【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
パトカーが通過するのを木の幹に隠れやり過ごす……捜査網がこんなに早いのは明らかに異常だなと、緑谷は先程電話で轟から伝えられた事態を把握しながらも落ち着いていた。
「どういう事なんだよ!あんたが人殺しで、俺がその共犯者!?いつの間に仲間になったんだよ!?説明しろよ!!」
だが、この運び屋の少年からしたらたまった者ではない。運び屋の仕事をしたら、ヒーローにゲボを吐かされ、挙句警官殺しの協力者にされたのだ、説明しろとここぞとばかりに捲し立てた。
「僕にも分からない……一体何故……」
そんなの自分が知りたいと、しかし何故と考える緑谷。少年は放心しながら呟いた。
「終わった……俺の人生今でもどん底なのに……さらに落ちてどうするんだ……最悪だ……」
地面に膝から崩れて項垂れる運び屋の少年は、そのまま怒りの火を目に灯して緑谷を睨みつけた。
「それもこれも!全部お前のせいだ!!何とかしろよヒーローだろ!?」
「やかましい!!」
運び屋の少年の八つ当たりに、飼い鳥らしいピンクの鳥もそうだそうだ!と鳴く。煩わしいと感じた緑谷は近づいて来たそのピンクの鳥を捕まえると、160km/hで思いっきり空の彼方に投げつけて、ピンクの小鳥はキラーンと輝く星になった。
「ピノォオオオオーーー!?おま!?お前!?なんて事してくれんだよ!!」
「警察は問答無用で発砲して、ヴィランまで襲って来た……」
「いや!?こっから台詞まだ続けんの!?ねぇ!?」
こっちの飼い鳥を星にしておいてまだ話すのかとその態度に唖然とする少年。それを無視して緑谷は狙われた理由を考え、もしかしたらと口に出す。
「僕らが死のうがどうでもいいと分かる……つまり、警察とヴィランの目的は僕らじゃあないということ……」
「つ、つまりこいつか!!」
押し切られたが、それでも警察とヴィランがこうも執拗に追いかけて来た理由はこれかと!もしかしたら助かるかもしれないとジュラルミンケースに希望を見出した運び屋の少年。
そして早速、中身を出して緑谷と二人で確認するが……財布や手記と、めぼしいものは見当たらなかった。
「予定表やメモ、パスポートに……財布……事件性があるものは見当たらないな……何故これを狙うんだ……?」
特に何も見当たらない、何故このジュラルミンケースを?と首を傾げる緑谷に、少年は即座に中の荷物をまとめジュラルミンに押し込んで緑谷に言った。
「ね、狙われてんのはケースだろ!?だったら、これを渡しちまえばよくないか?あ、ああそうだよ」
ケースを渡せば解決する話だろと少年の言葉に、緑谷は首を横に振った。
「警官やヴィランまで殺しにかかって来た、ならもうそれだけの秘密がケースにはあるんだ、多分口封じに殺しに来るよ……秘密を知った知らないに関係なしに、ね?」
渡したところで口封じに殺されるだろう、だから意味がないと言われ、少年は顔を青くしながらさらに言う。
「ね、ネガティブな思考はよそうぜ!?あ、そうだ!燃やすか壊すかしちまおう、知りませんってさ……」
「結果が変わってない、どの道それを持っている時点で僕らは標的だ」
壊そうが燃やそうが、秘密を知ったかもしれない僕達は排除対象に変わりがないと緑谷に指摘され、少年は少し黙った。そして思いつく。
「なら……いっそ警察に言おうぜ……」
「……なんて言う気?」
自首しようが殺される未来しか見えないがと思った緑谷、しかし少年が提案した話は違った。少年はジュラルミンケースを頭上に抱えながら言い放つ!
「ケースが欲しけりゃ!!100万ユーロ持ってこい!!ってな!!」
身代金にして取引を持ちかける、まさしくヴィランの所業!!それを聞いた緑谷は馬鹿かと言い返す。
「何言ってるの?また罪を重ねる気?焼けを起こさないで」
「ま、まぁ……そうだよな?」
「それに……あともう二桁は欲しいかな、やるなら……」
「おいヒーロー!?」
「まぁ冗談だけど……一割は……」
「九割本気なのかよ!?」
緑谷のジョークに振り回される少年は、流石に疲れたとまた膝を折った。
「なぁ……もう渡しちまおうぜ、命まで取られないって、考えすぎだって……」
さっさとこんな厄介なもの渡して楽になりたい気持ちの少年が弱音を吐く。しかし……緑谷からすれば、ヒーローの自分が殺人の罪まで被せられ、命を狙ってくるようなジュラルミンケースを、易々渡すべきではないと考えた。
ヒーローが持っていて、ヴィランが襲って来た……つまり、ヴィランには厄介な代物で、そして警察まで狙って来た。まさか……と緑谷の頭に一つの懸念が生まれて、少年に語る。
「駄目だな、多分このジュラルミンケースには……余程の秘密があるらしい、それをヴィランに、ましてや罪まで被せて捕まえに来た警察に、渡すわけにはいかない」
緑谷は懸念を確信に変え、ジュラルミンを取り上げて少年に言った。これをヴィランに、さらに警察にも渡してはならないと。
「あんたの正義感に俺を巻き込むなよ!」
冗談じゃない、こっちはもううんざりなんだ、俺は巻き込まれただけだ、巻き込むなと吐く少年に、緑谷は言い返す。
「どの道、ニュースでキミも共犯者だ、ここで降りてもいいけど……見つかったら拷問なりされて僕の居場所なり吐かされて、殺されるだろうな」
降りても末路は変わらないぞと、この後起こりうる最悪を話して、少年は青ざめる……。
「じゃあ、どうすりゃいいんだよ……」
自分が助かるには、解決するにはどうしたらいい?その答えを少年は緑谷に尋ね、緑谷はジュラルミンを肩に抱えて言った。
「逃げる」
「はぁ?」
「地獄の逃避行だ、と言うわけで……とりあえず街を離れよう、警察が包囲網を敷く前に……オセオン警察が手を出せない隣国のクレイドへね?」
今自分たちにできるのは逃げる事だ、オセオン領内で指名手配されたなら、隣国のクレイドに行けば関係なくなる。逃げるか、捕まるかの逃避行だと緑谷は、歩きながら少年に言った。
「……ヴィランが襲って来た場合はどうすんだよ」
「その時は……ヴィランを殺してでもキミを守るよ、約束する」
「はぁ?守るっつって……何で?」
「キミは重要参考人だ、宝石強盗のね……それで突き出すまで、僕の仕事は完了してない……」
この宝石強盗の件で突き出すまで、警察に突き出すまでは守ると、どの道豚箱行きは確定の事実に少年はため息を吐いた。しかし……このままただ殺されるのと、解決して豚箱にいくのならまだ後者だよなと覚悟を決めた。
「わぁったよ……国境でもどこでも行ったろうじゃねぇか……」
「話がわかるね、じゃあさっさと行こうか……」
こうして殺人犯に堕ちたヒーローと、運び屋の逃避行が幕を開けた。
「仮にだけどよ……」
「何さ……」
「解決しなかったらどうすんだ……」
「……身代金一億ユーロ要求して、クレイドで豪遊する?」
「お前本当にヒーローかよ……」
その結末は、どうなるか……神のみぞ知る。