【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
父や母が立派なヒーローでした、なんて家庭じゃない。
宴会芸程度の火吹きしかできない父、ちょっと近くの物を引き寄せられる母。普通の恋愛をした、普通の家庭に生まれた、普通の子どもだった……そんな子どもに現れた個性は……『あまりに惨たらしい個性』だった。
「両方の家の親族に言われたよ、お前は化け物の子だと、そのせいで親族とは絶縁状態らしい、ひどい時には……家に不法投棄されたり嫌がらせもあった」
「そんな事が……」
個性による差別……その被害者が緑谷出久と、その両親だった。
「キミもそんな感じじゃあないの?エンデヴァーの息子って事は……闇深そうだし」
「うちは、個性婚だ……あのクソ親父は、オールマイトを超えたいが為に、自分じゃあ超えれないからと、俺たちを作ったんだ」
「うーわ、最悪だ……マスコミに垂れ込んだら?じゃあ、その顔もエンデヴァーに?」
「違う……これは、父を憎んで精神を病んだ母に煮湯をかけられた、お前の左側が醜いと」
「キツイね……場所変えようよ、お腹すいたしさ?」
対して、ヒーローの家系に生まれた轟もまた、個性の被害者……『個性婚』という、倫理と人権を無視した婚姻の果ての家庭に生まれ、ヒーローとして鍛えられたらしい。母は精神を病み、父には虐待じみた特訓の被害を受けたのだと。
「あー……それで炎を使わないし、使いたくないんだ、父親が憎いから?」
その話を聞いてようやく、入学当初から轟が炎の個性を使わない理由が解決したと、緑谷は納得した。
「そうだ、だから俺は……母のこの氷の力だけで、ヒーローになる、半分の力で……そしてクソ親父を完全否定するんだ」
自らが受け継いだ父の力を使わずにヒーローになり、父を完全否定する。それを聞いた緑谷は一息吐いて言う。
「あのさ……あの日、僕が皆に個性を暴露した日、キミも受け入れてくれたから……だから言わなきゃいけない事ができたから言うよ」
「何だ、緑谷」
「親の否定はさ、いくらでも出来る、絶縁だったり養子縁組とかさ……けど、受け継いだ力は、否定はできない」
「な……」
轟は絶句した、お互いに個性の被害を受けた者だから、同情の言葉が出てくると思っていた。それを、まるでクソ親父の肩を持つかのような事を言って、悲しい顔で言い放つ。
「そんな思いで、ヒーローになんか、なれないよ……なれてもキミはいつか、後悔する事になる父親も、母親でも、嫌いなら否定すればいいよ……けど、受け継いだものは否定できない!辛いし苦しいけど、向き合わなきゃ……」
轟は思った、こいつは……なんて悲しい顔をするのかと。あれだけ貪欲な殺意と、個性持ちすら圧倒する戦闘力を持ちながら、花のように笑い、雨のように涙を流し……悪魔のように怒る。
「そう簡単に……割り切れるかよ」
これ以上は話したく無いと、先に歩き出した轟を、緑谷は追わなかった。ふと両手を見る……網膜に焼きついた気色がまた浮かび上がる。
指を刺す大人たち、怖がる子どもたち、自分を抱きしめて、泣きながら止める手が……何度でも。
「血は母より受け継いだ、骨は父より受け継いだ、じゃあ……僕のこの……どうしようもない個性はどこから来たんだろう……」
それは、誰も答えちゃくれない、けど今日まで向き合って来たつもりだ。ふと、誰かが放り出した空き缶が少し先に転がっているのを見て、緑谷はそれにむけ右手をかざし……引いた。
空き缶が、引っ張られるように緑谷の元に飛来し、それに緑谷はアッパーカットを合わせ、空き缶は潰れ空を舞う。
右の鼻の穴から……たらりと鮮血を垂らすがそれを拭い、とりあえずはエネルギーを入れねばと食堂に向かった。
昼が終われば、いよいよ本戦……その内容は……出場者16名のガチバトル!!レクリエーションを前に、集められた一年生達に、ミッドナイトが箱を取りだして皆に見せる。
「それじゃあくじ引き……の前に!また一つ、特別ルールを発表させていただくわ!」
ミッドナイトは箱を置いた、特別ルール……この場の誰もが、1人に目線を向ける。
「緑谷出久!個性を封じられてなお、よくぞここまで足掻いて這い上がって来たわ……放送倫理の関係から、貴方の出場自体がアウトなんて話も出てたけど、見事それを乗り越えた!そんな貴方がここに辿り着いたなら、私たちも応えましょう!」
予選から公表された『緑谷出久特別ルール』により、個性無しでここまで来た事を掛け値なしに褒めるミッドナイト。そして画面に映し出された文面に、皆が目線を送る。
『緑谷出久本戦仕様特別ルール』そう映された文面を、本戦出場者の切島が読む
「本戦特別ルール……ま、まさか!?まじで解禁になるんかよ!あの個性!?」
1-A面々、爆豪と轟以外全員が戦慄した。まじで使わせる気かと、放送どうなるのかと!
「さて、このルールだけど……トーナメントで緑谷出久と対戦する選手には、選択肢が与えられるわ!それは……緑谷出久の個性の使用を認めるか否か!認めた場合は、皆と同じ個性を使って試合が可能!認めない場合は、その公平性を埋める為、彼にヒーロースーツ着用を認める事にします!」
それを聞いた緑谷の背中はゾクリと震えた。遂に……遂に本気で、戦えるかもしれないと、身体中の血が沸き立つのを感じる。
「つまり……昔のプライ◯ルールって訳か、無差別級の4点ポジションの膝の有無」
上鳴が例えを出すと、男性陣はああと何人かは理解できた、しかし峰田がふと気づく
「けどさ、個性ありの緑谷とさ……ヒーロースーツで個性無しの緑谷って、どっちがマシなんだ?」
峰田は思い出す、あのUSJ血の惨劇を。その残酷な戦いぶりを見たのは、峰田と蛙吹だけだが……度々ヒーロースーツの戦闘演習で対峙して来た1ーA全員は思い出す。その結論は……。
「「「「どっちも変わらない……血の海が広がる」」」」
であった。