※この作品はR-18です。

【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】   作:ぶっこ抜きデク

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282話 もうどうなってもいいや(いいわけあるか!吐かないようにしろ!? byエンデヴァー)

 エンデヴァー事務所には、福利厚生として宿泊施設が完備されている。緑谷達インターン組も、冬休みの間はその宿泊施設にて寝食をサイドキック達と共にして、ヒーロー活動の現場に赴く事になった。無論、雄英高校側もこれを良しとしている。

 

 元旦初日から突きつけられた差とエンデヴァーからのアドバイスに、緑谷は充てがわれた部屋で一人考える。どうやってエンデヴァーに、二人に追いつけばいいのかと。

 

 地道に今から個性を、エンデヴァーが言うようにあらゆる事に使い更に深化させるのはその通り。しかし、他にやれる事はなかろうかと、スマホをベッドから引き寄せ手に取り、エンデヴァーの管轄となるこの街のマップを見ながら思案を練る。

 

 他にもやる事は山積みだ……机に置いている『普通二輪免許問題集』と『ヒーローモービル運用資格問題集』にも視線を向けた。父親から送られたバイク型ヒーローモービル『イーヴルマジン』運用には、この二つの免許が必要になる。幸い母親も父から話を聞いたどころか、自動車学校代まで預かったと言われた、年始明けたら夜間講習に通い取得するつもりだった。

 

 やることが多い……駄目だなこれはと緑谷は椅子から立ち上がりベッドに倒れ伏した。頭の中がぐだぐだだ、こんな時はさっさと寝てしまって一度リセットをかけようと、緑谷は瞼を閉じた。

 

 

 

「走れ走れ!昨日の自分を追い越していけ!!」

 

 インターン二日目、たった1日で何か変わるわけもない。むしろ変われたら天才だろう、それは爆豪も轟も同じだ。だが、失敗しようがどうなろうが、食らいついていくしかないのだ。

 

 背中が遠いーー朝から飛んで走って、突きつけられる。この程度だったのだ、お前の実力はと。タフな緑谷が一番、息を切らして、それでも追いつけないのが現実!そうして午前中のインターンは終わってしまい、一度事務所に戻った。

 

「中々追いつけねぇな、緑谷……」

 

 帰還早々、轟がそう呟いた。

 

「キミとかっちゃんは、もう二歩後ろくらいだ……僕は、十歩は後ろだよ……自信無くす」

 

 お互い追いつけないのはそうだが、その距離は自分と二人では全く違うのだと緑谷は、昨日と今朝の情け無い自分に弱音が溢れてしまった。

 

「けど俺と爆豪より、時には親父より早く反応出来てるじゃないか……昨日来た街でそれができてるのが凄ぇよ、だから気を落とすな」

「ありがとう……」

 

 確かに早さは昨日今日で縮めれはしない。しかし事件への反応速度、観察眼は俺たちを上回りエンデヴァーに肉薄しているじゃないかと慰められて身に染みる。いいやつだなキミはと緑谷は轟に笑みを見せたが……。

 

「反応出来た所で遅けりゃ意味ねぇけどな、大人しく後ろから来とれやクソヴィラン」

「うわぁ!これみよがしな追い討ち、容赦ないなぁかっちゃん!事実だから受け入れるしかないんだけど!」

 

 爆豪勝己の死体蹴りに緑谷は苦笑した、事実だから受け入れて何とかするしかねーよと反論できなかった。

 

「とりあえず、今やれる事を何か考えないと……君たちに周回遅れにされそうでならないよ」

「あんまり根を詰めるなよ?昼からもパトロールなんだからよ」

 

 爆豪の言葉を気にする必要は無い、焦ってもどうにもならない、積み重ねて地道に行こうと轟に肩を叩かれ、インターン組は昼までの小休止に入った。

 

 が、通報があれば即座に出撃できるようにしなければと気を張り立ち尽くす緑谷。

 

「おう、インターン生!お疲れ様!」

「うひゃああ!」

「お、反応いいな、ほら水分補給」

 

 そんな緑谷の頬に冷たい何かが当てられて、緑谷は跳ねて変な声をあげて振り返った。鬼の額当てのヒーロー、そして包帯を巻いたヒーローが、スポドリを緑谷の頬に当てていたのだ、そのまま冷えたスポドリをキドウから手渡された。

 

「オニマーさんに、キドウさん……どうも」

「随分気合入れてるみたいだったけど、何かあったかい?」

「もしかして、エンデヴァーさんの金玉潰す隙を伺ってた?」

「いやそんな事は……てか、まだ続いてたんですか?」

 

 鬼のツノの額当てのヒーロー『オニマー』そして包帯を巻いたヒーロー『キドウ』二人は、エンデヴァーの率いる『炎のサイドキッカー』の中でも別格で、特にエンデヴァーと連携する事が多いサイドキックだった。下手したら独立して、事務所立ち上げてビルボード入りしてもいいくらいの実力者が、気を張る緑谷にどうしたのかと様子を伺って来たのである。

 

「いや……エンデヴァーさんとパトロールして、爆豪くんや轟くんに差を開けられたなって突きつけられまして……」

 

 余程の事や守秘義務でなければ、聞かれて内に溜めず話すのが緑谷だった。オニマーとキドウに昨日と今朝の無様な自分を吐き出すと、二人は成る程と理解して緑谷にそれぞれ言葉をかけた。

 

「おいおい、昨日の自信満々から一転しちまったな、戦ったら誰にも負けないって自信はどこ行った?」

「まぁうん、大概の学生が通る道だ!インターンでプロの世界を感じてプロに、そして友人に差を突きつけられる!何よりここは繰り上がりだろうがNo. 1ヒーローになった男の事務所だからな!」

 

 オニマーからは、昨日の自信をまず保って元気を出せと、キドウからは誰もが通る道だと頷く。

 

「しかしな、キミにもしっかり長所はあるぞ?観察眼と反応速度なら二人より上、エンデヴァーさんに並んでる、この街に初めて来たのにそれだけ出来るのは誇っていいぞ?」

「うんうん、ただ気張り過ぎ、これよく無いぞ?肩の力抜いて自然体にな?気張りすぎたら周り見えなくなってキミの長所を潰しかねないからね、昼も頑張って!」

 

 他人との差を感じるのは仕方がないが、キミには上回っている部分がある。それはしっかり胸を張り活かしなさいと、二人は緑谷にエールを送って通り過ぎた。緑谷は、奢って貰ったスポドリをしばらく弄び、エネルギーチャージだと蓋を開けてそれをぐいいと飲み干した。

 

 

 昼のパトロールが始まる、ビルの上から街を見下ろすエンデヴァーとインターン組。今朝の気合の入りようから、空回りした緑谷の雰囲気から緊張が消えていた事にエンデヴァーはすぐ気付いた。

 

 緊張はしていない、しかし呆けてはいない、しっかり目は動いて街を見つめて異変を探そうとしている。エンデヴァーもまた、同じ様に構える中ーーインカムから通信が入った、

 

「む!?」

 

 瞬間、緑谷がビルから飛び降り移動を開始した!

 

「テメェ!クソヴィラン!!」

「反応が早いな、緑谷!」

 

 それに釣られて爆豪と轟も移動開始、エンデヴァーは少し様子を見て、通信を待ってみる。

 

『ひったくりです!東の表通りで犯人が逃走中!』

「分かった」

 

 行こうとしてる方角も当てずっぽうじゃ無い、悲鳴か、はたまた気配を先に捉えたのが分かる。初日で自分とほぼ同じタイミングで飛び出し、二日目で朝のパトロールでも、二回は先に飛び立った。観察眼と反応速度はエンデヴァーも何も言えないレベルだった。

 

「さぁ急げ急げ!!俺に手柄を取られるぞ!!」

 

 が、スピード!そればかりは自分を、爆豪と焦凍に追いつけない!即座にエンデヴァーは3人を追い越し、容赦なく先に進む!

 

「探知器役あんがとよ!クソヴィラン!!」

「わりぃな、先行くぞ緑谷」

 

 そして呆気なく追い抜かれる緑谷!探知器呼ばわりまでされて、流石に緑谷もいよいよ苛立ちが募るが、3人の背中に追いつけない!エンデヴァーのアドバイスにより、今はグラップルシューター無し、引き寄せをビルに使い反動で跳躍するが、スピードは上がらなかった。

 

 考えろ……緑谷は思考する。この個性で、まだしてない事、やれるかもしれない事、探し出せと言い聞かせる。エンデヴァーにも言われた、概念系個性は『何でも出来る』と思う事が大事だと。

 

 もう、置いて行かれてたまるか!必死にビルを引き寄せ反動で飛翔する中……。

 

「あ!?」

 

 まずい!ガラス窓のビルが目前に迫っていた!やばい、割る!というかオフィスらしき会社員達の驚き顔が見えた!

 

 視界の中で何か引き寄せる物を探して、即座に対角線のビルを見つけ、そこに緑谷は手を伸ばした!

 

 その瞬間の事を、景色で、肉体にかかる負荷の感覚で、緑谷は深く刻み込まれ忘れはしなかった。凄まじい急加速、臓器が勢いで弾け飛ぶんじゃないかという感覚。

 

 しかしこの時……緑谷は自身の今までのスピードを超え、空に投げ出された。

 

 今、何を引っ張ったんだろうか?どうやってこんなに速く、高く飛距離を稼いだ?咄嗟に行った行動を省みて、一気に背中が近づいたエンデヴァー、爆豪、轟の姿を捉え……ああと気付いた。

 

「そっか、そっちのが早い」

 

 今までは、反動で自分を飛ばしていた。それはタイミングによって失速するし、イメージも段階を踏む必要があった。

 

 簡単な事じゃないか、何故今まで気付かなかった。

 

「僕自身を、引っ張ればいいじゃないか」

 

 ひったくり犯が見えた、その近くの地面と自身を線で結ぶーーイメージ、僕が、現場に“引き寄せられる"イメージ!

 

 ミシミシと骨が、臓器が悲鳴をあげ、負荷の圧力を感じながら……緑谷は弾丸になった!

 

「ああ!?」

「なに!!」

 

 通り過ぎた緑谷を視界に捉えた爆豪と轟が驚き声を上げる。

 

「む!?」

 

 エンデヴァーも気付いた、そして即座に、ひったくり犯に近づき足を払い叩きつけ確保し、そのまま身体を広げ、飛んできた緑谷をガシィイイ!と身体全体で捉え、舗装された地面に線を作る勢いをしっかり受け止めた。

 

「す、すいません……エンデヴァーさん」

「何か掴んだらしいが……練習が必要なみたいだな?」

 

 皆に追いつける何かを、早速見出したかと、謝る緑谷にエンデヴァーは笑った。その笑みは、かつて……息子である焦凍に覇道を歩ませようとした笑みにも見えたが、荒々しさも狂気も感じなかった。

 

「あ、あと、すいません……吐きます……」

「なにぃ!?お前ここで吐くなよ!?ええい、近場でトイレ借りてこい!!」

 

 緑谷出久は、また一つプロへの道を、吐瀉物を吐きながら歩き出した。

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