【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
2人のクレイドへの逃避行は続く。
スコールに降られボロトラックのエンジンで登れなくなる坂を引き寄せで引き上げ。
穏やかな川の中をゆっくり進むが足を取られ尻餅をつき。
地図の道の判別がつかずあっちだ、こっちだとなり。
ガス欠になってガソリンスタンドまで押せや引けやと汗水垂らして、それはもう大変な道中だったーー。
「「かんぱーい!!」」
大変だからこそ、夜の瓶コーラは身に染みる。近場の河川で冷やしたコーラ瓶をキィン!と打ち鳴らし、レトルト品や缶詰だが飲めや食えやと2人は笑い合った。
「地図通りならいよいよ国境になる……二日でよくまぁたどり着けたよ」
二日の逃避行、始まりの日を合わせ三日間の旅は明日には終わる。いよいよ国境が近づいてきたと緑谷はコーラを煽りながら語った。
「国境、絶対オセオン警察も張ってるし、国境警備隊もあんだろ?どうやってクレイドへ入国するんだ?」
しかし国境となれば、オセオン警察も必ず張っているだろう。どうクレイドへ入るつもりなのかと尋ねるロディに緑谷は、何を今更と指差して即答した。
「無論、密入国しかないね」
「おいおい、なぜそこで正規の手段が出ないんだよ?本当にヒーローかよ、イズクってさぁ?」
それがヒーローの言う言葉かよと笑うロディに、緑谷と笑って言い返した。
「仕方ないだろう?時に正義とは汚泥に塗れ、血を被らねばならない時もあるのだ!」
「おー!言い切った!!流石イーヴルヒーロー!!綺麗事だけじゃない!!」
世の中誰だって清廉潔白のままではいられない!そりゃあ誰だって正しく生きたいが、汚れないまま人生を終えるのは無理だ!ヒーローだって二つ三つスネに傷を抱えるさと断言する緑谷にロディは拍手と賛辞を送った。
コーラにアルコールが入っている訳ではない、ましてやコーラ飲料というお酒でもない。2人して状況に酔っ払っているのだ。語らいがしばらく続く中、緑谷はそう言えばとばかりにロディへ尋ねる。
「そう言えば……ロディって、個性なんだっけ?」
「あん?何だよいきなり」
「いや一度もロディの個性らしきものは、逃げてる中で見てないなと……」
緑谷は気になったのは、ロディの個性だった。そう言えばこの逃避行の中で、一度もそれらしき物は見てなかったなと、ふと思いついて尋ねた。ロディは瓶を傾け、そっぽを向いて……緑谷はやらかしに気づいた。
「ごめん、もしかして……」
「いや、無個性じゃあないんだが……笑わないか?」
無個性を気にしていたかと思ったら違って、笑うなと前置きがあったので、緑谷は言葉を返す。
「僕の脊髄ぶっこ抜きに比べたら、他の個性や無個性のがマシだと思うよ、笑わない」
「そうかよ……」
自分の個性に比べたら何だってマシだという緑谷、ロディは分かったというや頭からピンクの鳥……ピノが応じたかの様に出てきて、肩に留まり翼を広げた。
「このピノが、俺の個性……個性名は『魂(ソウル)』俺の魂が具現化した現し身がこのピノなんだ、だから……俺が嘘ついてもこいつは本心を出しちまうんだ」
飼い鳥ではなかった、そのピノこそが個性と宣うロディに、緑谷は納得しながら見つめれば、ピノは見るんじゃあねぇよ恥ずかしいと赤面し、いやいやと身を捩った。
「ほー……あ、それであの時、空の彼方へぶん投げても戻ってきたのか」
「本当、マジでやめてくれよ?一応魂なんだから、離れたら離れたでまたリスポーンできっけど悲しくなるんだよ」
時速160kmで投げた時の慟哭はガチだったらしい。思い出したのかピノはガタガタブルブルと震え出したのであった。もしかして160キロの世界を追体験がフィードバックしたりするのだろうか。
「あんまり使い道無いし、本心分かっちまうから……いい個性じゃないだろ?」
本心が曝け出される何とも厄介な個性だ、そう言うロディに、緑谷は首を横に振った。
「いや、欺瞞や嘘が蔓延る世界で、嘘がつけない素直なのはいい事だよ、信頼できる」
その返答に面食らったロディは、よせよとそっぽを向く。が、ピノは嬉しそうに羽ばたいて小躍を見せたのだった。
「……いいねぇ、じゃあ色々聞いてみようか、ロディの好みは……スレンダー?ダイナマイトボディ?」
「いや、そりゃダイナマイトだろ、んでもって バニー、バニースーツ最高だ」
それはピノが晒す必要もないと、ロディはキリッとした顔立ちで答えるのだった。
ーーそして夜が明けた。
オセオン、クレイド国境手前の渓谷から、眼下に見ゆる駅を双眼鏡で緑谷は覗いて、その警備の厚さに舌打ちした。
「どれだけ人員割いてるのやら、血税が勿体無い……」
パトカーに護送車両、さらにアサルトライフルを持った特殊部隊まで待機している。このまま真正面からは無理かと、聳える断崖を見上げながら、緑谷はロディに言う。
「捕まって、一気にここを上る」
手を差し出す緑谷に対し、ロディはしばらく黙ってから差し出した。
手ではなく、ジュラルミンケースを。
「……何のつもり?」
「悪いな、俺はここまでだ……足手纏いになりかねねぇ」
ロディの差し出すジュラルミンケースを見て、彼の言葉に緑谷は何も言わずに話を聞いた。
「イズク、俺はただでさえ一度あんたを裏切った……何より捨て置いていいのに怪我までして俺を守ってくれた、俺は……信じてお前にこれを託したいと思う」
此処から先、自分は足手纏いになりかねない。だからこのケースの秘密を解く事を任せたいとロディは言う。緑谷は、そもそもキミを連れて行かねばならないのだがと呆れながら言い返そうとした。
「あのさぁ……僕はキミを連れて行かなきゃ……」
「逃げないよ、俺は、この辺りで待つ……あ!警察に見つかったら仕方ないって事で、絶対お前から逃げない……」
体良く逃げる口実にもなろう、しかしロディは信じてくれとケースを差し出した。そして、ピノも真剣な表情だ。宝石強盗の件で突き出すまで、逃げはしないと本気と分かってしまった。なら、信じねばなるまいと……緑谷がケースの取手に手を伸ばした瞬間ーー。
ふと、ヘリコプターの羽の音が近くで聞こえ……緑谷もロディも斜め上を見上げた。
「「え??」」
2人は見上げた先のヘリコプターを見て、その様相に素っ頓狂な声をそろって上げた。そこには、左目に眼帯をした弓兵のヴィラン『ベロス』と、もう1人が搭乗口を開けてこちらを見下ろしていた。
ただ……そのヘリコプターがおかしかった。
ロディが呼んだ時は普通の民間機だった。
しかし、いま緑谷とロディの頭上を飛ぶそのヘリコプターは、左右にミサイルを携え、機関銃まで装着された……明らかに『軍事用の戦闘ヘリ』だったのであった。
「イィズゥウクゥウイミドォリィイヤァアアアアアアーーー!!」
怒りの雄叫びをベロスがあげて、機銃が向けられた2人は同時に叫んだ。
「「ブラックホォオオオオーーク!?」」
そう、たしかにアメリカ軍の戦闘ヘリとして配備されている『UH-60』であり、またの名を……ブラックホークと呼ばれる戦闘ヘリだった。
機銃の喧しい発砲音と共に、緑谷はロディを抱えて空を引き寄せ上空に飛び立った!!