【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
同刻、一台の車が他の車を次々抜かして走っていた。見ただけで急いでいるのが分かる、焦りが見える。今日遅刻したら解雇と言われた焦りような眼帯をつけた男は、一度後部座席の布が巻かれた長方形の何かを見て、汗が滲む手でハンドルを切る……。
ふと、バックミラーを見た瞬間、閃光が走るや……リアガラスが割れた。肩にも傷が付いた。
「ぐぁああ!?」
一瞬だが見えた、追っ手だと男は気付いてギアとスピードを上げる。その追手は、緑のフードを被りバイクに跨り、左手の親指と小指を伸ばすや、指がまるで弓のように変形して光線の弦を張った。そして3本の矢を一気につがえ……青い車向けて発射した。
そのうちの1本が右後部タイヤを貫いてパンクさせ、ホイールだけにされたらもう走れない。スピードを出していた車は横転して、何度も転がり防護柵に激突して止まった。
その真下近くであった、緑谷出久を振り切った少年がちょうど通りかかったのだ。
「うぉわああちょ!?まって!?ぎゃあああああ!!」
瓦礫を必死に回避した少年。しかしヴィランから受け取った、渡すための宝石が入ったジュラルミンケースを離してしまった。
「事故!?」
その光景を緑谷も、ヴィランの仲間だろう少年を探すために上空へ飛んでいたが降下する最中目撃した。
「緑谷!!」
そして、下の方の道路で轟が来ており、その声に反応して緑谷はそちらを向いた。
「あっちは俺に任せろ!」
「了解!!」
事故は俺が行くからケースを持った協力者に集中しろと言われ、緑谷は再び空を引き寄せ滑空する!そしてーー!
「見つけたぁ!!」
「げげっ!?」
「待てコラァ!!」
地下鉄への入り口に入るのを見た緑谷は怒声をあげ即座に追い縋る!しかしーー無常にも地下鉄は発車してしまった。
「はあ、はぁ、はぁ……ろくでもねぇ日だな……」
少年とピンクの小鳥は、互いに息を切らしながら地下鉄の車内で立ち上がる。少年は、走りに走って汚れた服を見て項垂れた。
「あぁ、せっかくの一張羅が、台無しじゃねぇか……それもこれも、全部あのヒーローのせい……」
汚れを叩いて落としながら、ふと少年は……追ってきたヒーローを思い出して、考えた。
「あんなヒーロー、ここらの管轄に居たっけ……?いやそもそも、ヒーローの服だったかあれ?ヴィランじゃねぇか?」
肩に乗った小鳥に語りかけた少年が、あれはヒーローじゃなくてヴィランではなかろうかと言うが、小鳥は首を傾げた。
「まぁいっか、もう会う事もーー」
まぁいい、どのみち逃げ切れたから大丈夫だ、会う事はないだろう。安心し切った少年だったがーー。
喧しいガラスの音と共に、そんな希望は消え去った。
「無いしぃいいいーーー!?」
最後列の窓を突き破り、その黒いスーツのヒーローが降り立つ。その赤い瞳が、ギョロリと少年を見つけるや、その手を伸ばして襟を持つやーー。
「ぎゃあああ!?」
一撃!近場の窓に頭から叩きつけて、窓ガラスは割れて上半身が飛び出した。
「ま、待て!待って!?」
「オラもう一発!!」
「ぎぇええ!?」
丁寧に車内に戻され、次の窓に移動して、緑谷はもう一発と少年を窓に叩きつけ突き破る!それから緑谷は引き戻し、首を片手で持って少年を吊り上げる、驚いている車掌にポケットから『国際ヒーロー活動免許』を取り出して見せた。
車掌は唖然とし、片手で首を持ち吊り上げた少年に向かって言い放つ。
「次の駅で降りろ……」
「が、が……」
「返事ぃ!!」
「わ、わかりました……」
少年はこの日……初めて『死』を実感した。
次の駅で降ろされた少年だったが、それはもう降りろと言われたのに、襟首掴まれて駅構内の壁に叩きつけられるという酷い有様だった。
「何故逃げた」
「し、仕事で急い……あがぁ!?」
そんな言い訳通るかと、少年の景色が明滅した。緑谷の頭突きが鼻柱に叩き込まれたのであった。
「何故逃げたぁ!!」
「し、仕事なんだってぇ!本当に!こいつを運ぶだけ、急いでて……」
必死な言い訳だった、仕事なのは本当だ、しかし中身を見られたらアウト、必死に少年は抵抗する。
「仲間何人だ?」
「ふぇぇ?おごほぉおお!!」
その惚けた返事に、少年は腹の衝撃を受けて足が浮き上がった。そのまま膝をつき、今朝食べた食事がぶちまけられ……また壁に叩きつけられる。
「仲間は!!何人だ!!言えぇ!!」
「し、知らない!!俺は、依頼されただけ!!受け取って渡す!!それだけなんだよぉ!!」
つまりこいつは仲介かと、手を離して床に落としてから緑谷はジュラルミンの側に行くと、少年が呻きながら声を上げた。
「お前、ヒーローなんだろ、ヒーローがこんな事して……いいのかよぉ、問題になるだろうがぁ……」
それを聞いた緑谷は、少年の方に向き直り……襟首を持って無理やり立たせて言う。
「僕を他のヒーローと一緒にするな、他のヒーローなら優しく捕まえるだろうが僕はそうしない、後ろ指と批判に晒されても必ず悪は捕まえ討ち倒す、それが僕だ……」
「ひっ……」
「地元警察にでもヒーローでも言ってみろ、上等だ……お前諸共豚箱に入ってでも叩き込んでやるから」
脅しはきかんぞと冷徹な眼差しを向けられ、少年は……こいつ本気だと理解してもう黙る事にした。この手の眼差しはヴィランが持つ目で、それをヒーローが有している事実に少年は、年貢の納め時と諦めた。少年を降ろし、再び緑谷はジュラルミンに向かいそして開いて……。
「……は?」
中身を見て緑谷は目を見開いた。
「宝石じゃない……?」
「なにっ!?」
緑谷の呟きに、呻いていた少年は痛みを忘れ立ち上がり、その箱を覗いた。その目に映ったのは手帳や書類ばかり……受け取った宝石は全くそこには無くて……。
「おい!!」
「どわぁぉあはぁぉ!?」
そこから再び緑谷は、少年の襟首を掴み壁に叩きつけた。
「仲間はどこだ!どこで受け渡したぁ!?吐け!!」
「いやいやいや!待て待て!!知らない、マジで知らないんだって!!」
少年自身も知らないと弁明した、俺は確かに宝石を運んでいた筈だと。何で手記や手帳にいきなり変わっているのか、それは事実でそう言うしか無いがーー。
「あの二人のヴィラン以外に仲間が居るんだろ!?お前は囮で!逃げる最中に受け渡しした!!そうだろうがぁ!!」
「ほ、本当に知らなーーごぼぉお!!」
残念!信じてくれる証拠がない!また腹に一発受けて膝から崩れ落ち、もう何も吐き出せないため痙攣するがそのまま襟首を掴み緑谷は言う。
「お前の道は二つだ、一つ、正直に吐いて豚箱に入る!二つ!二度と病院から出れなくなるまでにされてから吐く!さぁ選べ!!」
「ひ、ひ……や、やめ……」
もう心は折れている……しかし少年は本当に知らない。死にたくない、まだ家には小さな弟と妹が居るから死ねない……必死に逃げる道中を思い出して……少年は活路の答えを見出した。
「さ、さっき!事故あったろ!?あの時俺、ケース離したんだよ一度……多分取り違えた!そうだ取り違えたんだ!」
そこしかない、自分がケースを取り違えたんだ!ああそうしかないと必死に少年は弁明した。
「はぁ?」
「信じてくれ!そこに行けば……あるから!宝石!頼むよ……お願いだから……まじで知らないんだってえ……」
命乞いに等しい懇願……それを聞いた緑谷は、襟から手を離して少年を下ろした。助かったのかと体を震わせる少年は、一息をようやく吐いて落ち着けた。
「分かった……ただし、嘘だったら……」
嘘だったら、もし宝石がなかったらと、頭上で滲む殺気に少年は冷や汗を垂らしながら見上げる。
「貴様の腹を掻っ捌いてから首をぶっこ抜いて、広場に晒してくれる」
「オーノー!?ジャパニーズハラキリザンシュケイ!?」
ヒーロースーツの長袖からアームブレードを輝かせた緑谷の宣告に、少年は叫びを上げたのだった。