキック達に言われ、緑谷達はエンデヴァーを追跡する!今度は同時、そして……緑谷はまた離される!
「ーーっくそ!」
歯を食いしばりながら、点になっていくエンデヴァーと爆豪、轟に追い縋る緑谷……そして……また数秒遅れて到着。トラックに轢かれそうになった女性を、エンデヴァーは見事に助けていた。
これが自分だったら……一人死んでいたという事実が突きつけられた。爆豪と轟ならば間に合っていたかもしれない……そう緑谷に重くのしかかる。悔しい、畜生……今まで学校で、あらゆる事件で、なんとか対応して来た自分がこのザマかと緑谷は歯を食いしばった。
「腹にはしっかり詰めておけ、食欲が無かろうと、食える時に食っておくのもヒーローとして必要だ」
「はい……」
街のあるビルの屋上に、エンデヴァーと緑谷達は小休憩かつ見張りで食事をしていた。肉まんを齧る爆豪と轟、そしてエンデヴァーより食事を促された緑谷は、アンパンを一口齧ったが以降が入らなかった。
散々な結果であった。あの後数回、小さないざこざに駆けつけたが……反応は二人より早かったがすぐ追い抜かれ、現着は最後という有様に緑谷は久々に落ち込み、挫折感に打ちひしがれていた。
「……反応速度はいい、俺のインカムの音すら聞いてまで、時には俺より先に気付いた事もあった……が、イズク、貴様の個性の使い方……まだ無駄がある」
「無駄が……」
エンデヴァーからの評価は、反応速度は及第点だが、まだ個性の使い方に無駄があると評した。
「手を伸ばす所作、サポートアイテムの使用選択……手札が多いとむしろ何を使うか判断に時間が掛かる、まずは一つに絞れ、そこから増やしていけ」
「一つに……」
個性使用のルーティーン、そしてグラップルシューター使用の判断がこの結果を招いているなら、まずはどちらかを廃して一つを追求し、それができてから増やしていけば追いつけようとエンデヴァーは緑谷にアドバイスした。
「それと……貴様引き寄せるものは一つか二つだけか?」
「それは……」
さらに尋ねられた、引き寄せ出来る個数は限られているのかと言われ、緑谷はアンパンを持ったまま何も言えなかった。言われてみれば……引き寄せの際に手を動かすルーティーンから、せいぜい二つまでしか同時にしてなかったなと思い返す。
「概念系の個性は、思い込みに引っ張られる傾向が強い……これぐらいしかできないは頭から取り除け、何でもできる……その意識は重要だ……イズク、貴様への課題だ、今後……あらゆる場面で個性を使え、どんな時でも、気付いた時に引き寄せでできそうな事はそれでやれ」
そんなエンデヴァーから課題が出された。爆豪や轟にも、出された課題があったが、それとは違う課題である。
そして……この課題が、緑谷出久を新たなステージに引き上げる事になるまで、そう長くはかからなかった。