【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「ご馳走様でした、料理美味しかったです」
家の前に車がつけられ、いよいよ学校に帰ることとなった緑谷。エンデヴァーから当たり散らしたような話の後だが、それでも冬美さんが用意してくれたご馳走は美味しかった。深々と頭を下げて招いてくれた事を緑谷は感謝した。
「ありがとう……」
冬美もその感謝を受け取り、にっこりと笑う。
「四川麻婆のレシピ教えろや!」
「うん!」
「俺のメールに送ってもらうよ」
あいも変わらず爆豪は口が悪いが、四川麻婆を余程気に入ったらしいレシピが欲しいと言い出す。そしてこんなに口が悪いのに普通に頷くあたり、本当この女性は優しく器量が大きいのが伺える。
「冬美……ありがとう……」
こんな事になってしまったが、夕食に招いてくれた事をエンデヴァーは感謝した。それを聞いた冬美は、緑谷の手を引いて自らの手に重ねながら、目を合わせて言う。
「焦凍とお友達になってくれてありがとう……緑谷くん」
弟の友達になってくれたことへの感謝、それに対して緑谷は少し恥ずかしくなるも言葉を返した。
「いえ、そんな……こちらこそ……」
横で焦凍本人が、照れて頬を掻いていた。話はこれまでと、緑谷達はエンデヴァーの送迎車の後部座席に乗り、夜の街路を出発した。
「貴様らには早く力をつけてもらう」
車内の助手席、エンデヴァーは唐突にそう3人へ宣告した。
「今後は週末に加え、コマをずらせるなら平日最低二日は働いてもらう」
つまり、土日と平日二日、週四日はインターンとしてエンデヴァー事務所に出向し、経験を積めと指示してきた。期待からだろうか、これくらいやって当たり前がヒーローなのだろうか……。
「前回、麗日や切島達がそんな感じだったな……」
インターンを先に体験した麗日、蛙吹、切島、そして常闇と同じスケジュールだったなと轟もその多忙さを思い出し呟く。緑谷もその一人だが、四人に比べたら出向した日数は少なかったので、この多忙さは初めてであった。
「期末の予習と、あと二輪免許にモービルの資格もあるな……イーヴルマジン、早く動かしてあげないと」
加えて緑谷は、父からプレゼントされたヒーローモービル『イーヴルマジン』をこのまま埃を被らせてはならないと、さっさと普通二輪免許とモービル運用資格を取らないといけないと意気込む。
「緑谷、貴様モービルを持っているのか?」
その話を聞いたエンデヴァーが話に入ってきた。学生の仮免がモービルを持つ、やはりプロヒーローからしても特異な事らしい。
「クリスマスに父から送られてきまして……」
「そうか……ふむ……ウチではヒーローモービルの運用を教えられないからな……」
それを聞いたエンデヴァー、今のご時世、持っていないヒーローが大半の為、その辺りは教えられないと何やら考え始めたところで……。
「No.1ならもっとデケェ車用意してくれよ!!」
「痛い痛いかっちゃん肘当たってるって」
肘を緑谷の頬に押し付け車の狭さに爆豪が文句を吐き散らす。本当にブレないなと、肘が頬をぐりぐりする痛みを申告する緑谷だが無視された。
「ハイヤーに文句いう高校生か!」
その爆豪の文句を、ピシャリと運転手が声を上げ黙らせた。中々にアグレッシブな恰幅の良い男性運転手はさらに続ける。
「エンデヴァー!あんたいつからこんなじゃりん子乗せるようになったんでい!」
「……頂点に、立たされてからだ」
「けーー!立場が人を変えるって奴ですかい!!」
No. 1ヒーローエンデヴァーに、これだけ言い切る運転手、余程長年連れ添って信頼関係があるらしい。そんな運転手が……。
「けーー!?」
前方から唐突に現れた物体を回避する為にハンドルを一気に切った。
一瞬、何がぶつかりにきたのか緑谷には見えなかったが、窓側に座っていた轟が声を上げる。
「夏にい!?」
「ええっ!?」
轟の兄、轟夏雄が何やら白い物体に簀巻きにされて空に浮かされていたのを、焦凍の叫びを聞いてリアウインドウから覗いて緑谷も視認した!
「頭ぁひっこめろ!じゃりん子ぉ!!」
爆豪が窓から顔を出していたらしい、それを注意しながらハンドルを左右に切る、道路にタイヤ跡が刻まれる中、緑谷の目に捉えたのは、道路の白線が浮き上がり動き出す景色であった。
「車屋さん!道の白線が!!」
「喋るなぁ!!舌噛むぞ!!」
白線から逃げるようにアクセルを踏む運転手だったが、目前に立つ人影に気付いた。
「いい家に住んでんなぁ……エンデヴァあああーー!!」
人影が叫びを上げ、運転手が轢くまいとハンドルを切り車がスリップしてガードレールにぶつかる!スリップの最中扉を蹴り破ったエンデヴァーが、人影……いいやヴィラン向かって飛び出した!
「彼を離せぇ!!」
声を上げるエンデヴァーに、夏雄を盾にするよう自らの前に出すヴィラン。黒ずくめな服に白いラインのパーカー、マスクにも白線のようなデザインの服のヴィランは、降り立ったエンデヴァーに向かって言い放つ。
「俺を、俺を覚えているか!エンデヴァー!!」
そのヴィランの言葉を聞いて……エンデヴァーは記憶から呼び覚まして、たしかと言い放つ。
「七年前……俺が取り押さえた暴行犯……ヴィラン名を自称していた……名は……!」
「そう!そうっ……だ!凄いぃ!覚えてくれているのが……嬉しい!」
覚えてくれている事に感涙するヴィランが、名を叫んだ。
「そうだよ俺だよ……エンディングだ!!」
さながら、数年ぶりに再会した盟友の素振りで、エンディングは打ち震えた。対するエンデヴァーは、気にも止めるなと最終勧告に入る。
「もう一度言う……彼を離せ!」
「す、すまないエンデヴァー……だが分かってくれ」
意識の錯乱か、心身の喪失か?まるで聞いてないとエンディングが捉えて拘束した夏雄に、具現化した白線の矢印を突きつけながら言う。
「俺がひっくり返っても手に入れられないものを、あんた沢山持ってた……憧れだったんだ!俺は何にも守る物なんて無い……」
そのままエンディングは、両手で自らの肩を抱きながら首を傾けてエンデヴァーに懇願した。
「この男を殺すから!頼むよエンデヴァー……こんっっどは間違えないでくれ!!俺を……!殺してくれぇ……」
ヒーローに対して、偏執な思いを抱くヴィランというのは存在する。
そのヒーローに捕まりたいが為に犯行を行うヴィラン、そのヒーローがヒーローであるが故にヴィランをやっているヴィラン……。
エンディングの目的は……その火に焼かれ死ぬ事だった。
「ヒーローは余程の事でも殺しはしねぇ……けどよぉ……あんた、脳無を殺したろぉ?俺も、あの人形と同じさ……生きてんのか死んでんのか曖昧な人生……だからぁ!安心して!その眩い炎で俺を焼き尽くしてくれぇ!!」
数年間溜め込んだ偏執な愛憎!その炎で、無慈悲な力で!俺を殺してくれと要求するエンディング。その弁舌の最中、送迎の車が爆発した。
車の故障ではない、爆豪が窓を爆破で割ったのだった。
「いくぞ!」
「うん!」
エンディングの白線にがんじがらめにされて出れなくなっていた車から、爆豪が、轟が、そして緑谷が飛び出す!
「こんのじゃりん子どもがぁああーー!忘れもんだぞぉ!!」
運転手は車を破壊された事でなく、生身で向かってんじゃねえと車内のレバーを引いた瞬間、トランクが開くや緑谷達のヒーロースーツケースが空に射出された!
「かっちゃん!焦凍くん!」
それを見た緑谷は即座に引き寄せで、爆豪と轟に向かって引き投げた!そして自らのヒーロースーツケースを最後に引き寄せ、ケースからアームガントレットのみを取り出し装着する!
「ぶっ潰す!」
「夏にいを助ける……!」
「殺してでも……守る!!」
三人して鼓舞のセリフを吐きながら、エンデヴァーが佇む背に向かい接近!しかしその行手を、エンディングの操る白線が阻んだ!
その白線を前に……三人はそれぞれの課題を思い出した。
『溜めて放つ、力の凝縮だ!』
爆豪も。
『最大出力を瞬時に引き出す事、力を点で放出する事!』
轟も。
『これぐらいしかできない、は頭から取り除け!何でもできる!その意識!』
そして、緑谷も。
迫り来る白線に対して……緑谷は、手による所作もなく目視だけで!その白線の軌道を全て地面方向に引き寄せて叩きつけてやった!
轟も、瞬時に最大火力の炎を引き出して焼き払って見せる!
「冬場だろうがぁあああああ!!」
そして爆豪!冬場の寒さは発汗を妨げ最大火力を引き出せなかったが!この場で見事にそれを克服した爆破で白線を破壊した!
「インターン生!?くぅう!仕切り直すぞエンデヴァー!俺のマイホープぅ!!」
俺の死!目的!希望!それをインターン生の時に邪魔されてたまるかと後退するエンディング!その隙をエンデヴァーが逃すはずが無い!一気に接近してエンデヴァーの勝利ーーと、ならなかった。
明らかに、エンデヴァーが遅れる速度でも、ましてや見逃す隙ではなかった。しかし、エンデヴァーは硬直した。
夏雄が前に出され遮られたから?違う、エンデヴァーの移動なら飛び越えて接近なんて容易な筈!
ただわかる事は……エンデヴァーがミスを犯したという事実!その背中を追い越し、緑谷が、爆豪が、轟がエンディング向かって距離を詰めた!!
「俺の希望の炎よ!息子一人の命じゃまだヒーローやれるみたいだなぁ!!」
「夏にいを……離せ!!」
左の炎をバーニアとして使い、一気に踏み込む轟に、エンディングは叫んだ!
「かぁあああ!?早く俺を殺さねぇからぁ!!死人がふえちゃうんだぁああ!!」
そして行われた凶行!エンディングは白線を操るや、乗用車数台を道路から打ち上げ、さらに捕らえた夏雄を、接近する電車が見える線路に向けて伸ばして追突させにかかる!
「凝縮……!」
させねぇよと、爆豪が呟くや夏雄の居る線路へ向け爆風で一気に駆けつける!この一週間で、さらに移動速度を上げたそれは最早、見違えるスピードにまでなっていた!
「増えねんだよぉ!!」
夏雄を救出してエンディングに吐き捨てる爆豪!対して、打ち上げられた自動車達を見上げた緑谷は……。
「やれる、できる!できなきゃ!皆が死ぬ!!」
自らに言い聞かせた緑谷は、その自動車向けて……手を伸ばす!
『できないなんて思うな、何でもできると!常識を逸脱しろ!!』
その常識を打ち破り、さらに向こうへ!言い聞かせた緑谷の斜め上で……まるで、時が止まったかのように、自動車達が宙に滞空した。
「お、おい……浮いてるよ」
「す、すげぇ……なんなんだこりゃ」
「パパ!ママ!見て!浮いたままだよ!!」
始まりは……脊髄を引き抜くだけの個性だった。
やがて、物を、人を引き寄せられるようになり。
引き寄せの方向を操れるようになって。
自分自身を引き寄せ早く移動もできた。
「さらに、向こうへ!!」
その先にあったのは……『空』
まるで……何も無い夜空から、『糸』で自動車を引き上げ浮かせたかのように自動車が滞空し、緑谷の意思でもってゆっくり降りていく。
「エンディング……お前の望みは、何一つ叶わない……」
「ああそうだ……何一つだ!」
全ての自動車が着地したと同時に、エンディングは焦凍の炎に吹き飛ばされ、氷結によって捕縛された。
「僕の新必殺技……人形使いの糸(マリオネイター)……!」
緑谷出久は、その日……さらに向こうへと踏み出した。
・人形使いの糸(マリオネイター)
緑谷出久の新たなる必殺技、今までの引き寄せの個性は『自身に物体を引き寄せ』『自身を物体に引き寄せ』『目標に物体を引き寄せ』という、自分自身か、何かの物体を起点にしなければならなかった。
この必殺技を簡単にまとめるなら、空から垂らされた糸であり、行使した物体を空から引き寄せ滞空させ、さらには上空へ吹っ飛ばしたりできる。難しくはなるし、負担が掛かるが操り人形のように物体を動かす事も可能!
無論……自分自身に使って擬似的な飛行も可能だ!!ただし、内臓と骨の負担は……うん、頑張ろう!!